< サイト開設1周年記念SS >

  「 星 の さ さ や き 」




「・・・・・はぁ。」
としか、言えなかった。
この国では。
「必ず男女でペアになって行動すること。」
とんでもない法律があったものだ。
「相手が嫌な奴だったらどうなるんだ?」
「ある程度のリクエストには応じます。」
「『ある程度』、ねぇ・・・・・・。」
しかも相手というのも、ランダムに選定されるのだという。
「・・・・じゃあ・・・・。」
「・・・・姫も誰とペアになるか解らないっていう事か・・・・。」
途端に心配そうな表情になるサクラに、ファイがぽん、と肩を叩く。
「大丈夫だよ、サクラちゃん。サクラちゃんは『神の愛娘』だからね。」
運のよさはピカ一だ。


結果。


サクラとペアになったのは、この世界での雪兎。
玖楼国の雪兎神官と同じく、優しそうな彼にサクラはほっとしたようだ。
小狼はどこか桜花エドニス国の千里に似た女性と。
ファイはやはり桜都国で出会った譲刃に似た少女と。
それぞれにペアになった。


そして。


黒鋼とペアになったのは。


「よろしく、『おじさん』。」
「・・・何だと?!」


高麗国で出会った春香と魂を同じくする別人である所の、実にこましゃくれた少女だった。


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見ず知らずの男女が共に行動するに当たって、障害的なものはかなり排除されている。
例えば、宿の部屋は全てシングルであったり。
今までの同行者と、一緒に行動することも許されている。
要は、定められたペアを崩さなければいいだけなのだ。
だからといって、『羽』探しに協力させるのも憚られる。
さりげない風を装って探すのは、結構骨が折れた。


しかも。


「何やってんだ?『おじさん』?」
「『おじさん』じゃねぇ!!『黒鋼』だ!!」
こんな会話がしょっちゅう交わされるこのペアは、もはや目的達成など程遠いものと思われた。
「その名前、発音しにくいんだ。『黒』でいいか?」
「犬みてぇだからやめろ。」
「じゃあやっぱり『おじさん』。」
「やめろっつの!!」
「んーと、『黒じー』。」
「・・・・てめぇ、つけ上がんなよ?」
春香は、あはは、と声を上げて笑った。
「面白いな、『おじさん』は!!」
いい加減疲れてきて。
眉間の皺を深くした黒鋼に、また笑い転げる。
春香は、実によく笑う。
箸が転げても笑う年頃という事なのか。


「・・・・・・・・・・・・・・・。」


ふと、考え込んだ。
奇妙な既視感デジャヴに囚われる。
(なんだ?)
この笑顔。
この笑い声。
――――――――どこかで?


「おじさん!あっちの広場で屋台が出てるって!」
「・・・・・・・・・・あぁ。」
言い返さなかったことに気付いて、春香は驚いた顔をした。
「・・・怒らないのか?」
「・・・怒って欲しいのか?」
何の気なしに問い返した、その言葉に。
春香はびくりと肩を震わせた。
「・・・・そんな事ないさ。自分で『おじさん』だって認めたんだなって思ったんだ。」
「・・・・・。」
無言で握りこぶしを作ってみせれば。
またあはは!と笑いだす。


明るいのに。


屈託の無い、子供らしい笑顔なのに。


一体何が引っかかる?


考え込んでしまった黒い影に、どうしたのだろうかと覗き込んでくる。
しかし、その目は春香を捉えてはいない。
目の前で手を左右に振られて、ようように気がついた。
「あ?」
「おじさん、白昼夢?」
「寝ぼけてねぇし、おじさんでもねぇ。」
ゴン、と。
頭の上に握り拳を軽く落とす。
「痛ぁ〜〜〜〜〜!!」
「たまにゃ、その『口』減らせ。」
「私がしゃべるのやめたら、『探し物』は見つからないよ?」
「・・・・・・・・・・・何?!」
「『羽』を探してるんだろう?」
ポーン!と。
とても身軽な様子で近くの岩に飛び乗った。
「私はおじさん達よりも早くにこの国に来た。その時、あそこの森の湖に光り輝く『羽』が舞い降りるのを見たんだ。」
「・・・・・・・・・確かなのか?!」
「おじさんに嘘言ってもしょうがないし、それに。」
くるり、と1回転。
スカートがヒラリ、と風をはらむ。
「『おじさんなら話してもいい』って思ったんだ。」
「・・・・・何故。」
「おじさん・・・・・・同じ『匂い』がした。」


パチン。


何かが、記憶の底で弾けた。
深い、深い、記憶の底で。


それは――――――――かつての自分と同じ。


重苦しい『何か』を隠そうとして。
自分は平気なんだ、と示そうとして。
他人にも。
自分自身にも。
わざと笑ってみせた。


それを見抜いたのは――――――――。


『ありがとう・・・・。』


その大きな手で頭をクシャリと撫でて。
包み込むように抱きしめてくれた。
あの広い胸。
あの力強い腕。
微かな震えを感じたように思うのは、気のせいだったのだろうか。


『母上をな、護ってくれよ・・・・。』


体がだんだんと弱っていく事を医者が告げた、それを立ち聞きしてしまった、その日から。
母の前で、皆の前で。
笑顔以外の顔を見せてはならぬと心に決めたのは。


幼い日の――――――――自分。


「・・・お前も、か・・・・・。」
その頭をクシャリと撫でれば。
伏せた顔から、煌くものが零れ落ちる。
「泣きたいなら、泣ける時に泣け。『泣かない強さ』も必要だが、『泣ける時に泣く強さ』もまた、時には必要だ。」
かつての自分なら一蹴したであろう、遠き日に聞いた言葉。
それを是と思うようになった分、自分は成長したのだろうか?


*******************************************************


ひとしきり泣いて。
顔を上げた春香は、グイ、と目を拳で拭った。
(強い子だ。)
一体どれほどのものをその小さな肩に背負ってきたのだろうか。
――――――――たった一人で。


「屋台が出てるって事は、祭があるのか?」
「・・・うん。国の建国記念日だって。」
「そうか。」
足は自然と広場に向かう。
「・・湖には行かないのか?」
「明日、行く。道案内を頼む。」
「・・・うん・・・・。」


では、今日は?


「これなんか、美味そうだな。」
さっさと買い求めたのは、大きな串に刺した肉と野菜。
「熱いぞ。そこに座って食え。」
指し示されて、春香は、花壇のへりにちょこんと座ってかじりつく。
「美味しい!!」
「俺が選んだんだから当然だ。」
食べて。
飲んで。
遊んで。
夜も更ける頃、ようやっと宿への道をとる。


「・・・・母様・・・・・。」


背中で眠りに落ちた春香の呟きに。
記憶の底で何かが痛む。
この少女もまた。
『母』への想いを胸に生きてきたのか。


「お前は一人じゃねぇよ。・・・・・そう、いつも傍に居てくれるさ。」


懐かしい、思い出と共に。
慕う人は、必ず、そこに。


月の無い静かな夜。
星明りの中を、黒い影が音も無く歩いていく。


その眠りが、少しでも安らぐように、と。




                   




・・・・・・・・・・『ほのぼの』じゃねぇじゃん!!

という自己ツッコミをしつつ。
久しぶりに『パラレルだけど原作ベース』で書いてみました。
春香は、個人的にも好きなキャラです。
健気ですしねー。
高麗国の話は書いた事が無かったように思うので、ちょろっと引っ張ってきてみました。
ちなみに食べたのは『シシカバブ』です。美味しいですよん♪

でも黒様、『子守』がすごくお似合いなんですけど、その件についてはいかがで?(爆)

           作者・シュウ   2007.03.01UP

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