「器用なのだな。」
微笑みながら、見つめて――――――いや、『見て』はいないけど。
手伝おうか?という声は速攻で却下する。
「さっきも言ったでしょ?危ないって。」
「しかし。」
「ダ・メ・な・の。」
殊更に強調する。
蔓は意外なほどに強度を持つ。
それを炭火で温めたり、水につけて置いたりして、撓めて編んでいく。
いつ何処で弾いてしまうかもしれない。
――――――――それでなくても、『手探り』なのに。
「怪我なんかさせたら、オレ、命無いから。」
「何でだよ?」
「最大の原因がすっとぼけてる――――――!!」
酒を飲みながら作業を見る黒い疾風に、とりあえず文句をつけておく。
お茶を淹れようと火鉢の上のやかんに伸ばした手をさっさと遮って、代わりに自分が持っている黒い人に。
「黒様、やっさしー。」
「あ?」
エスコート、とかいうレベルではなく、ごく自然に『護って』。
もっとも、『護られている』当事者は、きょとん、としていたりもするんだけど。
いつまでたってもこの2人は、微妙に『ずれて』いる。
(まあ、『ずれて』いるのは1人だけですけどー。)
これが『面白くない』なんて思う人は、おそらく1人も居ないと思う。
「樅ノ木なんて無かっただろう?若干気候的に違っているはずだ。」
「うん、だからヒイラギばっかりなんだー。」
「ヒイラギが有ってよかったな。節分に使うから有るとは思っていたが。」
「面白い風習だよねー、節分。鰯の頭を刺しちゃうなんてー。」
「『見たこと』はないのだったな。」
「えへへ〜〜、楽しみだなあ〜〜・・・。」
コロン。
「あ、転がっちゃった・・・・。」
「・・・その火鉢の方かな?」
「あ、ホントだ。耳いいねえ〜〜。」
「必要、だからな。」
淹れてもらったお茶が、一瞬苦く感じられて。
ふい、と頭を振る。
黒様も、眉間の皺を深くした。
「松ぼっくり、なかなか良いのが無くてさ〜〜・・・。」
振り切るように、ことさらに明るく。
探すのにとても苦労したんだ、と自慢してみせる。
「どれでも同じじゃねぇか。」
「チッチッチッ・・・・これが違うんだよね〜〜・・・。」
実際材料を集めるのには苦労した。
童子たちに案内してもらって、山に蔓を調達に行き。
ついでに松ぼっくりも拾ってきた。
「ネコ様、これどうするの?」
こんな風習の無い日本国の子供たちには、不思議な事にしか思えなかっただろう。
「12月を楽しみにしてて〜〜。」
蔓で作った籠を見かけて、思いついた事だったけど。
「実はセレスにもこの風習無いんだよねー。」
「ソエルが教えたのか?」
「うん。」
あ、しまった。
ふっと和んだような目を、そして表情を見せる時。
それはいつも、『今はもう居ない弟子』の事を思い出してる。
そして、それに気付いた黒様の機嫌が果てしなく悪くなる事も。
その事をこの当事者がわかってないのも何だか笑えてくる。
他人の事には本当に聡いのに。
自分が絡むととことん疎くなる。
「・・・そこがまた良いんだけどね〜・・・・。」
「?」
「あ、いやいや、独り言〜〜〜。」
にひゃ、と笑って。
絹糸を縒り合わせて丈夫にしたのでキュッキュッと結わえつけて。
「はい、完成!!」
「魔除けと、豊穣祈願の両方の意味があるそうだよ〜。」
「効くのかよ、こんなので。」
「信じるモノは救われる〜〜〜!」
表の戸は引き戸だから、柱に小さな釘を打ち付けてつるす。
それは何?と訊ねる通りすがりの侍女や公達に『お守り』と答えて。
静かに時の流れる日本国の冬。
母なる国とはあまりにも違う『冬』。
ここだけ『異文化』ではあるけれど。
でもその根底に流れる想いは、きっと同じ。
聖し、この夜。
どうか皆に幸せが届きますように。
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