クリスマス。
「そんな風習は無いな。」
それは、兄様の言う通り。
玖楼国には『クリスマス』の習慣は無い。
「それは、異国の風習なのですね?」
雪兎さんの柔らかい声。
甘やかすと為にならん、とか兄様が呟いているけど。
傍で見ていた小狼君が、苦笑いを零しているのに気が付いた。
「でもね、旅の途中で、これはとても素敵な思い出になったの!!」
色んな事があった、旅。
色んな人と出会って、色んな事を体験して。
私は一回りも二回りも大きくなれたと思う。
その中で。
私が経験した『クリスマス』は、とても――――――――。
「王様も神官様も、クリスマスをやってみるといいのー♪」
モコちゃんが跳ねながら言ってくれる。
本来なら旅が終わって次元の魔女さんの所に帰らなきゃいけなかったモコちゃん。
それをあの人が一緒に連れてきてくれた。
『修行に必要だろう』、と言って。
もちろん、それもある。
でも、それ以上に、打ち沈んでいた私の為だったと、小狼君が話してくれた。
とても嬉しかった。
まるで一足早くクリスマスプレゼントを貰ったみたいで。
だから。
「玖楼国でもクリスマスをやりたいの!!」
―――――――――――――― * ―――――――――――――
「小狼君は、『クリスマス』は知ってたの?」
結局、『国の行事としては出来ん』という兄様の言葉を受けて、私たちだけでやる事になった。
樅ノ木なんて無いから、小狼君が木切れを細工してツリーを作ってくれている。
私とモコちゃんで飾り付けをする紙細工を作っていた。
「・・・父さんと巡った国で、1度だけ・・・・・。」
その目は、何処か懐かしむようで。
映っているのは、優しいお父様?
(考古学者だって言ってた。)
私はその人を知っているのだろうか?
もし私が知っている『考古学者』さんなら。
その人の『傍』に、誰か居る?
――――――――わからない。
昔の事、断片的に抜け落ちた『キオク』。
確かにそこに『誰か』がいるのに。
それが『誰なのか』がわからない。
もしかしたら小狼君なのかもしれないし、そうでないのかもしれない。
私には――――――――わからない。
「『キオク』は1つの縁でしかありません。」
――――――――誰?
「たとえ失っても、新しい『キオク』をつなぐ事が出来ますよ。」
この声は――――――――確か・・・・
「そう、時の流れの中に、たとえその手を離したとしても。」
そうだ、この声。
『考古学者』さんだ・・・・・。
「聖夜の光に『ネガイ』を託してみませんか?」
――――――――『ネガイ』?
「・・・メリー・クリスマス。お姫様。」
―――――――――――――― * ―――――――――――――
新しい『キオク』。
新しい『時間』。
聖夜の光に『ネガイ』を託すなら。
――――――――私の、『ネガイ』は。
どうか私の大切な人たちが
みんなみんなお互いを忘れずに
幸せになれますように。
メリークリスマス。
――――――――小狼・・・・・・・。
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