さくり、と雪を踏みしめる。
「この国も雪が多いんだね。」
「寒くない?」
「平気だよ。」
「うん。」
2人でいると、あったかいね。
いつも夢に見るのは。
旅の思い出。
笑って、怒って、哀しんで、喜んで。
走馬灯のようにそれは通り過ぎていく。
懐かしい顔。
「サクラちゃん・・・・・。」
「小狼君・・・・・・・・。」
「黒様・・・・・・・・・。」
たとえ声に上せても。
それが届かない事は十分すぎるほど解っているのに。
「・・・・リアンさん・・・・・。」
本来なら、自分と同じ想いを共有したであろう、その人は。
『次の転生のための命』を捨ててしまった。
削り続けた命。
オレ達の中で、真っ先に逝ってしまった、命。
しかもどれほど時を経ようとも、決して出会うことのない、命。
時の流れの果てに他の皆は転生していくだろうに。
――――――――あの人は、もう。
「ファイ・・・・寂しい?」
躊躇いがちにかけられた声。
「大丈夫だよ、モコナ。」
静かに優しくほお擦りをして。
ただ一人残ったオレは、『旅』をすることに決めた。
次元の魔女さんは、そのオレの為に、眠っていたモコナを起こしてくれた。
『貴方はこの子と行くべきなのよ。』
そう言って。
やはり同じように起こされた、黒いモコナをその腕に抱いて。
「ソエル、元気でな!」
「うん!ラーグもね!!」
二コリ、と笑って始まったオレ達の旅。
行き先なんか決めてない。
でも彷徨い続けていたならば。
――――――――いつかどこかで『出会う』だろうか?
エメラルドの瞳に。
琥珀色の瞳に。
紅玉の瞳に。
そして、決して出会うことはない。
ブルーゾイサイトの瞳に。
「何処に行こう?・・・とりあえず、玖楼国と日本国には行かなきゃね。」
「じゃあ日本国から行こ?」
「よし、決まり〜〜・・・・。」
会えたら、どんなにか嬉しいのに。
黒い疾風に。
―――――――――――――― * ―――――――――――――
日本国、諏倭の地は雪に閉ざされていた。
「すごく降ってるね〜〜〜。」
「うん、ハンパじゃなく降るって言ってたからねえ。」
足を止めて、呟く。
目の前には――――――――小さな墓標。
「久しぶり・・・・・黒鋼。そしてリアンさん。」
白い雪で満たされた世界で。
2人の姿が見えたような気がした。
(幸せそうだね。)
何となく、安心できる気がする。
「ねえ、ファイ。」
モコナが肩の上でそっと囁く。
「どうしたの、モコナ?」
「あのね・・・あのね・・・・・。」
それは、躊躇うように、小さく紡がれて。
「今日・・・・・クリスマスだよ。」
すっかり忘れてた。
元々クリスマスの習慣は日本国には無い。
それでも毎年リースを作ったりしてた。
「そのたびに呆れた顔してたよね。黒鋼は。」
結構傷ついたんだぞー、と墓標に向かっておどけてみせる。
少し小止みだった雪が、また降り始めた。
「行こうか、モコナ。」
「うん。・・・・あ、でも。」
「・・・・そうだね。やっぱりちゃんと言っておかなきゃ。」
顔を見合わせて、ふふっと笑いあう。
そして向き直り。
せーの、で声を合わせて叫んだ。
「メリークリスマス!!君達に、そしてこの諏倭に幸多かれ!!」
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