虹の『色』があまり好きでない、と言ったら、ずいぶんと怪訝そうな顔をした。
「女ってぇのは、虹みたいにきれいな物は大好きなもんだと思ってたけどよ。」
彼の感想は、あながち間違いとは言い切れない。
実際そうだろう。
『虹』を嫌いだと言う女性には出会ったことが無い。
私も、まあ『嫌い』ではないが。
「でも、その『色』が、な。」
「訳わかんねぇ。」
ふふ、と笑ったのが気に食わなかったのだろうか。
「どういう意味だよ?」
しつこく食い下がってくる。
彼の面白い所は、こういうところだ。
その気が無さそうで、実は興味しんしんで。
そんな所はまだまだ子供っぽいと思う。
そんな事を口に出したら、火の玉のようになって怒るのだろうけれど。
初めて会った時。
彼は『人間』ではなかった。
母親の骸を胸に抱き、抜き身の剣を引っさげて。
その目は『狂って』いた。
鍛え上げた忍軍が束になって掛かっても、敵わなかった。
目の前に。
『修羅』がいた。
姫様のお力無くば、あの場は収まらなかっただろう。
私も無事であったかどうか。
あの時の『少年』は、その『チカラ』の全てを『強くなる』事だけに向けた。
如何なる者の言も聞かず。
ただひたすらに、『強さ』だけを求める戦鬼と化した。
今は私よりも背は高く。
一回りも二回りも大きい『彼』だけど。
研ぎ澄まされた『気』とその上に纏う『殺気』の合間から。
時折覗く『少年の目』が、どこか、可笑しくて。

「『虹』は、ほら、色の境目がはっきりしないだろう?」
「あぁ?」
「何と言うか、曖昧で・・・・だからあまり『好き』ではないのだ。」
「・・・・まぁ、『はっきり』しちゃあいねぇわな。」
「それに、あれは『死者の世界への架け橋』と言う者もいる。」
「・・・・・・。」
「私はまだ、『あの世』に行くつもりが無い。だから、『嫌い』なのかな。」
「・・・てぇした自信だな・・・・。」
「『自信』ではないよ。・・・・『信念』とでも言うのかな?」
「ふぅん。」
解ったような、解っていないような。
少し首を傾げた仕草に、まるで『弟』のような感さえ受ける。
――――――――そう、『弟』。
私に兄弟が居たならば、きっとこんな風だったのだろう。
『今』が『平和』で『幸せな』時代であったなら。
「―――――――私も、『虹』が好きになれたのかもな。」
雨上がりの滴が、階に奏でる音楽を聴きながら、私は『夢』を見た。
――――――――柔らかな色に包まれた、優しい『夢』を。
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