「 魅 せ ら れ た 翠 玉エメラルド 」




「真っ暗・・・怖い・・・。」
「大丈夫ですよ、姫、皆ここに居ますから。」
「サクラちゃん、皆いるよ。」
「心配なんざ要らねぇ。安心しろ。」
「モコナもちゃんと居るよ!」
一人一人と手を合わせて、握り合わせ、顔をたどって。
それでもその指の震えは止まらない。
「怖い・・・・・!」
砂漠の姫の怯えは誰にも癒せなくて。
小狼とファイは困ったように顔を見合わせ。
黒鋼は眉間の皺を深くした。


ここは「『緑』を奪われた国」。
あらゆる『緑』のモノが失われた国。
そして――――――――。
次元移動でやってきた、サクラの『目』が失われた国。


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「それは『小人』の仕業だよ。」
宿の女将は心底同情したように、サクラの手を握ってやりながら、そう言った。
「この国の『緑』は皆、森の奥に住む『小人』が持って行ってしまったんだ。」
握った手を、優しくこすり合わせて。
「可哀相に、あんたの目はきっときれいな『緑』だったんだね?この国に来たのは本当に『不運』だったよ。」
「どうやったら『緑』は―――――姫の『目』は返してもらえるんですか?」
小狼の問いに女将は首を横に振った。
「今まで何人も『小人』の元に赴いたさ。でも、誰一人帰ってこなかった。」
悪いことは言わない、おやめ、と。
「へっ、そんなことにビビるかよ。」
「俺は必ず取り返します。」
絶対にいうことを聞かないワンコが2匹。
「ファイさん、姫をお願いします。」
「ん〜〜しょうがないね〜〜〜。じゃあ頼んだよ。小狼君、黒たん。」
「はい!」
力強く頷いて。
もう一度サクラの手を取った。
「『必ず』、姫の『目』を取り返してきます。」
「小狼君・・・・・。」
「『必ず』此処に『帰って』きます。・・・行ってきます。」
小狼が離れると、代わりに黒鋼が近づいた。
「姫。」
「・・・黒鋼さん・・・・。」
「『此処』で、『待って』いろ。『必ず』帰る。」
「・・・はい・・・・。」
きゅっとその頭を抱え込み。
ぽふぽふと叩いて、すっと離れた。
「行くぞ、小僧。」
「はい。」
二人の去っていく足音に、サクラの肩が震え始める。
「大丈夫だよ、サクラちゃん。」
「・・・ファイさん・・・・・。」
「2人とも『必ず帰る』って言ったでしょ?あの2人が約束を違えた事があった?」
「・・・いいえ・・・・。」
「じゃあ、待っていよ?オレ、ここにずっと居るからさ。」
「モコナも一緒〜〜〜!」
「・・・・はい・・・・・。」
それでも不安は消えなくて。
無限の闇、深淵の恐怖。
砂漠の姫が立ち向かうには、それはあまりにも大きなモノだった。


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「拍子抜けたぁ、この事だ。」
憮然として。
「えぇ・・本当ですね・・・・。」
小狼も、同調する以外には無く。
『森の奥に住む小人』とやらは。
本当に小さくて。
「『グール』と呼ばれる小悪魔がこんな感じだと本で読んだ覚えがあります。」
それは住処の塔を蒼氷の一閃で崩されて。
逃げ出そうとした所を緋炎の炎に阻まれた。
がくがく震えて必死で許しを乞う姿は、『所詮は小物』と。
「てめぇ、何で『緑』のモノを奪ったんだ?」
威圧の波動に震えながら小人は猛然と弁解を始めた。


この国は、『緑』がどんどん失われていく。
『森』も此処が最後になってしまった。
自分は何度も『警告』したのに。
このままではいつか自分たちが滅びるのだ、と。
でも人間たちは耳を傾けなかった。
だからせめて『緑』を守りたい、と強く願った。
そんな小人の前に、光り輝く『羽』が現れた。
小人が強く願った、その『心』に反応して、『緑色のモノ』が、次々と小人の下に集まり始めた。
それは『宝石』だったり。
それは『生い茂った木』であったり。
そして――――――それは『目』であったり。


こんな事、望んでなかったのに。


小人はえぐえぐと、しゃくりあげながら訴えた。
自分の力では、もう『羽』を止められない。
どこか遠くに捨ててきてくれないか?と。
小人の後ろ、うずたかく積み上げられた『緑のモノ』の上で、『サクラの羽』が光り輝いていた。
小狼が掴むと、光はすう、と消えた。
途端に、今まで集まってきていた『緑のモノ』が飛び散り始めた。
「元在った所に帰っていく。」
心底ほっとしたように。小人は力なく呟いた。


「これでこの国の『緑』はなくなってしまう・・・・。」


それはとても寂しそうに。
哀しそうに。
小狼は小人の前に膝をついた。
「君が『緑』を守ろうとしたこと、皆に伝えます。」
「無駄だよ、きっと誰もわかってくれない。」
「でも、きっと『誰か』わかってくれます。小さな一歩を踏み出せるはずです。」
ぼんやり眺めて。
小人は泣き笑いの顔をした。


「お願いします。」


声と共に。
小人は『消えた』。


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「これでいいでしょうか?」
「うん、そんな感じ。」
「おや、すっかりキレイに出来たねえ!ありがとうよ皆。」
植木鉢に、プランターに。
色とりどりの花。
みずみずしい緑の葉が、ジョウロの水を弾いて煌かせる。
「うちが発信源になって、皆に伝えていくよ。『緑』を大事にしよう、ってね。」
宿の女将がニコニコと。
胸元には『亡くなった亭主の形見さね。』と説明したエメラルドのブローチがキラキラと光る。
「あたしのこれもキレイなもんだ、と思ってたけど、あんたのこの『目』には敵わないねぇ〜。」
サクラの顔にそっと手を遣る。
あるべき所に戻った、二つの『翠玉エメラルド』。
引き込まれそうな『チカラ』をみせて。
煌く瞳を見る、黄玉と藍玉と紅玉。
それは、安堵の色、慈しみの色。
魅入られて、『それ』を見つめて。
サクラはにっこりと微笑んだ。




「・・・・・・ありがとう、みんなのおかげです。」




護る者、護られる者。
交差する視線は、柔らかな光の中に溶けていった。

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・・・・・これを書き上げたが、衝撃のマガジン発売日。
こんなタイミングで『目』ネタを出していいもんか?!とかなり悩みましたが。
・・・・いいの、『どっぷんこ』だから。(開き直り)

あんじぇ様〜〜お気を確かに〜〜〜。

           作者・シュウ   2006.06.21UP

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