「 指 先。 そ し て 深 く 」




「・・・可愛い・・・・・。」
「ホント可愛いねえ・・・・・。」
「こういう手を『紅葉みたいな手』って言うんだがな。」
「・・黒様、風流〜〜〜。」
「はぁ?!」
「しぃっ!大きな声出したら、起きちゃうよ?!」
「・・・・・てめぇのせいだろうが・・・・・。」
公園で、ベンチの周りで三々五々にくつろぐ一同。
傍らにはベビーカー。
中ですやすやと寝息をたてて、赤ん坊が眠っている。
「ほら、こうやって、こういう角度でやるとボールが逃げないんだ。」
「お兄ちゃん、すごい!!」
きらきらした瞳と、はしゃぐ声。


次元移動から出てきたのは、別世界の公園。
さて如何しようかと辺りを見渡した時、ボールがポーンと転がってきて。
「すみませーん。」
手を振って合図する小さな男の子に向かって、小狼が軽くボールを蹴った。
それがいたくその子の心を捉え、かくして即席のサッカー教室の開催と相成った。
たちまち何人かの少年たちが群がってくる。
小狼は年長ばかりにボールが行かないように気を配りながら、簡単な足の使い方を伝授中だ。
「いい『先生』だね〜。」
実際子供たちは、満足そうにボールを追っている。
自分自身が黒鋼に教えを請うていることで、『指導のあり方』を身につけたのだろうか。
そのうちやってきた少年は、とてもやりたそうに見つめていた。
仲間らしい少年たちが声をかけたが、首を横に振って。
自分が妹のベビーカーを押している事で諦めていた。
「お母さんは?」
サクラが問えば。
「風邪を引いて、熱が出て寝込んでるの。でも妹が泣くから、ゆっくり眠れなくて・・・。」
散歩をさせれば赤ちゃんは落ち着く、と以前母親が話していたのだという。
だからベビーカーに乗せてもらって、自分が散歩させているんだ、と。
「偉いじゃねぇか、坊主。」
黒鋼が、頭をくしゃりと撫でた。
『母の患い』がどれほど心に重いかは、自分が一番よく知っている。
泣き笑いの風の少年に、ファイが言った。
「赤ちゃんは此処でオレたちが見ててあげるよ。だからちょっとだけ、小狼君と一緒にサッカーをしておいで。」
「え?!」
「小狼君が終わらなければ、オレたちも何処にも行けないしね。」
ちょっといたずらっぽく笑って。
「でも赤ちゃんが泣き出しちゃったら、戻ってきてね?」
「・・・いいの・・・・・?」
「もちろん。」
「・・・ありがとう!!」
満面の笑みを浮かべて、少年は小狼の方に走っていった。
時々ちらちらとこちらを見るが、そのたびに手を上げてやると、また安心したように興じている。
ベビーカーをコロコロと押したり引いたりしながら、ベンチでまったりとしながら。
ファイは昔聞いた話を思い出していた。


***************************************


赤ん坊は皆、『星』をつかんで生まれてくるのだという。
大きい星。
小さい星。
それは人それぞれではあるけれど。
その『星』は、その赤ん坊にとっては『世界』そのもの。
その小さな掌に。
何と大きな物をつかんで生まれてくる事か。
頼りないほどの小さな小さなその指先は。
いつか世界の中心を指し示すのだろうか。
そしてその瞳は。
その更なる奥、世界の深奥を見そなわすのか。


初めは誰もが『純粋』な、その存在。
時を刻むとともに、色々な色に染まっていく。
『闇』の色に染まった自分は。
もはや暗闇の底を覗くことすら出来ないのだろうか。

出来ないと思っていた。
実際出来なかった。
あの氷に閉ざされた国では。


でも。


今は『何か』が見える。
何故見える?


それは、自分が『変わった』から。
自分の為に。
他人の為に。


(オレの『星』は――――――――。)


何処かで、微かに、しかし確かに煌いていた。



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タイトルと視点設定を、はなはだしく逸脱しているという自覚だけはしっかりと・・・・。
ビミョーに『東京篇』とかぶりますが(汗)まだ平和な旅の途中という事で。

子持ちの友人曰く、
『今時子供だけで公園に行かせて、ましてや見ず知らずの人に下の子預けて遊ばせるなんて事、怖くて出来ない!』
・・・・・・・そうですねー・・・・。
物騒な世の中になったもんです。

           作者・シュウ   2006.06.12UP

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