<10000HIT記念 キリ番リクエスト小説>

    「 砂 浜 の ラ プ ソ デ ィ 」





ざぱーーん・・・・。
ざぱーーん・・・・。
寄せては返す、波。
サクラは茫洋として、飽かずにそれを見つめている。
「泳がないのか?」
唐突にかけられた声に振り向く。
夕闇色の瞳が逆光となって見下ろしていた。
「あ・・・・なんだか、ぼんやりして・・・・・。」
心此処にあらずの体で、波間に視線を戻す。
一緒になって眺めながら、ふと聞いてみた。
「『泳げぬ』のか?」
「・・・・・・はい・・・・・。」
玖楼国は砂漠の国。
水は大切な、稀少な物。
プールなんて贅沢は、当然ありえない。
オアシスとて、そうそう泳ぐわけにもいかなかっただろう。
「・・・・教えようか?」
「え?」
思わず声に出してしまった。
「・・・でも・・・・・水着・・・・・。」
自分は水着を着ている。
この国に来た時に、店で購入した。
――――――――『羽』の気配が海から感知されたから。
男組は沖にボートを出し、交互に潜ったりして探している所だ。
だが、リアンは購入しなかったのだ。
「私が行った方が『早い』とは思うが・・・・。」
何故か、断固としてファイは留守番を拒否した。
「ファイさん、日に焼けますよ?」
心配顔で言った小狼に、上着を着ていくから大丈夫、と息巻いて。
「どうせ皆が帰ってくるまで暇だ。泳ぎの練習をしたとて問題はなかろう。」
「・・・・はい・・・・。」
ゴーグルを渡されて。
少しきつめにかけて、サクラは水の中へそろそろと入った。
「・・・冷たい!!」
「すぐ慣れる。」
見れば、リアンは服のまま海に入ってくる。
「あ・・・あの!!」
「魔法というものは、便利なものでね。」
潮に濡れようが、すぐに清浄な状態に戻せるのだと。
安心して、サクラは腰ぐらいの深さの所まで進んだ。
「まずは顔をつけるところから。」
小さな水泳教室が始まった。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


「・・・無いねぇ〜〜・・・・。」
「大体この辺りで間違いねぇんだろうな?白まんじゅう?」
「うん!モコナ、だいぶわかるようになったもの!!」
かなり復活してきたモコナは自信たっぷりに言う。
この辺りもまだ遠浅で、そんなに深くない。
素潜りで海底まで行ける。
だが、どれほど探しても、やはり『羽』は無い。
「一度戻ってみるか。」
「賛成〜〜〜。」
ファイは上着を着ているとはいえ、やはり赤くなっている。
それに持ってきた飲み物もなくなってしまった。
「・・・よっ、と・・・・。」
「ありがとうございます、黒鋼さん。」
小狼がボートに乗るのを手伝って。
黒鋼はオールを漕ぎ出した。――――――浜辺に向かって。
「あれー?サクラちゃん、泳いでるー?」
手をかざしてファイが見る方を見遣れば、確かに見慣れた栗色の髪がバシャバシャとやっている。
「姫は泳げるのか?」
「いえ・・・・たぶん泳げないと思います・・・。」
「あー、リアンさんに教えてもらってるんだー・・・。」
サクラの前方に、やはりポカリ、と頭が浮いていて。
その感じから推察すれば、サクラでは背の届かない深さのようだ。
何事かサクラに言って。
こちらに気付いたのか、サクラが手を大きく振った。
と、その時。


「姫!リアンさん!!」


二人の間近に突然起こった渦が、あっという間に二人を飲み込んだ。
「ちっ!」
黒鋼が即座に飛び込む。
白鷺城の近くには海がある。忍術の鍛錬の一環として、荒海での水練もまた叩き込まれていた。
水中に巨大とも言える渦が巻いているのが見える。
その渦が。
一瞬で『消えた』。
(?!)
後から聞いたところによれば、『内側から逆回転の渦を仕掛けた』のだそうだが。
渦のせいか、海底は大きく抉れており、此処だけ格段に深くなっていた。
見ればふわりとした光に包まれたサクラと、その腰を抱えて海底を見ているリアンがいる。
(『結界』か。)
ならばサクラは大丈夫だろう。泳ぎ寄ってみれば、こちらに気が付いたのか、下を指差している。
(?)
見れば、なにやら、光のようなものが見える。
(姫の羽か?!)
すぐにも行きたかったが、息継ぎも兼ねて一旦海上に出る。
「黒鋼さん!姫!リアンさん!!」
小狼がボートをこぎ寄せてきた。そのままサクラをボートに引き上げる。
「サクラちゃん、大丈夫?」
「・・はい。大丈夫です。」
まだ心臓がバクバク言っているようで。
ファイは自分の上着をサクラに掛けた。
「ここの海底にあるようだ。」
「!・・・じゃあ・・・。」
「お前は姫に付いててやれ。」
「じゃあ、オレが行こう〜〜〜!」
実は上着がないから海の中に入って身体を冷やしたい、というのが本音だが。
ファイはザブン、と飛び込んだ。
リアンと黒鋼もそのまま潜る。
(しかし服着たままだってのによく泳げるな。)
『着衣水泳』は、服そのものが邪魔になるので非常に泳ぎにくい。
しかしそんなことを微塵も感じさせないのは――――――やはり『魔法』なのだろうか。
(光ってるね。)
(あれがそうだろう。)
(白まんじゅう、間違ってんじゃねぇかよ。)
それぞれ心の中の声が通じるはずもないが。
『羽』は海底の岩で構成された『穴』のような所に収まっていた。入り口はかなり狭い。
黒鋼が岩を動かし、ファイが『羽』を手に取った。
(・・・・?)
『羽』のあった場所の奥に、空洞を認めたリアンは、ふい、と光を送った。
光は空洞の奥に吸い込まれていく。
(上がるよ。)
ファイが合図をして。
3人は海上へと浮かび上がっていく。


「はい、サクラちゃんにお土産〜。」
『羽』はサクラにすう、と吸い込まれて。
カクン、と眠ったサクラは、そのままボートに横たえられた。
「おい、白まんじゅう、全然場所が違うじゃねぇか。」
「でも、確かに『羽』の気配がしたんだも〜〜ん・・・・。」
長い耳がシュン、となる。
「あながち間違いではないようだ。・・・ほら。」
指差す方を見れば、ポウ、とした光が波間に浮かび上がってきた。
そこは、確かに今まで自分たちが探していた辺りだ。
「『羽』の下に空洞があった。その出口があの辺りにあるようだ。」
「じゃあそれを伝わってきてた『気配』にモコナは反応したんですね?」
「そういう事になるかな。」
小狼に答えて。
「では、先に戻る。」
止まる間も有らばこそ。あっという間に潜って見えなくなった。
「・・・まあ服着たままだと、下手に海上に出ないほうが泳ぎやすいかもねえ?」
ファイの言葉は、何だか言い訳のようにも聞こえて。
「ついでだからオレも泳いで戻ろう〜〜黒様、競争しない?」
「あぁ?!てめぇ、俺に勝てると思ってんのか?!」
「ものすごく思ってます!・・・ではスタート!!」
「てめぇっ!抜け駆けか!!」
バシャバシャと。
意外なほど早いファイのクロールと、黒鋼の抜き手の勝負は岸に着くまで続けられていた。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


「では、サクラちゃんの羽も戻った事ですので〜〜!」
にんまりと笑ってファイが取り出したのは『スイカ』。
「まずはサクラちゃんから!」
問答無用で目隠しをして、棒を渡す。
「そこ!まっすぐ!」
「姫、もう少し右です!」
「え?!このあたり?!」
「もうちょい左かな〜〜?」
「・・・・えい!!」
「・・・・あ〜〜〜おっし〜〜〜い・・・。」
さすがにサクラはスイカに当てる事も出来なかった。
次は小狼。サクラが目隠しを結ぶ。
「ねぇねぇ、リアンさん。」
「?」
パラソルの下で見物を決め込んでいたリアンは、ファイに耳打ちされて、ふと笑った。
ふわ、と『羽根』を飛ばす。
サクラはファイに言われたとおり、小狼をグルグルと4〜5回回らせていた。
「ハ〜〜イ、ではスタート!!」
言われて小狼は気配を・・・・・。
「・・・・・あれ?」
「うふふ〜〜〜小狼君〜〜〜『判らない』でしょう〜〜?」
「・・・ファイさん・・・『何か』したんですか?」
「リアンさんに、気配を読めないようにしてもらった〜〜♪」
小狼君も黒たんも気配で見つけちゃうから〜〜、と。
「つまんねぇトコばっかり気が付きやがって。」
ターフの下でアルコールを飲んでいた黒鋼が毒づく。
結局小狼も外してしまった。
「次はファイさんですか?」
「日に焼けるからパス〜〜。」
「女みてぇなこと言いやがって。」
座ったままサクラに目隠しをしてもらい、おもむろに歩き出して。
ビシィッ!と棒をファイに向けた。
「金色のスイカをかち割ろうか?」
「・・・黒たんが言うと、冗談に聞こえない〜〜・・・。」
「本気だ。」
「余計にコワイ――――――――っ!!」
胸の前で大きく腕を交差させて『×』マークを作ってファイが後ずさる。
「黒鋼さん!もう少し前です!」
「もう1歩右!」
「もうちょっと右なの〜〜!」
「あ〜〜黒りん、行き過ぎなの〜〜〜!」
「ごちゃごちゃうるせぇぞ、白まんじゅう!!」
その時。
ふわ、と風が吹いた。
(・・・・そこか!)
風の微かな曲がりから、気配で辿れないスイカの位置を読み取る。
大上段に構えて、一気に棒を振り下ろした。
「・・・ひゅー・・・・・。」
口笛を口真似で。
スイカは見事な切り口を見せて真っ二つに斬られていた。
「とても『棒』で『斬った』とは思えない・・・・。」
感嘆しきりの小狼に、目隠しを外して、ふん、と笑い。
ターフの下に戻って飲み物に手を伸ばした。
テーブルの上に置かれたスイカは、リアンがパチ、と指を鳴らせば食べやすい大きさにパン!と分かれて。
シャクシャクと音を立てて齧り付けば、なかなかの甘さ。
「おいし〜〜い!」
「甘ーい!」
「ん〜〜〜浜辺で食べるスイカって最高〜〜〜!」
「確かにいけるな。」
「いい熟れ加減だ。」
「モコナ、満足―――――!!!」
スイカ1個、あっという間にお腹の中に納まって。


寄せる波。
返す波。


旅の空の下の、ほんのひと時の、安らいだ時間。


それは――――――――『煌く太陽と青い海の想い出』。



                   キリリク目次に戻ります



「10000HIT」をゲットしてくださった桜都様に捧げるショートショートです。

・・・・前半部分は、全くキリリクとずれてます。^^;
何だか書き出したら止まらなくて。
かろうじて修正しましたが、ハテこれでちゃんと戻ってるのかどうか(大汗)。
桜都様、返品、修正希望、共に受け付けます・・・・・。

と・・・とりあえず・・・桜都様、ありがとうございました!(逃走)

           作者・シュウ   2006.08.31UP

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