ぼくら誰でも大切なナニカをきっと持ってんだ
大なり小なりひとそれぞれの何かを持ってんだ
この国に来てから。
いや正確には、壁に飾ってあった『ギター』を爪弾いてから。
小狼はよく『歌』を歌うようになった。
ファイのそれは『鼻歌』だが。
小狼のはきちんとした『歌』になっている。
小声で、誰に聞かせるでもなく、ただ口をついて出ているといった感じで。
それだけに、余計にその歌が心に残る。
「小狼君、今日のその歌は、なんていう歌?」
サクラの問いかけに、自分が歌っていたことに気が付いて小狼は顔を赤くした。
「済みません、姫・・・うるさかったですか?」
「うぅん、ちっとも。・・・・いい歌だなあ、って思って。」
サクラが微笑んで答えれば。
小狼もほっとしたような表情を見せる。
「これは題名は知らないんですけど・・・・。」
それは、少し思い出すように。
「父さんと旅をしていた時に、ある国で発掘仲間が教えてくれた歌なんです。」
何故心に、そして記憶に残ったのか。
今となってはそれは解らない、としか言いようが無いのだが。
ねぇ 単純に気高き夢のタメ 愛するヒトのタメ
できない事なんて 1つでもあるかい?
「私にも、その歌教えて?」
「いいですよ。」
小狼は又ギターを取り出してきた。
ポロンポロンとコードを確認する。
「じゃあ、少しずついきますね。」
例えば日カゲでゆれる その花を何故か愛しく思い
「どうにかして日なたに」と悩めたら 少し強くなれる
小狼のリードにのって。
サクラが音を、そして歌詞を合わせていく。
例えば大事な人の泣くスガタに 言葉が出なくても
「とっておきの唄」を聴かせてあげれれば ナミダも止められる
単調そうで、しかし心に染み入るようで。
サクラは歌詞に込められた『想い』を汲み取ろう、とした。
守るべきものがあれば リトルブレイバー
守るべきヒトがいれば リトルブレイバー
音程が取りにくいのだろう。ギターの音とサクラの声に不協和音が生じる。
「高い音は、下から上がってくるんじゃなくて、上から吊り下げるようなイメージで音を出すと上手く出せますよ。」
手まねで吊り下げるまねをしながら。
小狼の言葉にサクラはコクリと頷く。
聞いていた皆の顔が。
自然と綻んでいた。
僕にとって唄う事が ブレイバー
全身全霊のチカラを・・・・・・・・・・・・。
―――――――――――――― * ―――――――――――――
その夜。
1人探索に出て。
ふとホールのような所に行き着いた。
音楽の盛んなお国柄らしく、誰でも出入りが自由になっている。
舞台の上には様々な楽器が置かれていたが。
「・・・ほぉ。」
リアンは『ピアノ』の前で足を止めた。
もっとも、この国でも『ピアノ』と呼ぶのかどうかは解らない。
だが形状が同じで仕組みも同じようであるこの楽器は、おそらく同じような音がでるのだろう。
「『スタインウェイ』か。」
(確か、侑子の居る『日本』で。)
見かけたピアノに、同じ刻印がされていた。
聞けば有名な作り手であるという。
では、この世界にも。
同じ名の名工が手がけているという事か。
すい、と椅子を引く。
座って、足のペダルの位置を確認して。
鍵盤の上に指を走らせた。
天駆ける戦姫たち。
彼女たちは、戦いに倒れた戦士の魂を神の御許、『ヴァルハラ』に誘うという。
その姿を見た者は。
妙なる楽をも耳にするという。
ならば、今。
誰一人在らぬこの場所に。
いや、気配を消して佇む黒き疾風と。
月光をその髪に弾く白き魔術師の、その耳に。
響き渡るこの旋律は。
そして。
その『音』に乗せて、その口から紡ぎ出される歌の『詞』は。
天上の楽人が織りなす調べか。
それとも地獄の騒霊のさんざめく声か。
もう気付いただろう 僕に君のドアは見えない
同じドアをくぐれたら――――――と願っていたよ
おそらくもう戻れない
いつか忘れる
君といた場所
その涙と引き換えに
その記憶と引き換えに
この歌と引き換えにして
僕らは 行ける――――――――。

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