「1、2、3、・・・1、2、3、・・・・。」
くるくると。
少々ぎこちなさの残るステップを踏みながら、砂漠の姫が舞う。
くるくる、くるくる。
すうっと足を止めて、深々とお辞儀をした。
「うん!サクラちゃん、上手になったよ〜〜!」
金髪の魔術師が手を叩く。
砂漠の姫は、頬をその名の色に染めて。
見守る少年も、同じように。
「ダンスホールに行くには、やっぱり踊れないとね〜〜♪」
デカダンスの香り漂うこの『国』は。
浪漫の色に染められて。
『ダンスホール』に居るという、『情報屋』の存在を教えられたものの、『其処』でしか会えないとわかり。
『誰』が行くかで大揉めに揉めた。
小狼は年齢制限に引っかかった。
サクラはかろうじてOKだったので、要員1。
では相手は?
「男女の組でないと入れないしねぇ〜〜。」
店もあるので、本当は・・・・・。
「黒様が行ってくれるといいんだけどね〜〜?」
冗談ではない、と一瞥されて。
やむなく『本日臨時休業』の札をかけることで、ファイに決まった。
行き先が行き先なだけに、『踊れない』のでは話にならない、と。
魔術師によるダンス教室が開かれているわけだ。
もちろん部外者二人は、『鬼児狩り』が無ければとりあえず見学している。
金色の風と。
桜色の風が。
ふわり、ふわり、と。
―――――――――――――― * ―――――――――――――
魔術師と少年とモコナが買出しに出かけて。
忍者はのんびり木陰で昼寝をしていた。
穏やかな昼下がり―――――――だが。
「1、2、3、・・・1、2、3、・・・・。」
昼寝の妨げにならないようにか。心持ち小さめの声で。
だが続いたため息は、とても哀しそうで。
忍者は思わず声を掛けた。
「どうした?姫。」
「黒鋼さん・・・・・。」
振り向いたサクラは目に一杯涙をためていた。
「・・・なんかあったのか?」
「・・・・できないんです・・・・・。」
「あ?」
きょとん、とした。
「『何が』できないって?」
「・・・・ダンスです・・・・。」
「・・・・・・。」
ふわりふわりと綺麗に踊っているように見えたのだが。
「あれじゃあいけねぇのか?」
『素人』にはわからない。
「『一人』ならできるんです。でも、ファイさんと一緒に踊ると・・・・・。」
どうしても間違ってしまうステップがあるのだという。
「そりゃあ、あのヘライのが悪ぃんじゃねぇのか?」
確か、『ダンスは男性がリードする』とか説明していた気がする。
「違うんですぅ――――・・・・。」
サクラはぽろぽろと涙をこぼした。思わず黒鋼はわたわたとする。
「お・・・おい、泣くなって・・・・。」
しゃくりあげながら、サクラは説明した。
『一人』なら大丈夫だが、ファイと踊るとどうしても間違う。
だから『木の枝』に手を掛けて練習しているが、どうしても上手くいかない。
『出来ない』自分に泣いているのだ、と。
「・・・あ―――、すると、なんだ?『木の枝』じゃあ駄目なんだな?」
「・・・はい・・・・『私』が駄目なんですぅ・・・・・。」
このままでは、地の底深くまで落ち込んでいきそうだ。
頭をガシガシと掻いて。
手を差し出した。
「・・・・ほれ。」
「・・・?」
「『木の枝』は『手』を取ってくれねぇだろ。だから出来ねぇんだ。」
「・・・・黒鋼さん・・・・・。」
「・・・言っとくが、難しい『すてっぷ』とかはできねぇぞ。」
まさか、黒鋼が。
『ダンス』の相手をしてくれるなんて。
呆然としていたサクラだったが、この機会を逃す手はない。
『今』練習しなくては、『自分にできる事』が出来ない。
「・・・お願いします。」
そう言って。
サクラは手を差し出した。
黒鋼が静かにその手を取る。
サクラはステップを踏み始めた。
「1、2、3、・・・1、2、3、・・・・。」
サクラは内心驚いた。
黒鋼はダンスの練習なんかしていない。
それなのに。
簡単なタイプの物だけとはいえ、正確にステップを踏んでいる。
「・・・黒鋼さん・・・?」
「・・・忍者は、『見ただけで相手の動きを覚えなきゃならねぇ』んだよ。」
まさに職業のなせる業。
ファイの動きを『見ていた』だけで覚えたのだろう。
さすがに難しいのまでは出来なかったようだが、今のサクラには十分だった。
そして。
「・・・・・出来た!!」
どうしても出来なかったステップをクリアした。顔一杯に笑顔が広がる。
「黒鋼さん!ありがとうございます!!」
「あ・・・・うん、まぁ、良かったな。」
ぼそぼそと。頭を掻きつつ向こうを向いた背に、サクラは声を掛けた。
「お茶を淹れます!紅茶でいいですか?」
「・・・甘くなけりゃ、何でもいい。」
「はい!!」
パタパタ走っていく、その姿は喜びに満ちている。
黒鋼は、また頭を掻いた。
―――――――――――――― * ―――――――――――――
もちろんサクラとファイの『ダンスホールデビュー』が成功裡に終わったのはいうまでもない。
翌日の新聞に、小さい記事が載った。
「ダンスホールに桜舞う!金色の風に乗って舞った桜乙女の舞に一同陶然と酔いしれて・・・・・。」
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