<2222HIT記念 キリ番リクエスト小説>

     「魔術師ウィザード素描デッサン




「えーと・・・・これは『メシ』か?」
「・・・すると、これは『風呂』か・・・・。」
「何だこりゃ?・・・・・『武器の手入れ』?」
「・・・『酒』?」


言葉が通じない。
この国の名は『夜魔ノ国』という。
上空に凄まじい殺気の塊を感じた直後の次元移動。
小僧と姫と白まんじゅうとは合流できないまま、この国に落とされた俺たちは、言葉が通じない事に愕然とした。
白まんじゅうが『近く』に居ない。
しかも。
「・・・・お前・・・その『瞳』!!」
思わず指差して。
ヘライのも同様に驚いた顔で指差してきた。
『俺の瞳』を。
お互いに『紅』と『蒼』が『漆黒』に変わったのを知った。

何なんだ?この国は。

呆然とする俺たちの周りを『殺気』が取り囲んだ。
何だかわからねぇが、『向かって』くるなら『斬る』。
そう思って刀の鍔を外したら、涼しい声が降ってきた。


「お前たちは何者だ?何処からやってきた?」


周りの者から『夜叉王』と呼ばれたその者――――『王』なのか?
長い黒髪に漆黒の瞳。
だがその纏う『気』は―――――――。
「・・・・・・・・・。」
ちらりと見れば、ヘライのもその視線を険しくしている。
気付いたか。
この『王』の『気』は。
そして。
俺の袖を引っ張り、なにやら身振り手振りで伝えようとする。
顔の前で手を振ったり、口を指差したり。
(そうか。)
こいつには、『言葉が通じていない』。
おそらくこの夜叉王の言葉は、こいつには理解できていない。
だったら話は簡単だ。


「俺の名は、黒鋼。こいつはファイ。まあ見てのとおり、こいつは口がきけない。言葉の理解もいささか足りん。」


後から(言葉が通じるようになってから)えらく非難されたが。
「俺、バカじゃないもーん!!」と。
とにかく。
「此処には『魔法使い』の手で飛ばされてきた。何が何だかさっぱりわからねぇ。此処は、何処だ?」
「・・・・面白い。」
およそ答にはなっていない言葉を口に上せて、『王』は笑った。
「お前たちに『戦うチカラ』があるのがわかる。私の城に来るがいい。」
なにやら側近らしき者達の抗議を無視して、王は馬首を返した。
此処は、尾いて行くのが筋だろう。
ヘライのの腕を引っつかみ、王の後に続いた。


殺風景なほどに整えられた城内は、王が『独り』なのを如実に示している。
およそあるはずの『後宮』などもない。
女も居るには居るが、数名の侍女程度だ。
後は、男たち。
大体見ただけでその力量は測れる。


「お前たちの力量のほど、見せてもらおう。」


王の命で、幾人かが相手に立った。
残念だが―――――俺の『相手』じゃない。
数十人を叩き伏せる形になった。
ヘライのも同様で。
王は満足そうに笑い、俺たちに部屋と衣服と食事を保障してくれた。
環境としては、悪くない。
食事もまあまあ美味いし(ヘライのは『箸』に苦労していたが)酒もイケる。
寝床も寝心地としては、まずまずだ。
衣服は元からあまり頓着しないから問題はない。
ただ鎧の下に着るものだけは、袖を切った。
今まで肌に直接鎧をつけていたから、違和感がありすぎる。
だが鎧の仕組み上、衣服を着ていないといけない、というので、それならば、と袖だけ切る事になった。
剣を振るうのに、袖は邪魔物以外の何物でもない。
ヘライのは『弓』を武器に選んだ。意外なほど上手い。
俺たちはあっという間に王の傍に侍するのを許されるまでになった。


問題は。
ヘライのと言葉が通じないという事。


身振り手振りにも限界がある。第一そんな面倒なことを延々と続けるのは、俺の性にあわねぇ。
困った(らしい)魔術師は、部屋にあった紙に何やら書き付けた。
「・・・あ?」
そこに書いて――――――いや、『描いて』あったのは。


「・・・『どこか』で見たな・・・この『絵』。」


城のような所に『黒い犬』と『黒い猫』。
離れた所に『首にめがねをつるした犬』と『白い猫』と『白まんじゅう(これはすぐにわかる)』。
俺が理解したと思ったのか。
ヘライのは次々と描き始めた。
『黒猫が腹をすかせている』
『黒犬が酒を飲んでいる』
『黒犬と黒猫が戦場で戦っている』
『黒猫が眠っている』
『黒犬が風呂に入っている』
『黒犬が刀の手入れをしている』・・・・・。


「テメェ、いいかげんにしやがれ。」


怒っては見せたが。
自分でも『怒っていない』口調だと思う。
おそらくヘライのも、それを感じただろう。
へにゃりと笑っている。
『言葉』が通じないのなら。
『目で見えるもの』―――――『絵』が伝達手段になるしかない。



自分でも、思う。


「よく半年も、あんな『絵』の攻撃に耐えられたもんだ。」


自分で自分を褒めたってバチはあたらねぇ。


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「2222HIT」をゲットしてくださった玲様に捧げるショートショートです。

ごめん、玲ちゃん。(笑)
最初とエライ違うものになってしまった。(爆)
もっとシリアスなもののはずだったのに。
でもあのままで書いてたら、『外伝』並みの長さになるのよ。
これはあくまでも『ショートショート』だから・・・。(言い訳)
だからタイトルも変えた。
そのうち書くからとりあえず今回は許して。(懇願)

玲様、ありがとうございました!(一応言っとこう)

           作者・シュウ   2006.05.13UP

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