<26262HIT記念 キリ番リクエスト小説>

  「 超 新 星supernova の 独 唱 曲aria 」




「また『賞品』なのか。」


黒鋼がぼやくのも無理はない。
一体何度『羽』が賞品になった世界に来たことか。
「まあそれだけ強いチカラを持ってるって事だね。」
「『賞品』になるに相応しいほどのチカラ・・・・って事ですか?」
「そういう事〜〜。」
事実、サクラの『羽』は強いチカラを持つ。
時にそれはその世界をも変えるほどの。


そして今回は。
「音楽祭、か・・・・・。」
その優勝賞品が、『羽』。
ただのコンクールではなく。
「まぁ色んなパフォーマンスも有りらしいねぇ。」
そこは、『祭り』であるのだから。
どれほどのインパクト――――――『感動』という方向で――――――を与えるかがポイントだ。
「小狼君のギターとサクラちゃんの歌っていう取り合わせでいいんじゃないー?」
「モコナも賛成ー!!」
「・・・えぇ――――――?!」
素っ頓狂な声は小狼とサクラの両方の口から飛び出した。
「だってー、黒様は論外でしょうー?」
「放っとけ!!」
「モコナも歌う〜!七色の声で〜!!」
「・・・いや、声真似やっても解んないと思うから・・・・。」
後ろで飛び跳ねるとか?とファイに言われてモコナは至極ご機嫌斜めになった。
「モコナ、気に入らな――――――い!!」
「そう言うな。実際声色で勝負するものでもなかろう。」
ブンむくれのモコナは、しかし聞いていない。
「まぁ選曲次第ではどうにかなるだろうが。」
ピラ、と。
示された『紙』には。


「『演目リスト』――――――――?」


早い話が、歌ってよい曲が限られているという事。
確かに種々雑多な曲が集まれば、審査もやりにくいだろう。
そして、参加できるのも、2人組まで、と決められていた。
「俺はぜぇってぇぇにやらねぇぞ。」
最初から予防線を張ったのを見て、苦笑して。
「小狼とサクラ姫、ファイとソエルで良いのではないのか?」
「リアンは歌わないのー?」
「今回は遠慮しておこう。」
「・・・・・もしかして・・・音痴・・・・?」
「失敬な。」
モコナがなんだか『四角くなった』ような気がするのは、気のせいだろうか。
「・・・ほほは、ふはくはへへはい・・・・・。」
「・・モコちゃん?」
(もしかして・・・・・『モコナ、上手くしゃべれない。』って言ってるんじゃあ・・・・?)
『四角くなった』のは気のせいではないのだと。
ちょっと背筋を冷たいものが滑っていった気がしたが。
とりあえず自分に降りかかる前に、と演目リストを覗き込んだ。
10曲程度のタイトルが書いてある。
面白いのは、曲のタイトルの先頭にある飾りに触れると、その曲が聞こえてくる仕掛けになっている事だった。
(――――――――あ・・これ・・・・・。)
『何か』が、心に引っ掛かった。
「・・・・・『これ』に・・・しようかな・・・・・・。」
「んー?どれー?」
ファイが覗き込んで。
「・・・・・『Supernova』・・・・・?」
「『超新星』という意味だな。」
「『超新星』?」
「『星』がその一生を終えるとき、莫大なエネルギーを放出して爆発、増光する。それが『超新星』だ。」
小狼はそのタイトルをじっと見つめた。


「supernova」。
それは――――――――最期の光。



―――――――――――――― * ―――――――――――――


音楽祭の朝。
小狼は、実はほんの少し後悔していた。
自分が『曲』を選んでしまった事を。
(どうして姫に選んでもらわなかったんだろう?)
それは『必然』なのかもしれないが、しかし。


「『星』の終焉・・・・。」


まるで人生の最期に、華々しく花火を咲かせましょう!!みたいな。
サクラには、これからも『未来』があるのに。
どうしてこんな曲を、自分は選んでしまったのだろう。
落ち込みまくる小狼を、サクラは不思議そうに、そして心配そうに見つめるのみ。


「・・・・・小狼君・・・・・・。」


声は、風にさらわれて、届かない。
ステージの方からはノリノリの曲が聞こえてくる。
おそらくは賑やかなサンバ調の曲を選んだファイとモコナのペアだろう。
会場と一体になったかのように盛り上がっているようだ。
それに引きかえ、自分たちは。
曲の歌詞自体、それほど明るいわけではない――――――――。


「出番ですよー、どうぞ!!」


スタッフが呼びに来た。
ビクン!と肩を震わせて。
立ち上がりはしたものの、その表情は固く。
動きもぎこちない。
「リラックスですよ〜〜!」
スタッフは緊張しているが故、と見たのだろう。
殊更に明るい声をかけてくる。
(・・・・違うんだ・・・・。)
心の中の、それは呟き。


************************************************


ざわめきが静かに広がり始めた。
「小狼君・・・・。」
サクラも困ったように見る。
ステージに上がった二人だったが、小狼がギターの伴奏を始めなければ歌は始まらない。
しかし。
小狼の指は、石のように固まっていた。
(・・・・動かない・・・・・。)
決して緊張の故ではない。
自分の重い心がそうさせているのだ。
それが判っているだけに、どうすることも出来ない。
(俺は・・・姫の『羽』を・・・・・・。)
手に入れなければならないのに。
自分に出来る事をしなければならないのに。
前に――――――――踏み出せない。


静かに照明が落ちていく。
「――――――――え?」
サクラも小狼も、客席のファイもモコナも黒鋼も、一様に驚いて天井を見上げる。
やがて漆黒となった天井に、星空が浮かび上がった。
「?!」
もちろん本物の星空ではないが。
「プラネタリウムみたいー!!」
モコナが感嘆の声を上げる。
観客席の皆も、星空に魅入られたかのように見つめている。
そこへ。
『声』が静かに流れてきた。


『星』は悠久の時の流れの中に命を燃やし、やがて最期の時を迎える・・・・。


(この声・・・・?!)
それは、今は共に旅をすることになった人の。


そしてその『最期の時』を彩る為に、持てる力の全てを解き放つ。
そのチカラは、遙か彼方の星々にも届く・・・・。


そうだ。
これは――――――――『最期』の。


彼らは主張する。
「我、ここに在り」、と。
そして願う。
「我が最期の命の煌きをこそ見よ」、と。


それは星の――――――――。
(『意思』・・・・・?)
それは、ネガイ。


されど、それは『終わり』ではない。
爆発で飛び散った星の『命』――――――『塵』を核として、再び収束していく。
新たな『星』の創造が――――――――始まる。


(始まる・・・・?『星』の『命』が・・・・?!)
小狼は『超新星』について詳しく知っているわけではない。
爆発したら。
(それで終わりだと思ってた・・・・・。)
しかし、実際は。


『始まり』は『終わり』。
『終わり』は『始まり』。
連綿と続く命の連鎖は途切れることなく時の大河を流れ行く。
星も、
そして、人も。


(そうだ。)
忘れちゃいけない、大切な事。
自分がやらなければならない事。
自分は。
(迷ってなんかいられない。)
前に、向いて進まなければ。
「姫、すみません。」
「ううん、大丈夫?」
「はい。」
小狼はギターを抱えなおした。


人よ、前を向け。
そして歩め。
メビウスの輪のごとく、時は『還る』。
かつての自分に会う為に。
そして、知るだろう。
かつての自分が故に、今の自分が在る事を。


パアッ!と。
一条のスポットライトがサクラを照らし出した。
すう、と息を吸い込む。
小狼はギターの弦を押さえた。
(大丈夫、ちゃんと動く。)
あの石のような強張りはもう無い。
指は、静かに弦を滑った――――――――。


君を忘れた後で 思い出すんだ 君との歴史を持っていた事
君を失くした後で 見つけ出すんだ 君との出会いがあった事

誰の存在だって 世界では取るに足らないけど
誰かの世界は それがあって 造られる


僕らの時計は 止まらないで 動くんだ――――――――。



―――――――――――――― * ―――――――――――――


「あのナレーションは『効いた』ねぇ〜〜・・・・。」


実際、歌が終わった途端に起こったスタンディングオベーションは、会場を揺るがすほどだった。
ステージ上の2人が真っ赤になってカチコチに固まったのはいうまでもない。
参加は2人まで、という規則に反しているのでは、という審判団の見解は会場の凄まじいブーイングにかき消された。
もちろん問答無用で優勝は2人に決まったのだが。
しかし自分たちの力で『羽』を獲得したのではない、という想いがふつふつと沸き起こる。


「そんな発想、一番嫌われるよ?」


ファイの言葉は真実だろう。
それというのも、リアンは宿には『居ない』。
『出かける』と言ったきりなのだという。
(・・・本当は。)
居てほしかった。
そうしたら、すぐに『礼』が言えただろう。
こんなにも心ざわめかせる事もなく。
しかし、『あの人』は――――――――居ない。


「一体全体、何処に行きやがったんだ?」


黒鋼が眉間の皺を深くして呟く。
――――――――コンクールから既に三日経過しているというのに。
「・・って、黒様怒ってるから、ちゃんと弁解してねー?」
ニコニコとした声でドアの方に声をかける。
「・・・・・・リア・・・・・。」
「リアン――――――――っ!おっかえり―――――――っ!!」
かけようとした言葉は、モコナの大声にかき消された。
「てめぇ、どこをほっつき歩いていやがった?!」
「・・・・ちょっと、他所の国、を。」
それは、違う次元に行っていたと。
静かに歩みより。
小狼とサクラの前で、その手を開いた。
「・・・・・・・・・??」
掌の上には、小さな小瓶が、2つ。
「?」
「・・・砂・・・・?」
中に入っているのは――――――――。
「あ〜!!これ、『星砂』だ―!!」
モコナの声に、思わず瓶の中身を注視する。
よくよく見れば、砂の一粒一粒が、星の煌きのような形をしていた。
侵食などによって、こういう形になるのだろう。
いわば、自然が作り上げた『芸術作品』。
サクラと小狼は、感心したように透かしたり振ってみたりした。


「少し、休む。」
「お疲れー。明日の朝には、どう?」
「それまでには回復させる。」
「了解ですー。」
ファイがひらひらと手を振り。
お休みー、と見送った。
「てなわけで、明日の朝に『移動』だよ〜〜。」
「わかりました。」
移動に備えて今日はもう寝よう、という事になって皆はそれぞれに部屋に引き取った。


しん、と寝静まった夜の空に、この国の月が優しい光を投げかける。
それをじっと見つめて。
ゆっくりと思考を巡らせる。
(いつの日か、きっと。)
小狼は、1つ、心に決めた。


「あなたの為だけに、あの歌を歌います――――――――。」


終焉を謳いながら、明日への希望を示す、あの歌を。



                   キリリク目次に戻ります




「26262HIT」をゲットしてくださった熊様に捧げるショートショートです。

リク内容は、『音楽祭』『supernova』の使用、でした。
サクラと小狼、というのはリク内容にあったかな・・・・?^^;
お嬢が出張ったのは・・・・すみません。(平謝り)

曲を聴いたのは少し以前のこと。
本来ならもう一度聞き直すのですが、今回はわざと聞きませんでした。
歌詞の、字面だけをじっと見つめて、浮かんだイメージを込めたつもりです。
『明日への希望』を謳っている、という事に関しては。
バンプオブチキンの方々もおっしゃっている事のようですので、間違いではないはずです。

実際、超新星の後はブラックホールか、『星のゆりかご』になるかのどちらかのようです。
折りしも天文衛星「すざく」が、M82星雲で星の誕生を捉えたというニュースがありました。
輪廻転生、生命連鎖。
これもまた、不変の真理です。

あと、この話には裏話が。こちらからどうぞ〜〜。

熊様、ありがとうございました!

           作者・シュウ   2006.12.09UP

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