何故、『さくら』と名づけたのですか?
幼き少年の問いに、眼鏡の奥で優しい光が揺れた。
「『桜』、という花があるのです。貴方の名にある『桃』に似ているのですけどね。」
この国には無い、花の名。
それをこの父は知っていて。
「とても気高く、誇り高く、美しく・・・そして儚さと激しさを持った花なのです。」
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皆の愛を一身に受けて。
それこそ花のようにくるくると。
天真爛漫に、それでいて皆の顔に笑顔をもたらす姫。
己が妹ながら、その事が誇らしく。
誰にも渡さない。
誰にも手出しはさせない。
ただ一心に、己が護ると。
そう決めていたのに。
「あの少年・・・・小狼君は、サクラ姫の運命の人だよ。」
幼い時から共に在り、兄弟同然に過ごしてきた、雪兎。
魔力を持ち、先を見る力をもち、神官としての修行に励む彼が呟いた言葉。
雪兎の力を、その言葉を疑うわけではない。
だが。
『運命の人』?
さくらが・・・誰かに『取られて』しまう。
目の前の、この少年に?
こいつから感じる違和感が何であるかも解らないのに。
さくらを渡さなければならないのか?
「・・・・違うよ、桃矢。」
雪兎は言った。
「『取る』とか『取られる』とかの問題じゃないんだ。・・・・『護らなければならない』ことに変わりはない。」
「どういうことだ?」
「『運命の人』ではあるけれど。」
雪兎の目が帯びた光を、俺は忘れない。
「『結ばれる』とは限らないんだ・・・・・・・。」
それは、あの小僧が。
さくらの伴侶にあらざると?
運命に関わる存在ではあるが、しかし。
「取るべき道は、ただ1つ。」
誓おう。
全てに。
過去から未来に流れ行く『時間』に。
己の信念の命ずるままに。
俺は、護る。
ただ一人の、大切な妹を。
光と闇の性を持つ花の名をその身に受けた、我が愛する妹を。
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