<36663HIT記念 キリ番リクエスト小説>

 「 Desert  of  grief 」


少年が一人、佇んでいた。
茫漠と広がる砂漠に、独り。
血だらけの手に剣を握り。
もう1つの手には『羽』を掴んで。
流れる血が剣を、そして『羽』を染めていく。
だが、痛みなど感じてもいない。
何故そこに居るのか。
何の為に此処に居るのか。
解らない。
――――――――いや、『認識していない』。
感情という感情の全ては取り払われ、ただ目的にのみ向かって動く。
彼は、もはや『心』を持たない、機械仕掛けの人形に成り果てた。
キオクも、また。
かつて『師』と仰いだ黒き疾風かぜの事も。
優しく包み込み、心を解してくれた白き魔術師ウィザードの事も。
旅を続けさせてくれた、お茶目な白き存在の事も。
――――――――誰よりも大切なはずだった、護りたいと願ったはずの砂漠の姫の事も。


みんな。
意識の表層から取り払われてしまった。



長い間 ここは居心地が良くて


何処からか聞こえる『歌』。
しかし、『聞こえていない』。
表層意識はそれを『歌』だとは認識しない。
ただ、風が鳴っているのだと。


いつの間にか いろいろと拾い過ぎた
どれもが 温かくて 失い難い いくつかの光


失くしたモノ。
何を失くした?
認識されない思考はただ空虚な空に散る。


もう気付いただろう 僕に君のドアは見えない
同じドアをくぐれたら――――と願っていたよ


気付きたくなかった。
同じドアを、くぐりたかった。
そう、いつまでも。


さぁ時は来た 繋いだ手を離すんだよ
カラになった手で それぞれの鍵を受け取ろう


来て欲しくなかった。
手を離したくなかった。
鍵なんて――――――――要らないのに。


恐らくもう戻れない いつか忘れる 君と居た場所


そう――――――――戻れない。
自分は何をした?
決して拭い去る事の出来ない罪を、今。
時は・・・・既に。


振り返らないで 悔やまないで 怖がらないで どうか 元気で
僕は唄うよ 歩きながら いつまで君に届くかな


もし別れの言葉を言う資格があるのなら。
告げたい。
どうか元気で。
どうか幸せに。
君への想いを歌に乗せながら。
――――――――たとえ、もう届かないのだとしても。


その涙と引き換えに
その記憶と引き換えに
この歌と引き換えにして 僕らは 行ける


人は何かを捨てなければ。
何かを引き換えにしなければ。
前に進めないのだと。
こんな事で思い知らされるなんて。
出来るなら。
もっと早くに知りたかった。
いや、知りたくなかった。
こんな決定的な事を味あわなければならないのなら。


もう 気付いただろう 目の前のドアの鍵を
受け取れるのは 手の中がカラの時だけ


空っぽになってしまったら。
前に進んでも。
『意味』は存在するのだろうか?


失くしたくない。


失くしたくなかった。


――――――――何もかも。


ただ一人だけ


『そう、俺は・・・・・独り・・・・・。』


既に認識などされうる域ではないほどの奥深く。
小さな、小さな、光が。
消えるような声で。
哀しみに満ちた、声で。
そっと呟く。
――――――――表層意識には、決して届かないであろう、言葉を。


『・・・・帰りたい・・・・・・・。』


あの、安らいだ場所へ。
あの、懐かしい人達の所へ。


――――――――帰りたい・・・・・・・・・。



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「36663HIT」をゲットしてくださった熊様に捧げるショートショートです。

当初の仮題であった『砂漠の歌』の方が合っている気がしないわけでもないんですが・・・・。^^;
原作ベースです。
これはリクとほぼ同時に熊様よりカットをいただき、挿絵にする許可を貰ったものです。
イメージとしては、これも固定背景に入れたかったんですが、タグがどうにも打てなくて・・・・。
スタイルシートをもっと勉強せねば。

小狼の中に、『新たに生まれたもの』はきっと有ると信じています。
しかしそれが表面に出てくる、つまり小狼が『自分』を取り戻す事が出来るのは、もっと先の事にも思えます。
何か決定的な事が無い限り。

皆が幸せになれる道。
それが何処にあるのか?
原作の動向に胃が痛くなる日々です・・・・。

熊様、ありがとうございました!

           作者・シュウ   2007.02.25UP

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