その口から。
語られるのは、夢の続き。
異国のお姫様。
白い馬に乗った騎士。
素晴らしい力を持った神の使い。
炎を吐く魔物。
自分が文字を辿っても、彼らは姿を見せてはくれない。
それは、お父様の。
唇が紡ぎ出す魔法。
「そして皆は幸せに暮らしました・・・・・・。これでこのお話はおしまいです。」
夢が消えるとき。
一番悲しくなるとき。
そんな私を見て、お父様は優しく頭を撫でてくださる。
口元に微笑み浮かべて。
その笑顔は――――――――とても、温かい。
「明日もまた会えますよ。さくら姫がいい子にしていたらね。」
いい子にしていたら?
本当に?
「もちろんですよ。皆、待っていてくれるんです。」
――――――――皆?
待っていてくれる?
「えぇ。だから、今日はもう寝みましょうね。明日、『また出会う』ために。」
静かに閉じた瞼の中で。
時がこっそり流れていく。
睡魔が誘う岸辺に、そっとたどり着き。
やがて規則正しい寝息が刻まれて。
父王はそっと枕辺を離れた。
―――――――――――――― * ―――――――――――――
「さくらは寝たのですか。」
「えぇ。貴方はまだ寝まないのですか?」
成長著しい我が子に、その目を細める。
「まだまだしなければならない事があって。」
幼いながらもしっかりとその足は大地に立つ。
「貴方ならきっと立派に国を護ってくれるでしょう。・・・でも、無理はいけませんよ。」
その声、その心。
王として。
父として。
見守るその瞳の光は、何処までも優しい。
しかしその『優しさ』に隠れるように。
微かに垣間見える、『疲れ』と『哀しみ』。
「何が『哀しい』のですか?」
「・・・・・哀しくなんか、ないですよ。」
それを『嘘』と。
見破れるようになった事は喜ぶべきなのか。
少年の目に、父の苦悩は如何様に映るのか。
「私にも、分けてください。そうすれば、きっと楽になります。」
「・・・貴方に支えうる力が宿ったなら、その時はお願いしましょう。」
少年は知らない。
――――――――『その時』は、訪れる事はなかったのだという事を。
―――――――――――――― * ―――――――――――――
出逢うべきだった人に逢えない・・・・。
手を伸ばしても触れられない・・・・。
その目に映るのに『届かない』・・・・。
遠く隔たった人に、逢いたいと渇望しても。
――――――――逢えない。
「やらなければならない事があるから。」
そう、自分の、『全て』をかけて。
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