<38383HIT記念 キリ番リクエスト小説>

    「 こ の 人 と 共 に 」




「相変わらず、ここは寒いね。」


降りしきる雪。
しんしんと、それは降り積もって。


「でも、温かい。」


それは、そこに住まう人の、『心』。



――――――――――― * ――――――――――


「あの時は、本当に世話になった。」


暖炉で薪がバチッとぜる。
いかめしさすら感じさせるその風貌とは裏腹に、その心は熱く、優しい。
「失礼が多々ありましたことを、改めてお詫びします。」
そう言って頭を下げた小狼に、彼―――――――グロサムは慌てたように手を振った。
「何を言う。助けてもらったのは私達の方だ。」
「でも、あれは私の『羽』がそもそもの原因でした。」
「その『羽』のお蔭で、300年前の災厄から子供たちは救われた。」
金の髪の姫の伝説と共に。
「気に病むことなど無い。我々は2度までも救われたのだ。礼を言うのは我々でなくてはならん。」
深々と頭を下げるグロサムに、二人はわたわたと慌てた。
「そ・・・そんな・・・!どうか顔を上げてください!!」
「・・・そ・・・そうです!!俺たち、本当に失礼な事ばかりして・・・・!」


旅もまだ初めの頃。
互いの信頼関係がようやく構築され始めたばかりの頃。
自警団とトラブルを起こしたり。
グロサムの館に忍び込んだり。
サクラの『強運』を使って軍資金を手に入れたり。
明日をも知れぬ旅の空、『生きる』ことに必死であったと言い訳はできようが。


「『終わり良ければすべて良し』と言うではないか。互いのこと、水に流せばそれでいい。」


その心の広さに救われる。
使用人が居るのかすらわからない館で、グロサムは慣れた手つきで茶を淹れた。
「この茶はとても体が温まる。」
「いただきます。」
飲めばどことなくハーブのような香りがした。
ほう、と溜息をつく。
緊張していた身体が、心が弛緩していくようで。


「時に、君たちはもう結婚したのかね?」


少しいたずらっぽい目つきで尋ねられたその言葉に、小狼は危うくお茶を吹き出しかけた。
「・・は・・・・はい・・・?!・・・・あ・・いえ・・・まだ・・・!」
「何だ、まだだったのか。」
この世界の時間は流れるのが早いらしい。
すでに老境に入ったグロサムには、小狼たちは孫のように思えるのだろう。
「いかんな、早く何とかしたまえ。」
「あ・・・はぁ・・・・・。」
『何とかしたい』のは山々なのだが・・・・。
最大の難関がドン!と控えているので。
――――――――『それ』を突破しないことには、どうにも。
「と・・・とにかくがんばります!お邪魔しました!!」
何をがんばるのだ、と自分にツッコミを入れながら、2人は立ち上がった。
「もう行くのか。」
「はい、申し訳ありません。」
館の外まで見送りに出たグロサムは、両の腕に2人を抱きしめた。
「グロサムさん・・・・?」
「どうか幸せであれ。我らが恩人よ。」
ぽんぽん、と。
背中を叩いてくれる。
その優しさ、温かさに、心和ませて。
2人は館を後にした。
「あ、そうだ――――――――――。」
思い出したかのようにグロサムが告げた言葉に、2人そろって茹蛸のようになりながら。



――――――――――― * ――――――――――


「これと・・・こっちとが同一だから・・・・あれ?それだと意味違うか・・・?」
1人ぶつぶつと呟きながら。
あっちの山、こっちの山をひっくり返す。
「どう?小狼君、進んでる?」
お茶を持って入ってきた雪兎神官は、部屋の惨状に苦笑いを零した。
「小狼く〜〜ん?」
「・・・?あ、はい、ここです。」
うずたかく積まれた資料の波を泳ぐようにして小狼が『現れた』。
(本当に、『現れた』と言う表現が正しいのだ。)
「どんな感じ?」
はい、とお茶を手渡して、資料軍団を見遣る。
「少し目処が立ってきたかな、という手ごたえはあるんですが・・・・。」


小狼は、古文書の解析をやっている。
玖楼国はそれほどれ歴史が古いわけではない。
だが、建国以前にあったらしき文明の痕跡は所々に残っている。
『あの』砂漠の遺跡もその1つだ。
遺跡の調査は終了し、資料の分析に入っている。
小狼は王宮の一室を与えられ、そこでひたすら古文書と格闘しているのだった。
過去の歴史を紐解き、理解する事は、『今』を生きる者達にとってどれほどの意味を持つのか。
人によっては不要な者もあろう。
しかし施政者ともなればそうはいかない。
古文書の解析は、いわば勅命だった。
――――――――――しかも。


「古文書の解析が完了するまで、さくらとの結婚は断じて許さん。」


というおまけまでつけられた日には。
気の毒な、とも思うが、しかしこれは桃矢王にとってもさくらにとっても、そして小狼にとっても重要な事だった。
過去の歴史は、いわば『第1級の機密事項』ともなり得る。
そして、『それを知る』事を許されたということは。
(サクラ姫の伴侶として認めているということ。)
だから雪兎神官はそれ以上言葉を添えて、とりなそうとはしなかった。
(桃矢は、小狼君を『認めている』のだから。)
不本意の極みであろう事は容易に想像されるのではあるが。
笑いながら、窓辺の植木鉢に目を移した。
小狼が異国から持ち帰って挿し木をしたものだ。
寒い所の木だというので、日中は日陰に置いている。
夜には外に出しているようだ。
とがった葉を持つその木は、こじんまりとして可愛いのだが。
地植えにするととても大きくなるという。
残念だが砂漠を地盤とするこの玖楼国ではそれはできまい。
大きくなったら?
「・・・本当は、とてもいい事があるんですけど・・・・。」
そういって俯き加減になった小狼の顔が真っ赤だったのは何故だろう。
「姫の公務ももう終わります。手伝いに来てくださいますね。」
「いや・・・さくらが来ても・・・・あまり・・・。」
役には立たないのと、その辺りを崩される危険性の方がもっと怖い。
だがそこは言葉を濁して。
「ごちそうさまでした。作業に戻ります。」
「がんばってください。」
「はい。」
再び資料の山の中に消えていく。



――――――――――― * ――――――――――


願い続ければ。
(いつかきっと、ネガイは叶う。)
自分が努力すれば、きっと。
(さくらと、共に。)
全てを分かち合い、共有するようになれるだろう。
(その為にも、『条件』は整えないと。)
古文書の解析終了という、大きな大きな条件ではあるが。
(きっと。)
ユメは。
叶えてみせる――――――――――。


あの雪の降る、かの国で。
教えられたとおりにしたのだから。





町外れに、大きなもみの木がある。
聖人の誕生日も近い。
本当はその日にするのだが、そこは旅人ゆえ許してもらえるだろう。


そのもみの木の下で。
口付けを交わした恋人たちは、必ず結ばれ、幸せになれるのだそうだ――――――――――。




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「38383HIT」をゲットしてくださったルル様に捧げるショートショートです。

リク内容は、「『時の翼』で、結婚したサクラと小狼の2人の風景」・・・・・・あれ??^^;
実はクリスマス企画で没になったものなんです。(自爆)
密かにヨイショしております、グロサムさん。
だから壁紙などの素材もクリスマス仕様(げふげふ)
季節感ナッシングなのは今に始まったことではないと。(逃亡)


『ツバサのチカラ』も『次元移動魔法』も使いこなせるようになったサクラは、旅に出ることを願います。
今まで世話になった人たちにお礼を言いに行きたい、と。
しかし、この時点で桃矢王、結婚はしていますがまだ子供が居ません。
故に王位継承権第1位はサクラなのですね〜。
でもその趣旨は理解する、という事で、1回につき1国、逗留も短く、という条件で許可が出ます。
国事行事に引っかからないという条件で、もちろん小狼が護衛を兼ねて同行しています。
その度に古文書解析が遅れておりますが、そこは桃矢王の深謀遠慮が(笑)。
阪神共和国から始まってジェイド国に来たところです。
小狼、実は樅の木を無断で切り取ってきました。(大汗)
果たして育つのかどうかはわかりませんが(さらに大汗)
大丈夫でしょう・・・・たぶんきっと・・・・。(いいのか)


ルル様、ありがとうございました!(返品絶賛受付中!!)

           作者・シュウ   2007.04.04UP

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