<50000HIT記念 キリ番リクエスト小説>

  「 砂 漠 に 咲 い た 花 」




素焼きの壺に、水を張る。
それを屋外に置いておく。
砂漠の夜は殊の外冷える。
こうすれば――――――――――。



――――――――――― * ――――――――――


「小狼!またお話して?!」
サクラは小狼に会うたび、異国の話をせがむ。
猛獣に追いかけられるのも。
密林の中で遺跡に出会うのも。
何もかもが心躍る、魅惑の連続。
小狼も、今まで体験したことを誰かに話すのは嬉しいのだろう。
思いつく限りの話をする。
そしてそれは無限の泉からあふれ出るがごとく。
いつまでたっても話の種は尽きないのだった。


その中に。


雪と氷の国の話があった。
「とても寒いんです。1年中、雪が降っていて。」
「『雪』?『雪』って・・・・何???」
そこで小狼は固まった。


『雪』を?
知らない??


驚いた表情のままの小狼に、藤隆が助け舟を出した。
「砂漠の国である玖楼国では、雪が降ることはとても稀なのですよ。」
ハイ、とお茶を渡しながら言葉を添える。
「10年近く前に降ったのが最後だ、と聞きましたね。」
「・・・・・・・。」
そんなに前なら。
もとよりサクラが知るはずも無い。
「サクラ姫、『雪』というのは、氷の結晶なのです。」
「氷?」
「見たことはありませんか?冷たくて透明な。」
「・・・・・・・あぁ!!」
サクラはポン!!と手を打った。
「料理長が作ってくれたかき氷!!果物の蜜がかけてあったの!!」
「そう!それです。その氷の粒が、ひらひらと空から落ちてくるのですよ。」
「・・・すごい・・・・・!!」
夢見るようなサクラの瞳に、小狼は苦笑した。
「『雪』・・・・見てみたい・・・・・・・。」
それは叶わぬ夢なのだが。
「でも、ちょっとだけなら。」
できるかもしれない――――――――――。

*****************************************

あちこちに頼んで回って、素焼きの壺を集めてきた。
それに水を張る。
砂漠の夜の冷気は、壺にしみこんだ水の蒸散と共に水温を下げる。
そうすれば――――――――――。


「・・・できた・・・・!!」
一つ一つ、丁寧に取り出す。
サクラには、とにかく早く来てくれ、とだけ伝えた。
丁寧に削って。
ひたすら待った――――――――――。


「小狼!!ごめんなさい!!寝坊しちゃって!!」


窓の外に響いた声。
準備した壺の中身を見る。
(まだ、大丈夫!!)
「サクラ、窓の外で待ってて!!」
「え?」
何故なのか、という問いには答えず、小狼は2階の窓を開き。
手にした本でパタパタと風を起こし。
壺の中身を風に乗せた――――――――――。


「わぁ・・・・・・・・・・・っ!!」


感極まったような、サクラの声。
太陽の日差しを浴びて、それはほとんどサクラには届かずに消えていく。
しかしいくつかは届き――――――――――。


「・・冷た――――――――――い!!」


嬉しそうな悲鳴。
風に乗った氷の粒は、キラキラ光りながら降り注ぐ。
一生懸命作った『氷』。
それを削って作った『雪』。
本物の『雪』には程遠いかもしれないが。


それでも。


「小狼・・・・・ありがとう!!」

*****************************************

砂漠の国に、花が咲いた。


煌く光に満ちた、『氷の花』が。


嬉しさに心躍らせる、『花のようなエガオ』が。


それはまだ、砂漠の国が安らいだ時間ときを刻んでいた頃の、遠い遠いユメの思い出。


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「50000HIT」をゲットしてくださった藤原乃藻様に捧げるショートショートです。

・・・・こーんなほのぼのは、もはや見られないのですね・・・・。(泣)
玖楼国の2人の幸せな姿が書きたくて。
もう反動としか言いようがありませんな・・・。^^;

この時点でサクラが10歳になるかならぬかといったところ。
『時の翼』での設定ですが、桃矢王は玖楼国に降った雪を見ています。
そのあたりの設定を引っ張ってきたので、10年ほど前という表現があります。
それ以外は全て、原作をイメージしたオリジナルです。

素焼きの容器に水を入れて氷を作る、というのは結構知られていると思うのですが。
削った氷がどこまで保ったかについてはご想像にお任せします。(笑)
この日ばかりはサクラ、『いつもよりは』早起きでした。



藤原乃藻様、ありがとうございました!(・・・・・・返品可、です・・・・・・。)

           作者・シュウ   2007.04.29UP

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