<52025HIT記念 キリ番リクエスト小説>

    「 花 の 精 の さ さ や き 」




花の香りに包まれて。
髪に、胸元に。
あるいはそれをモチーフにして。
『自分の花』を大切にするこの国の人たち。


「ようこそ、『モデフレア共和国』へ!あなたの『花』はどれですか?」


―――――――――――――― * ―――――――――――――


この国には『羽』は無い。
というよりは、この国に在る『ある物』を手に入れなければ『次の国』で『羽』が手に入らない。
RPGなどではよくあるパターンだ。
幸いにして『ある物』を手に入れるのは簡単なようだ。
ただそれが日持ちがしないようなので、最後に手に入れることになった。
前の国で。
小狼が足に、ファイが肩に傷を負っていた。
少し強行軍だったこともあり、まずは静養してから、ということで意見の一致を見たのだ。
しかし宿を取るにはまだ時間が早い。
それに、まずしなければならないことがあって――――――――――。


「花には『花言葉』というのがあるんだよ。」


大通りの一角、噴水近くのベンチでファイが説明をする。
「花それぞれに言葉は違う。色によって違ったりするものもあるんだ。」
「花をとても大切にするお国柄なんですね。」
小狼は、今までこういう国には来た事が無い、といってきょろきょろと見渡した。


「・・・ここの人たちは、その花言葉から『自分の花』というものを決めているみたいだね。」


その花は、自分の護りとなるのだという。
生花せいかや造花、あるいはそれをモチーフにした飾りを必ず身につける。
「『守り袋』みたいなもんか。」
『花』を身につけることはお断りだが、それをモチーフにした飾りなら。
もちろんそれでも眉間に皺は増えてはいるのだが。
「サクラなら何の花――――――?」
モコナが問えば。
皆もうーん?と考える。
「『スノーフレーク』がいいんじゃないかな?」
花言葉は、『皆をひきつける魅力』。
「花自体も可愛らしいし、いいのではないのか?」
「んじゃ〜〜決まり〜〜!」
真っ赤になったサクラの髪に、ファイがフラワースタンドから貰ったスノーフレークを挿す。
「小狼君はー?」
えっ!!となってあわてて手を横にブンブンと振る小狼にかまわず、ファイとモコナは同じように腕を組む。
「うーん?」
「うーん?」
「カーネーション。」
「え?」
モコナがぴょん、と跳ねる。
「花言葉は『良き競争相手、純粋な愛情、貞節、若い娘』・・・・。」
ちょっと違うんじゃ?という目。
深い紺の髪が、風を受けて横に振られる。
「『あらゆる試練に耐えた誠実』。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・いいかも、ね。」
微妙な色の苦笑いを浮かべて。
小狼はカーネーションのバッジをつけた。
「モコナはー?」
「『白饅頭』っていう花言葉の花はねぇのか。」
「そんなのあるわけないのー!!」
ボカスカとパンチを繰り出す。
いい度胸だ、てめぇ、とじゃれる2人、もとい1人と1匹を尻目に。
2人の魔術師ウィザードは意見の一致を見る。
「『アイスランドポピー』で決まりだろう。」
「確か『慰め、いたわり、陽気で優しい、思いやり』だったよね。」
本来は髪留めなのだろうが、耳の根元にちょこんと、造花をつけた飾りをとめる。
「これで子供たちは完成〜!さあ次は大人の時間〜〜〜!」
じゃあまず黒様から!!と言うファイの目が、実に嬉しそうだ。
反対に黒鋼の眉間の皺はさらに深くなる。
「『苧環』、かな。」
「『オダマキ』?」
「花言葉は、『断固として勝つ』。」
最高だー!!と笑い転げる白き魔術師ウィザード
モコナは早速小間物屋らしき店にすっ飛んでいって、なにやら貰って帰ってきた。
「はいこれ!」
「何だ?」
「ループタイなの〜。」
しかし今の服装にも合いそうにない。
結局蒼氷の鞘に結びとめることになった。
「ファイさんは・・・・・。」
「今度は俺たちが考えます!!」
うんうん唸る小狼とサクラ。
モコナも小狼の頭の上で腕組みをする。
その一生懸命な姿に、思わず笑みがこぼれた。
「決めました!!『姫百合』です!!」
は?という顔の大人組に、2人は説明する。
「花言葉は、『強いから美しい』です!!」
「ファイさんにぴったりだと思います!!」
「ファイはとっても美人なのー!!」
思わず刻んだ表情が『おいおい』といっている。
それが果たして『男性』に対する賛辞であるのかどうかは別として。
一生懸命考えてくれたのだから、とファイはそれを受け入れた。


さて。


最大の難関、は。


――――――――『この人』に合う花言葉を探すのが―――――――難しい。


「オンシジュームは?『印象的な瞳』って!」
風船唐綿ふうせんとうわたはどうでしょう?『隠された能力』だそうです。」
「『物事に動じない』ってことで『葉牡丹の葉』は?」
「ファイ、それ、『花』じゃないよ?」
「あ、そうか〜。」
「ナスタチュームで『有能な人』とか?」
「こうなったら、どーん!と『極楽鳥花』!!花言葉は『万能』!!」
「いいとは思うが、『花』が合ってねぇな・・・・・・。」
ぼそ、と呟かれたツッコミに、ファイが反撃する。
「じゃあ、黒様も考えてよ!!」
「あぁ?!何で俺が!!」
黒様だけ何も考えてない!!という非難を受けて。
キレた黒鋼は、フラワースタンドから、ガシッ!と1本の花を掴み出した。


「ほら!これにしておけ!!」


「く・・・黒様・・・・。」
「黒鋼・・・それは・・・・。」
明らかにヤバい、といった顔つきのファイとモコナ。
突きつけられた当人は、少し驚いた表情だったのだが。
だが微かに笑って受け取った。
ありがとう、と。
「リアン・・・・いいの・・・?」
頭をガシガシ掻きながら歩み去った黒い背中を見送って、モコナがそっと尋ねた。
「何が?」
「・・・その花・・・・。」
「ああ、これか。」
手にしているのは――――――――――カトレアの花。
「侑子の台詞を借りるなら、『これもまた必然』なのだろうな。」
軽く笑って。
そろそろ宿を取りに行こうか、と歩みを促す。
歩き出した一行の後方で、ファイとモコナはそっと声を潜めた。
「ねぇ、ファイ・・・・・。」
「うん・・・『知らない』って怖いよね・・・・・。」
「あれの花言葉って、確か・・・・。」
「・・・・・・・『成熟した年配の人の魅力』・・・・・・・。」
いや、当たっているといえば当たっているのだが。
――――――――――永遠ともいえる時を渡ってきているのだから。
しかし。
「ストレートすぎるよね・・・・。」
『年配』という言葉は。
少なくとも女性に対してはタブーともいえるだろう。
「『品格の備わった優美さ』っていうのもあるから、そっちに解釈すれば・・・・。」
「解ってて受け取ったんだから、心が広いってことに感謝しようね・・・・。」
そうでなければ、『とんでもない事態』になっていただろうから。
ごそごそ語り合う白い大小に眉間の皺を増やしつつ。
一行は宿の中に入っていった。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


宿の主人とカウンター越しに会話をして。
ツインとトリプルの部屋を取る。
皆が花をつけているのを見て、宿の主人も嬉しそうに顔をほころばせていた。
この国の人は。
本当に花が好きで。
花と共に生きているのだ――――――――――。
「ではご案内しますね。」
ルームキーを持ち、宿の主人が先導する。
カウンターから離れかけた時。
近くの揺り椅子に座っていた老婆がふと顔を上げた。


「お前さん・・・・花が『違う』ね・・・・。」


微かな声は、時の渡り人に向かって。
すい、と花を差し出してくる。
「お前さんの花は、『これ』だね。」
黙って受け取る。


「どちらも、『私の花』だ。」


老婆の目が細められた。
それは、どこか嬉しそうに。


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夜が更けて。
小狼とファイの治療も終わった。
正確には治癒魔法をかけたのだが。
あまり得意ではない、と言っていたのを如実に示すかのように、『完全に』治せるわけではなかった。
それでも通常の治癒レベルから考えると格段の差がある。
ただ対価として、かなり身体が疲労するため、十分な休養を必要とする。
安眠できる香を焚き、心身をリラックスさせるというハーブ茶を飲み。
ファイと小狼は早々に眠った。
サクラとモコナもつられてか、ぐっすりと眠っている。
夜の街。
細い月の幽かな光の下。
時の渡り人は独り佇んでいた。
『ある物』を手に入れるための準備のために。
ふと、気配を感じた。
「まだやすんでいなかったのか。」
「それは、こっちの台詞だ。」
黒き影は、音も無く歩み寄る。
「女が独りでこんな夜更けにちょろちょろしてんじゃねぇ。」
「あぁ。もう、終わった。」
戻るよ、と。
ふわ、と歩みだした、その腕をぐい、とつかんだ。
「?」
「花・・・・違うのか・・・・・?」
老婆の言葉を耳に留めていたのか。
「何の花なんだ?」
微かに笑って。
差し出したのは――――――――――。
杜鵑草ほととぎすだ。」
「花言葉は・・・・?」
「――――――――――『秘めた意思』。」


眉間の皺が深くなった。
お前も。
あのへらいのと同じか。
心のうちに、『何か』を秘めて。
自分だけで抱え込んで、決して外には見せないのか。
俺は。
――――――ただ、見ていることしかできないのか――――――?


「でも、この花のほうが好きだな。・・・・お前が選んでくれた。」


カトレアの花にそっと唇を寄せて。
風を受けるその髪に、その後ろ姿に。
ドクン、と心臓が跳ねたのは。


だが、それが『何』であるのかに気づくには。
どちらがどちらとも。
『知らなすぎる』世界にいたことが。
不幸ともいえるのかもしれなかった。


**************************************


カトレアには。
もうひとつ、花言葉がある。
それは。


――――――――――『純粋な愛』。



                   キリリク目次に戻ります

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「52025HIT」をゲットしてくださった優蓮様に捧げるショートショートです。

国名は、『花言葉』をフランス語に翻訳した『Mot de fleur』を強引にローマ字読みしたものです。^^;
背景画像に使用したのは、モコナの『アイスランドポピー』。
あいかわらず携帯からご覧の方には申し訳ないですが・・・・。

いやいっそのこと、バラでも贈らせてやろうかと思ったりもしましたが(笑)
なんと言っても花言葉は『私はあなたを愛する』ですからね〜〜〜。( ̄m ̄* )
まあそんな感情に気づかない(=鈍感)な2人ですから、すれ違ってるというか、かみ合ってないというか・・・。
書いてて笑える人たちって結構珍しいんですが。(苦笑)

優蓮様、ありがとうございました!(あいも変わらず返品可です・・・・。)

        作者・シュウ   2007.04.29UP

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