<52625HIT記念 キリ番リクエスト小説>

    「 桜 、 さ く ら 」




「夜桜もまた乙なもんだな。」


一献傾けるのに、ここの桜は風情がある。
満開の桜。
風に乗り、散り急ぐその花びら。
それは。
魔性の美しさをも合わせ持って。


ここは。
『夢のような国』。
その名は。
――――――――――桜都国。



――――――――――― * ――――――――――


「飲み物は、少し温かい方がいいかな?」
そう言ってファイはホットチョコレートを作って持ってきた。
黒鋼の眉間に皺が増える。
だが元々酒しか飲まないつもりだから関係無いとでも思ったか。
ふい、とそっぽを向いた。
「ハイ、サクラちゃん。・・・眠くない?」
ホットチョコレートを渡しながらファイが問う。
受け取りながら、サクラはニコリと笑った。
「大丈夫です、ファイさん。」
「良かった。夜桜、きれいだもんね〜〜。見れないと損だもんね。」
「はい!とっても綺麗です!」
鬼児おに』が出るなどとは思えぬほど、美しく、穏やかな、夜。
喫茶『猫の目』の庭で。
皆は夜桜見物としゃれ込んでいた。


「何時まで居れるか解らないから、見れるうちに見ておこうよ。」


ファイの一言で決まった夜桜見物。
と言っても別にどこかに繰り出すわけでもない。
なんと言っても、店の庭先に大きな木がでん!とある。
あとは敷物と、飲み物と、何かつまむものがあれば十分。
だから鬼児おに狩りも今夜は休みにして。
のんびりと、ゆったりと。
桜の色に染まるのだった。


「こんなに散っても、まだまだ咲いているんだね〜〜。」
「一斉に咲くわけじゃねぇからな。順々に咲いていくんだろう。」
「黒様、物知り〜〜〜。」
「常識だろうが。」
ふん、と。
鼻で笑って酒を飲む。
「桜って、昼間と夜とでこんなにイメージが変わるものなんですね・・・・。」
小狼が感嘆しきりといった風に呟いた。
「『いめーじ』?」
「あ、雰囲気、ってことです。」
「まぁ、そうだな。」
こく、と飲み干す。
「桜には『桜の樹の精』が宿るという。大体が老翁――――――――爺さんの姿で表されるみたいだが。」
「それは『妖精』さんですか?」
「その『妖精』ってのが何なのか、俺には解らねぇんだが。」
サクラの問いかけが理解できず、思わず苦笑が漏れる。
「樹木の中でも一目置かれるみたいだな。位としては上の方になるんだろう。」
「へぇ・・・・・・。」
改めて見遣れば。
どこか近寄りがたい雰囲気も併せ持つような。
「優しい色の花なのに、『おじいさん』ってのがミスマッチだね〜〜〜。」
うんうん、と頷きつつ言うファイに、にや、と笑って。
「古来から、桜の根元には『死体』が埋まっているとも言うぞ。」
命を、そして闇の世界の『気』を吸い上げて、このような妖しい雰囲気を漂わせるのだ、と。
ひくっと。
顔が引きつった小狼に、『修行が足りねぇ。』と一喝し。
「サクラ、寝ちゃったよ〜〜〜?」
というモコナの言葉に、姫に聞かれなくて済んだ、とそっと胸をなでおろした。
「小僧、姫を部屋で寝かせてやれ。」
「解りました。」
小狼がサクラを運んでいくのを見送って。
ファイはにや〜〜と笑いかけた。
「?何だ?」
「いや〜〜良かったね、って思って〜。」
眉間の皺を深くした黒鋼に、ファイは畳み掛ける。
「サクラの木の下に死体、なんてサクラちゃんが聞いたら、大パニックだよ?」
「・・・うるせぇ。」
「黒鋼はいつも気遣いが足りないのー!!」
「何だと、コラァ!!」
白い魔法生物と黒い疾風かぜのどたばたはいつもの事。
そして白き魔術師ウィザードが笑い転げるのも。


穏やかな、穏やかな。
そして、どこか魔性の気配を漂わせて。


赤い月が見下ろす国、桜都国。


風に舞う桜の色に染められた、
夢の中の、つかの間の幻想。



                 キリリク目次に戻ります



「52625HIT」をゲットしてくださったたら子様に捧げるショートショートです。

ああ、桜都国・・・・・・。(泣)
この頃は本当によかった・・・・・。
今はもう戻ることが出来ない、和やかな時間ですね。
桜都国とピッフルワールドは、ほのぼのさで1、2を争う、良い国でした。
いつの日か、こんな優しい時をまた過ごせるようになってくれたら・・・と願って止みません・・・・。

4月中に書くと言いつつ、遅くなりました・・・!
たら子様、ありがとうございました!(返品OKですー・・・・。)

           作者・シュウ   2007.05.02UP

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