<52825HIT記念 キリ番リクエスト小説>

   「 ゴ ー ス ト ・ パ ニ ッ ク 」




「日本国の『幽霊』って、ホントに『足』がないんですねぇ〜〜〜・・・。」


いやそんな事に『感心』されても、と居並ぶ皆は思った。
ニコニコと。
玲瓏とも言うべき、その美しい顔から。
その形のよい唇から。
――――――――――どれほどの物語が紡ぎだされるというのか。


「遠慮は無用ぞ。とくと聞かせてくれい。」
ぱちり、と扇を閉じる音がやけに大きく響き渡る。


「氷雪の国、セレスの『怪談』を、のう。」


燭台で灯心が、ジジ、と鈍い音を立てた。



―――――――――――――― * ―――――――――――――


窓の外は、妖しげな雲が広がり。
雷鳴は遠く近く、突然の雷光を伴って人々を驚かす。
こんな天気が『大好き』な、国を統べる姉妹は。
今日も今日とて、忍軍や兵を集めて一大怪談大会を催していた。
もちろん、『逃げ』は許されない。
もし逃げたら、後々まで折に触れ、言われ続けるのだ――――――――。


「そういえば、あの時参集に応じませんでしたわね?」


すでに言われた者がいるから、誰も逃げ出せない。
そして。
行ったら行ったで、そこに待つのは。
あの世の方がきっと楽しいとさえ思えるような、怪談話のオンパレード。


行くも地獄。
逃げるも地獄。


こんな天気の日は、当番になりたがる者が殺到するのが常であった。
当番であれば、行かなくて済むのだから。
無論、そんな我侭が通るわけもなく、数多くの者は地獄の釜の中を覗く事になる。


今日も、今日とて。


何でこんなに笑顔なんだ、と誰もが思うことには。
まさに満面の笑顔の、知世姫。
傍らにくつろぐ天照も、実に嬉しそうだ。
「皆、集まったか?」
それは、始まりの合図。
一気に緊張の波が走る。
今日は。
いったいどんな話を聞かされるのか――――――――――。


************************************************


どんな話が流れても。
皆が震え上がっても。
二人の近習は変わらない。
宵の明星リアンはまったく表情を変える事無く泰然としてそこに在り。
明けの明星ファイは変わらぬ笑みをその口元に浮かべる。


恐ろしくないのか。
これほどの話を聞いても。


国が違えば、『恐ろしさ』が解らないのかもしれない。
この2人は異国の者。
皆が皆。
まさか2人とも、あまりにも『闇』に近い者であったなどとは露ほども思わず――――――――。


「そうよな。今日は異国の話も聞こうか。」


天照の気まぐれで、近習たちにお鉢が回ることになった。
どちらが?
お互いに顔を見合わせる。
「おかーさんに譲るよ。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・失礼しました、お姉さま。」
ぺろ、と舌を出して。
とっておきヨロシク、と言ったのだが。


「ファイから語るといい。私のは、洒落にならない。」


一瞬。
ファイの顔が微かに引きつった。
ここは。
『聞いて』おいた方が良さそうだ―――――――。


「じゃあ、オレから行きまーす。」


シュタ!と挙手をして。
ファイは皆に向き直った。
「日本国とセレスとではいろいろ違いがあるんで、それはその都度説明しますね〜〜。」


にこやかな、その笑顔に、どこか凍るものを感じるのは?


************************************************


「もうね〜〜、とにかく寒いんですよ〜〜。」


ファイは思い起こすように語り始める。
「あんまり寒いんで、吐く息がすぐ凍っちゃうんですよ〜〜。こんな感じで〜〜。」
口の周りに指を指す。
「鼻息とか吐く息とかで、鼻の下や口の周りに白いひげが出来ちゃうんですよ〜〜〜。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
怪談どうこうというよりも。
目の前の佳人の口元に『白いひげ』が想像できなくて。
思わず皆の思考が固まる。
へらん、と笑って。
話は続く。


「オレの知り合いの人の話なんですけど〜〜〜。」
にこにこ。
「隣のおばあさんと仲良しだったんですね〜〜。隣と言っても、歩いて10分はかかる隣ですけど〜〜。」
日本国ではお年寄りと同居が多いようですけど、と。
「まあその人、勉強とかいろいろあって、しばらくおばあさんの所に行ってなかったんですね〜〜。」
それは、よくある事だろう。
「で、久しぶりに行ったそうなんですね〜〜窓から魔法で点した明かりが見えたんです〜〜。」
首を、ちょっとかしげてみせる。
「おばあさん、いつも暖炉の前の揺り椅子に座ってたんです〜。」
暖炉とゆり椅子っていうのは、という説明も付け加えた。
「『おばあさん、久し振り!!』って勢いよくドア開けたんですよ〜〜。」
懐かしい、再会。
それはほほえましい光景のはずだ――――――――。
「ゴトン、っていう音がしたんで、何だろうと思って見渡したんですね〜〜。」
ごく、と喉が鳴った。
「見たら暖炉の火が消えてたんで、『寒いでしょう?!』と声掛けたんですね〜〜。」
それは、当たり前の反応だろう。
「『今魔法で火をつけてあげるよ!』って言った時、足元に転がってる物が見えたんですよ〜〜。」
ポウ、と。
魔法で作り出された『鬼火』が浮かび上がった。


「おばあさんの、『首』が転がってて、こっち見てたんです。」


鬼火に照らされた。
氷雪の魔術師ウィザードの顔は、どこまでも青白く、凄みをみせて。


「そしたらね、『首』がね、言ったんですよ。・・・・『おや、久しぶりだねぇ。』って。」



―――――――――――――― * ―――――――――――――


あまりにも気温が下がりすぎると、物質は全て硬質化し、些細な衝撃で破損する。
『首』は言った。
「ちょっと失敗してねぇ。落ちちゃったんだよ。悪いが乗せておくれでないかい?」
揺り椅子の上には、首のない老婆の身体。
震えながら首を捧げ持ち、膝の上に置けば。
手がゆるゆると動き、首を持って、あるべき所に据えた。
2、3回左右に首を動かす。
ふわふわと。
金の髪が、灯火の明かりを受けて煌きを零す。
両の手が、頭を支えていたが。
すう、と。
その手が下ろされた。


「うん、これでもう大丈夫♪」


ファイがにっこり笑うのと。
皆がおののくように後ずさりするのとが、刹那の時も隔てずに同時に起こった。


「あれ?」


手を頭に当てて。
左右に回転させるように動かす。


「ごめん。やっぱり、ちょっと、外れそう。」


魂消たまぎる悲鳴が天守閣に渦巻いた。



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「52825HIT」をゲットしてくださったオメガ様に捧げるショートショートです。

泣く子も黙る?ファイの怪談・・・・。
それが聞きたい(読みたい)、というのがリクでした。
ハテこれは怪談なのか・・・・(ーー;)
自分自身の限界ですね・・・・。(自沈)

しかしファイさん、満面の笑顔でホラー話を語りそうだ・・・・。


オメガ様、ありがとうございました!(・・・返品・・・・?)

           作者・シュウ   2007.05.03UP

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