<54545HIT記念 キリ番リクエスト小説>

 「 シ ャ ボ ン 玉 、 飛 ん だ 」




「何度言われても、答えは変わりません。」
「お願いです!皆大切な仲間なんです!どんな小さな、粗末な所でもかまいません!!」
「どうあっても、当旅館ではペットの同伴はお断りしております。」
「じゃあ、じゃあ!」
「じゃあ?」
「きれいに洗って、ピカピカにしますから!!出る時も、毛一本残さないように掃除しますから!!」
「・・・・・・・・・・・・。」


そろり、そろり。
抜き足差し足で後退りを始めた『2匹』の。
首根っこを、一瞬で伸びてきた2本の手がガシィッ!!と引っ掴んだ。
「まさか、逃げようなどとは思っていまいな?」
「サクラちゃんがあんなに必死になってるのに?」
2人の魔術師ウィザードの言葉は、まさに『脅し』。
『2匹』はひくリ、と引きつって硬直した。


「良かった!!OKでました!!!」


サクラの笑顔が。
『邪気のない笑顔』が。
どれほど恐ろしいのかを思い知った瞬間だった。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


町のあちこちから、上がる『湯気』。
「温泉街か。」
少し懐かしそうに黒鋼は辺りを見渡した。
「温泉?」
その質問はファイとサクラから同時に発せられた。
「知らねぇのか?」
「はい。」
「まあ地下の水が地熱か何かで温められるという話だが。」
火を噴く山の近くなどに多くある、と説明した。
山が火を噴く、などということが今ひとつ理解できないようであったが。
「あそこに『足湯』がありますよ。」
小狼が案内した所で、足湯に足を浸して、2人は満面の笑顔になった。
「わあ〜〜〜温かい!!」
「お〜〜〜これは気持ちいい〜〜〜!」
「これは源泉はもっと熱いみたいですね。適当な温度になるように水を足して調節してあるそうです。」
そばにあった看板を読んだ小狼が説明する。
もちろんいつまでも浸かっているわけにもいかないので、名残惜しそうにしながら湯治場を後にする。
そこかしこに温泉宿が建っている。
今日は宿を探すのに苦労しなくてすみそうだ、と思った。


それなのに。


町外れで肩が触れたのなんのと因縁をつけてきた相手が悪かった。
たまたま二手に分かれていた。
魔術師ウィザード2人は少し調べることがあって別行動だった。
したがって、『魔法』に耐性が無い者ばかりでグループになっていた。
相手が魔法使いだ、と解った時にはすでに遅く。
手にした水晶球の光から、とっさに黒鋼がサクラを外套マントで覆い隠し。
小狼が前に立ち塞がったのだが。
サクラが目を開けたとき、目の前は、真っ暗。
外套マントで視界を遮られているのだと知る。
そろそろと、外を窺えば。
魔法使いの姿はどこにもなかった。
「大丈夫?モコちゃん?」
「うん、大丈夫。・・・あの魔法使いから、『羽』の気配がしたよ!」
ではサクラの羽の力で魔力を増大させているのか。
きょろきょろと見渡して。
――――――――――目が、合った。


「・・・・・・・・・・・・・・・。」


考えて、考えて。
ようやく1つの結論にたどり着いた。


「もしかして・・・・・黒鋼さんと小狼君・・・・・?」


そこにいたのは。


黒い毛と紅い目をした犬。
茶色の毛と栗色の目をした少し小さな犬。


困ったような、顔をして。


サクラと犬たちは、お互いに見つめあったままだった。


************************************************


「大体のところは理解した。確かに『羽』による魔法だろう。」


合流して、たまらず泣き出したサクラをなだめて。
ようようにして聞き出した情報から推理する。
「ソエル、羽は感知できるか?」
「それが・・・・羽の波動、感じられないの・・・・。」
「やはりな。」
おそらく、魔法を遣うとき以外は封印しているのだろう、と。
となると、魔法使いそのものに接触あるいは接近する必要がある。
「じゃあ、野宿してちゃ、埒が明かないね?」
『人』が居る所に居なければ。
ちょうど、陽が沈もうとしている。
「宿を取るか。」
皆は旅館街に向かって歩き始めた。


だが。


「申し訳ありませんがお断りいたします。」


けんもほろろに断られた。
理由は、『ペット』。
人間のみならOKだが、ペット同伴はお断りなのだ。
「そんな・・・・。」
それと察して、2匹の犬は方向を変えて歩み去ろうとした――――――――――。


「だめ!!行っちゃだめ!!」


サクラは2匹の首根っこにかじりついた。
自分を庇って、『犬』にされてしまった2人を、どうして。
冷たい夜風の元に置き去りにして、自分たちだけぬくぬくと屋根の下で、温かな布団で眠ることが出来ようか。
「私が・・・私が探してきます!!」
ペット同伴で泊まれる宿を。
返事も聞かずに駆けていく。
慌ててモコナが追いかけていった。
「サクラちゃん、必死だね。」
「責任を感じて行動するのも、また必要なことだ。」
そう言いながら。
地面に小さな術式を埋め込む。
それが何かは聞かなかった。
聞いたところで。
――――――――――おそらく自分には、何もできない。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


『宿泊』は出来ないが、ペット専用の温泉は何箇所かあった。
たまたま利用していた人に聞くと、日帰りで利用しに来るのだという。
年をとって腰を傷めている、といったその犬は、飼い主の腕の中で気持ち良さそうに熟睡していた。
犬用のシャンプーも販売されている。
比較的短くて固い毛の犬用、というのを選んだ。
中は結構広く、2匹同時に洗ってやることも十分出来そうだ。


「さて・・・・・・『覚悟』はいいかな?」


袖や裾をまくり。
臨戦態勢の3人。
「まずは濡らさないと〜〜〜。」
手桶に湯を掬い、ザバリ!!とかけた。
「!!」
とたんに逃げようとする2匹。
「逃げは許さん。」
ピキッ!と。
2匹の身体が硬直した。
「よし、サクラちゃん!!今のうち!!」
「はい!!」
一気に湯を掛け。
少し濡らしながら、シャンプーで泡立てる。
簡単に洗って、さっとすすいで。
もう一度、シャンプーで、今度はしっかりと洗う。
「ぴかぴかにしないと、泊めてもらえないんですから!!」
サクラが一番鬼気迫っていたかもしれない。
一緒になって茶色の犬――――――――小狼を洗っていたファイが苦笑する。
「サクラちゃん、気合い入ってるね〜〜〜、ハイ小狼君、手。」
前足をひょい、と持って、肉球や指の間も洗う。
「ま、たまには良かろうさ。」
首元をこすりながら軽く笑う。
洗われている黒い犬――――――――黒鋼は、さっきから硬直しきっている。
「魔法はもう解除しているよ。」
苦笑しながら。
こしこし、と指で鼻の頭のラインを洗った。
「黒鋼、照れ照れ〜〜〜♪」
尻尾に泡の塊を乗せて遊んでいたモコナに、ガウ!と怒ってみせる。
「ソエルも遊ばない。・・・・ファイ。」
ぽい、と。
放物線を描いてファイに放られたモコナは、『いらっしゃいませ〜〜〜♪』と湯を掛けられた。
「うわっ!ファイ!!何するの?!」
「うん、一応モコナもキレイキレイしないとね〜〜〜♪」
「え〜〜〜モコナ、ペットじゃない〜〜〜〜!!」
叫びは、『却下。』の一言で無視されて。
キャーキャー騒ぐ声を尻目に。
サクラは必死の形相で小狼を洗っていた。
そして。
「ハイ、次は、おなか。」
自分を抱え込むように洗う、その髪に。
ためらいながら、そっと濡れた鼻を押し当てていた。
いい匂いだ、と確かに心のどこかで思いながら。


************************************************


十分に濯ぎ、湯船にぽかり、と浸かり。
本来ならドライヤーで時間がかかる所だが、それは魔法で一瞬で終わった。
「洗うのも、もしかして魔法なら一瞬?」
ファイの問いにふわ、と笑う。


「洗ってやるのも、たまにはいいだろう。」


それを耳に挟んで、ひくり、と。
耳を動かした、黒い影。
離れのような、いかにも普段は使っていない感じの部屋に通されて。
掃除をする気力もないのでそこは軽く魔法で片付ける。
源泉から引いているという内湯で汗を流し。
部屋に運ばれた食事に舌鼓をうち。
温かな布団に包まった。
黒鋼も小狼も、くるり、と丸くなる。
夜の帳は静かに下りてきて。眠りの淵に沈んでいく。
「・・・・・・・・・。」
耳が、ぴくり、と。
見れば、いつの間に出て行ったのか。
音も立てずに帰ってきた姿を捉える。
「静かに、な。」
口元に、指を立てて。
す、と布団に入った、その間近に。
くるり、と丸くなった、黒い塊。


出て行こうとしたら、今度はわかるように。
――――――――――それは、護るために。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


『羽』を持った魔法使いは、奇しくも向かいの温泉宿に泊まっていた。
言葉巧みに、郊外におびき寄せて。
来るな、といわれて、やむなく離れた所で待っていた。
黒鋼がうろうろうろうろ、檻の中の熊状態であるのに密かに笑いつつ。
ファイは確かに魔法の発動した気配を感じ取った。
おそらくは、『地獄を見た』ことだろう。
パアッ!!と光が満ち、2人は元の姿に戻った。
羽を持って戻ってきた、その人の。
隠すようにしていた左腕に流れる血に気づいたのは、黒い疾風かぜ


「独りで無理しやがって・・・・。」


傷ついた手をとり、呟くように漏れた言葉。
持っていた薬で治療し、念のため、と小狼が包帯を巻いた。
一心に巻く少年を見下ろす、その視線に気づいて。
熱いものが身体を走ったのは何だったのだろうか。
「少し余ったな。髪用に使うか?」
「使わねぇよ!!動物用の物なんざ!!」
犬用のシャンプーは、結局通りすがりの犬連れに譲って。
人里離れた所で次元移動の魔法陣を張る。
移動の際に離れないように、できるだけ近づいて。
そっと。
濃い紺の髪の傍に立った。


あの時と同じ、微かな良い匂い。


思い出したように走る、熱い『何か』。


握り締めた拳に、力を込めて。
次元移動の風に、その身を任せる。


護りたいのに、護りきれない、その姿を視線の先に捉えながら。



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「54545HIT」をゲットしてくださった、熊様に捧げるショートショートです。

ゴシゴシ番(笑)
もう温泉ネタ以外には無いでしょう!!と。
師弟コンビを洗っちゃえ!!というのがコンセプト。(どんなのだ)
犬を洗うっていう経験、1、2回ぐらいしかないんですが、ドライヤーのほうが大変だった気が。
だからそこは魔法でさっくりと・・・・。
最近はペットOKの宿って増えてきましたね。いい時代だ〜〜〜。(笑)
ホントはドライヤーでほっこりして居眠りする師弟が書きたかったり。
(書いたらかな〜〜〜〜り長くなるので・・・・・。)(^^ゞ 
黒犬枕にして寝るお嬢とか。
もちろんサクラの枕は茶色の(強制終了)
何かの機会には書いてみたいですね♪


熊様、ありがとうございました!(クレーム・返品受付中・・・・。)

           作者・シュウ   2007.05.06UP

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