「ねー、黒様ー、円舞曲って知ってるー?」
「知らねぇ。」
「円舞曲っていうのはねー、男女一人ずつでペアになってー。」
「ぺあ?」
「2人組って事ー。それで、大きいホールでねー。」
「ほーる?」
「ひろーい空間ー。」
「大広間みたいなもんか。」
「よく解んないけど、そうかなー?そこでねー、円陣を組んで踊るんだー。その時に使う『曲』の事でもあるんだけどねー。」
「何の事か、さっぱり解んねぇがな。」
「黒ぷー、夢が無いー。」
「放っとけ!少なくとも俺に解るこたぁなぁ。」
「なーにー?」
「円舞曲だか何だか知らねぇが。」
ブチッと。
確かに『キレた』音がしたような。
「俺の肩の上で踊るなって事だ!!」
桜の花びらが、ひらひらひらひら。
夜風にのって舞を舞う。
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桜都国。
桜の樹がとても多いこの国は。
いつも花吹雪が舞っている。
昼と夜とで違う顔をみせる、摩訶不思議な国。
『鬼児』と呼ばれる魔物退治を今日は休んで。
黒鋼とファイは夜の酒場にやってきた。
『白詰草』という名の、その酒場は。
『新種の鬼児』についての情報を得られる場所。
首尾よく情報は得たが、思わぬハプニングからファイが足を負傷することになってしまった。
その時に、垣間見えた『素顔』。
それ以来、黒鋼の眉間の皺は深くなったままだ。
ファイの方はご機嫌で鼻歌を歌っていたりもするのだが。
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「色々有難う〜〜お酒も見繕ってもらっちゃって〜〜。」
町の酒屋では少し入手困難と思われるような『お洒落な』酒。
酒蔵から出してきてくれた酒を何本か包んでもらって。
精算を済ませる。
「あんさんら(※『貴方達』の意)、お金持ちやねぇ〜。」
バーテンダーのカルディナが賞賛をこめて言う。
今日の酒代は持ち帰り分もあったので、かなりの額に上った。
桜の花の形をした『お財布(皆はそう呼ぶことにしていた)』は、それを差し引いても結構な残高を示していたのだ。
「そりゃ〜〜〜うちのワンココンビは優秀だもの〜〜〜。」
「その呼び方、やめろ。」
実際、黒鋼と小狼のおかげで、金には困らない。
戦闘能力の高いこの2人は、ハイレベルの鬼児を難なく退治する。
店にやってくる他の『鬼児狩り』たちは、いつも賞賛の言葉を口にする。
すごい、と。
しかし。
ファイは首を振る。
(おそらく黒たんにとっては、物足りないくらいだろうね。)
彼の故郷、『日本国』は、魔物が多く住むという。
ここの鬼児などとは比べ物にならないほどだと言っていた。
どちらかといえば、『まだまだ暴れたりない』といった所か。
一生懸命な、少年と。
少しずつ、『少女らしくなってきた』、少女と。
お茶目でムードメーカーで、しかしどこか鋭い白い魔法生物と。
そして、魂の内面に斬り込んでくる、心は優しい黒き疾風と。
この出会いが『必然』ならば。
この旅が『真実』ならば。
せめて、今のこのひと時を。
「優しく、幸せな気分に浸って、踊っていたいな。・・・・桜の花の円舞曲を。」
――――――――――誰、と?
「独りで、いいから。」
ひらひらひらひら。
桜の花が舞い落ちる。
無限の時間の中の、一刹那。
桜の色に、染まりきれない、白い、色。
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