<55355HIT記念 キリ番リクエスト小説>

    「 蒼 の 閃 光 」




「オレと黒様、どっちが強いと思う?」


唐突に問われて。
何処からそういう話が、と問い返せば。
「ん〜〜〜、ちょっと小耳に挟んだんだけどね〜〜?食堂じきどうで言い争いがあってさぁ〜〜。」
城中での食事は、たいてい大膳寮が賄いをする。
そして食べる所は食堂じきどうと呼ばれていた。
そこは貴賤の区別なく食事をすることが出来る。
公達であろうと、忍者であろうと。
そこで言い争いがあったのだという。
「忍軍と陰陽寮とでねえ。」
「どちらが強いか、と?」
「うん。」
「そんなもの決まってる。俺のほうが強い。」
「あれ?それはどうかなぁ〜〜?」
「・・・どういう意味だよ?!」
「オレだって〜〜〜腕に覚えがあるってこと〜〜〜。」


有り得ねえ、とか、油断禁物、とか。
他愛もない、お茶の時間の小さな会話。
いつも一緒の3人の。
本当に当たり障りのない会話のはずだったのに。


「なーんでこうなっちゃうのかなー?」
「俺が知るか。」


憮然として。
黒い疾風かぜは、思いっきり眉間の皺を深くした。



――――――――――― * ――――――――――


「あなたとファイとでは、どちらが強いんですの?」
「てめぇ、何処で聞いていやがった?!」


およそ会話として成立していないのもさりながら、こう言われてそう返すその即妙さ。
間髪いれずに発せられた答だけに、そのツーカーぶりに、ある意味感嘆するといったところか。
それがまったく賞賛の意味を持たないことは解っていても、そう思わざるを得ない。
蘇摩の思惑とは裏腹に、黒鋼は思いっきり眉間の皺を深くしている。
「噂ですわ。う・わ・さ。」
嘘つけ、と視線で責めて。
そんなもの、俺に決まっている、と言い放った。
「えー?絶対オレのほうが上〜〜。」
「全力で否定しろ。」
「やだー。」
たまたまなのか、それとも『必然』か。
天照からの用事を持ってやって来たファイが口を尖らせた。
まさに、絶妙のタイミング。
子供のケンカの様に、撤回しろ、お断りー、と会話が流れる。
「しょうがありませんわね。じゃあ、こういたしましょう。」
へ?と2人同時に知世姫を見遣った。
その視線の先には。
最上の(黒鋼にとっては『最悪の』)笑顔が。


「文句は言わせませんことよ。」


悪魔の微笑み、かくあらんや、と。


************************************************


確かに、これでは文句が言えない。
忍頭しのびがしらと侍大将が呼び出され。
天照直々の下知を承った。


「明日、御前試合を催す。出場する者を選抜せよ。」


徹底的に勝負をつける必要は無いが、それなりに褒美も取らせる、と。
忍頭しのびがしらには、さらに付け加えて。
「黒鋼はファイと対戦させる。それ以外を選み出すように。」
此処で俄然色めきたったのが、侍大将をはじめとする兵たちだった。
いつも何かといえば忍軍にしてやられている。
特殊な訓練を受けた忍軍に敵わない面は多々ある。
その中でも、『忍軍第一』の実績と力量を誇る黒鋼が相手では、どうにも分が悪い。
しかし、その黒鋼は近習である異国の魔術師ウィザードの相手に立つという。
ならば。
他の忍の者ならば、あるいは相手になりうるかもしれない――――――――――。
「良いか!今こそ我らが力、天下に知らしめる時ぞ!!者共、心してかかれ!!」
「おおぉ!!」
異常なほどの気合いの入りようだった。
それと知って、忍軍も。
兵輩つわものばら何するものぞ!!真に強きは我らと、思い知らせてやれ!!」
剛真の号令一下、轟くような鯨波が巻き起こる。
「つか、みんな、肩に力入りすぎだ。」
呆れたような黒き疾風かぜの声も、耳に入らぬかのよう。


異様なまでの戦気を孕み。


白鷺城は御前試合当日の朝を迎えたのだった。



――――――――――― * ――――――――――


「このような機会は、あったのか?」
天照に問われて。
昏き瞳はかぶりを振る。
「いえ。・・・・と言いましても、私が知らぬだけやも知れませんが。」
それは、『幽閉されていたが故の空白の時』。
その間に行われたのなら、『解らない』。
《 ・・・1度だけ、催された事がございます。王の在位15年を記念しての祝いの行事でござった。 》
まるで言い訳するかのように、『龍玉』――――――――ナーガが言葉を添える。
「ならば『初めて』だということだな。しかと・・・・・。」
「『拝見』させていただきます。」
一瞬の言いよどんだ言葉を、自らが口にして。
ふわ、とした微笑みに、哀しさを感じてしまうのは。
「済まぬ、な。」
「どうかお気に病まれますな。・・・・それよりも。」
「頼むぞ。」
「御意。」
傍に居た女官長には、何の事か解らない。
いや、それは、『龍玉』にも。
この御前試合は『真剣』を使わぬと定められているため、『銀竜』を預かる名目で手にしている。
何の話か、と問う『龍玉』に。
何事か、呟いた――――――――――。


「始め!!」


審判を拝命した陰陽司おんみょうづかさの号令の元。
御前試合は始まった。
とたんに沸き起こる、喚声。
応援する者達の声は、白鷺城の中庭を揺るがさんばかりに響く。
次々に、試合は進み。
ついに最後の試合――――――――――黒鋼とファイが中央に進み出た。


とたんに、水を打ったように、しん、と静まり返る。


「なーんでこうなっちゃうのかなー?」
「俺が知るか。」


恐ろしく気の抜けた会話が交わされる。
まさに、嵐の前の静けさといった所。


果たして。
この異国の者は、『強い』のか否か?


セレスでの激戦の末、日本国に『帰国』して。
傷を癒して、ようやく『近習』として勤め始めたのは秋も初めの頃。
その人当たりの良い笑顔と、何よりも玲瓏なその花顔かんばせに。
殆どの侍女と、一部の公達が『もっていかれた』。
皮肉っぽく言う者も居たが、それはただ『僻み』にしか聞こえず。
今ではファイの事を『悪く』言う者は殆ど居ない。
だが。
その『魔力』は、数回ではあるが目にしてはいる。
しかし剣などの『腕』は披露したことがなかった。
だから、黒鋼が『あいつは戦い慣れている。』と言っても殆ど信じてもらえない。
箸より重い物は持ったことがないに相違ない、と言い切る者まで居て。
同様に近習になった異国の姫もまた、剣などもってのほかの事と信じられていた。


「思い込みって、コワイよねー・・・。」


そう言いながら、2人で苦笑いしていた。
まあリアンはいいとして、ファイの方はあまりそういう誤解がまかり通っていても困る。
それゆえに、言い争いが発生したりするのだ。
黒鋼とファイ、どちらが強いのか、と。


さて。


どちらが『強い』?


得物が『刀』では、普段から実戦に従事する黒鋼に分がありすぎる。
元より、此処では『真剣』は使わぬ定め。


2人は。


長い棒――――――――――『棍』を手にしていた。


************************************************


ファイは高麗国での戦いの際、棒術で戦っている。
かといって、普段からそれで戦うわけではない。
一方の黒鋼は、素養として棒術の嗜みがある。
しかし得手というわけではない。
つまり、お互いに。
『もっとも得意』な物ではないということだ。
これならば、条件的に近くなる。
コンコン、と地を打ち。
ファイはにんまりと笑った。


「黒様、覚悟はいい?」
「てめぇこそ、その素っ首、洗ってきただろうな?」


黒様、コワーイ♪と茶化すその目がすでに笑って『いない』。
2人はキュ、と棍を握りなおした。


「始め!!」


陰陽司おんみょうづかさの号令一閃、凄まじい勢いで2つの影が交錯した。
「!!」
双方とも。
皮一枚の所でかわしきっていた。
金の髪をなびかせて。
棒高跳びの要領で地面に棒を立て。
身体をくるりと反転させて空高く舞い上がる。
身が軽いからこその、戦法。
そのまま落下のスピードを相乗させて猛然と突きを繰り出した。
「させるかよ!!」
切っ先ともいえる鋭い『気』を孕む先端をかいくぐり。
返す手で薙ぎ払う。
ふわり、と痩躯が宙に舞う。
蝶のように。
羽のように。
そして、鳥のように。


かわして、攻撃を繰り出す。
いなして、反撃する。


華麗な、という言葉がまさに示すかのように。
2人の戦いに隙はない。
凄まじいまでの気迫と熱気と裂帛の気合い。
居並ぶ皆は、ただただ固唾を呑んで見つめるのみ。


勝負が、つくのか?


誰もが、そう思い――――――――――。
そして、恐れた。


勝負がついて『しまう』、その瞬間を。



――――――――――― * ――――――――――


「のぅ、知世、黒鋼とファイ、いずれの方が勝りおると思う?」


姉である帝・天照の問いに、知世姫は目を丸くして。
「どうかなさいましたの、お姉様?」
「いや、ふと気になってな。何やら忍軍と陰陽寮とでいさかいの種にもなっておると聞く。」
「・・・難しいですわね。」
諏倭から救い出した経緯、今までの付き合いの長さから考えても、黒鋼、と言いたい所だが。
(もしかしたら?)
『魔力』以外で戦った所を見たことがない、異国の魔術師ウィザード
どれほどの『力』を持つのか。


――――――――――確かめてみたくなった。


「どうかな。『御前試合』なんていうのは?」
「とても素敵な考えですわ、お姉様。」
これなら、あまり角は立つまい。
真の目的である『ファイの力を量る』というのも広言せずにすむだろう。
ファイを使う身である天照が、その力量を知らぬというのは憚られるので。
「本当はあっちも参加させたいのだがな。」
視線の先に、稀代の魔力を持つ人を捉える。
女が相手とて、皆の矛先が鈍るのは避けられない。
しかも、もし怪我でもさせようものなら、あの『黒くてでっかい』忍者が黙ってはいまい。
ファイと対戦させるのでは、本来の目的である、『ファイの力量を量る』ことが出来ない。
「無理ですわね。」
「仕方がないな。」
それは、『いかにも残念そうに』。
そう呟く天照の胸元に、組み紐を組んで作られたコサージュが揺らめく。
そこには『羽根』が挿してあった。


いつでも、天照を護れるように。


だが、これには実は弊害がある。
天照という『存在』が、掴みにくくなってしまうのだ。
心を読むことも、予見さきみする事も。
それでも、これは知世姫の力を遙かに凌ぐ人のしたことだから。
自分としては、否とは言えない。


本当は、少しだけ、口惜しい。


今までは自分が『日本国で1番』だった。
それが今では『3番』だ。
ファイは自分に近いが、僅かに自分を凌ぐ。
そして、『あの人』は。
遙かな、遙かな、手の届かないほどの高みにいるのだ――――――――――。


それにおもねる事も慢する事もしない、その人から。
『銀竜』を、しばしお預かりいただけませぬか、と頼まれた。
相も変わらず、この人の『考え』と『未来』は、ぼんやりとしていて、はっきりと『見えない』。
だから、そこにどんな思惑があるのか、全く読めない。
そして、その表情も。
『心の内』を全く読ませないのであるのだから。
それでも、他人に不利になるような事はしないと知っているからこそ。
知世姫はにこやかに『銀竜』を受け取った。
眼前の中庭では。
飛び散る汗を煌かせ、二人の戦士が熾烈を極めた戦いを展開していた。
固唾を呑む、一同。
しわぶきひとつ漏れ出ない。


凄まじい、『気』がぶつかり合う。
それは、戦頭いくさがしらを務める剛真の目にも、侍大将の目にも、驚きをもって映った。
(この異国の佳人、恐ろしい。)
黒鋼が『あいつは戦い慣れている。』と言った意味がようやく解った気がする。
忍軍第一を誇る黒鋼と、互角に渡り合っているのだ。
とても普段の人当たりの良い風と、その痩躯からは予想すら出来ない。


そして、互いに渾身の、そして必殺の一撃を繰り出そうとした、その時!!


「・・・・・・・・・!!!」


その状態で『止める』ことが出来たのは、この2人なればこそ。
2人とも、まるで時が止まったかのように、ピタリ、と動きを止めていた。
その目は、互いに大きく見開かれて。


それは――――――――――『信じられないものを聞いた』時の目。


ぎこちなくゆっくりと御殿の方に目を遣る。


そこに見たものは。


一瞬のことに、動くことも出来なかったであろう蘇摩と女官長。


奥には、大きく目を見開いて硬直する知世姫。


聞こえてきたのは、知世姫の、息を呑んだ悲鳴であったと知る。


そして。


その白い首のすぐ真横に煌いて在るのは。


――――――――――『蒼氷』の、気高くも玲瓏なる光だった。



――――――――――― * ――――――――――


かつては長刀であった『蒼氷』は、今は脇差ほどの長さに変えられている。
それが今、知世姫の首筋の、真横に『突き立てられて』いて――――――――――。


「・・・何・・・・・。」


それだけ言うのがやっとだった。
一瞬、『反逆』の二文字が皆の脳裡を駆け巡る。
しかし、『蒼氷』の鞘を払いし人は、ただただ静かに。
そのまなこを閉じたままで、呼びかけた。
「天照様。」
「ご苦労だった。・・・知世、こちらへ。」
不自然なほど平静な声で。
天照は己の方に知世姫を呼んだ。
がくがくと。
ぎこちない動きで姉の元に歩み寄る。
離れて見ると、『蒼氷』は『何もない空間』に突き立てられていると知れた。
そのまま妹を己の胸元に抱き取って。
天照は、数歩、退がった。


「待たせた。良いぞ。」
「御意。」


その言葉と同時に。
『蒼氷』を返し、一瞬で跳ね上げた。


「!!!」


『蒼氷』の描いた軌跡の、その残像の中に、鋭く研ぎ澄まされた錫杖の先端が光を零していた。
そしてその凶刃は『異空間』と思しき所から突如として伸びてきており。


その『入り口』は、白き羽根が描き出す『五芒星』に捕らえられているのだった。


「――――――――――『超空間』!!」


ファイが驚きの声を上げる。
「『超空間』?!何だ?それは?!」
黒鋼には、いや他の誰にもわからない。
ただ解っているのは――――――――錫杖の先端は、明らかに知世姫を狙っており。
それをすんでのところで『蒼氷』が食い止めていた、と。


「『超空間』は、『結界』の強力なもの。その中で術師は自在に空間を移動し、かつ術を行うことが出来る。」


ファイは凄まじいまでの警戒をその『入り口』に向けながら早口に言った。
「あの中に術師が――――――――――『複数』居る!!」


《 黒鋼!!我がチカラを使うのだ!! 》


『龍玉』の声にはっと我に返り。
一足飛びに駆け寄って、知世姫から『銀竜』を受け取った。
「いくぞ、『龍玉』!!」
呼応するかのように、『銀竜』はえもいわれぬ光を放つ。


「破魔・竜王刃!!」


剣戟は咆哮を上げて『入り口』に襲いかかった。
ガラスが砕けるような音がして。
結界が――――――――『超空間』が砕け散っていく。
瞬間!!
『影』が躍り出してきた。
1つは銀竜を咄嗟に持ち替え、刀背みねうちで迎撃する。
2つめの影は攻撃をかわして懐に飛び込み、肘撃ちを食らわせる。
よろめいた所を一気に叩き伏せた。
「――――――――――まだ?!」
まだ――――――――――『気配』は、2つ。


「させないよ!!」


その声が、氷のような温度を併せ持つと、何人が気付いたか。
金の光が走った、と思った時には。
手にした棍が一閃し、1人が叩き伏せられた。
さらにもう1つ――――――――――。


「!!」


術師は、宙を舞った。
それと見て。
ファイもまた、棍をダン!と地に突き立てて。
一気にジャンプした。
「ようこそー♪」
にこり、と。
その華麗ともいえる微笑みとは裏腹に。
見事なまでの足蹴りを食らわせた。
「・・・がっ・・・・・!」
空中では避ける間も有らばこそ。
術師は地面に叩きつけられた。
「いい度胸してるしー。」
「結界の中から狙ってきたっていうわけか。」
それは、かつての、『あの男』のように。
「4人の魔力を合わせてたんじゃ、ちょっと読めないねー。」
魔力が上回っていた、という事だろう。
それはそれで『口惜しい』、と。
中庭に下りてきた天照と知世姫に『お怪我はー?』と問う。
「大事無い。ご苦労だった。」
「2人とも見事でしたわ。」
ようやく落ち着いて、賞賛の言葉を続けようとした―――――――――。


陽が、陰った。



――――――――――― * ――――――――――


言葉を失う、というのは、こういう事を言うのだろう。
太陽の光の中に隠れて、『それ』は『降って』きた。
『太陽を背にする』というのは、空中戦での基本ではあるが、この日本国ではそれを知る者は少ない。
気配すら完全に消して。
『それ』を感知した皆が見たものは。


「・・・・・・・・ぐ・・・・・ふ・・・・・・・。」


それは、天照と知世姫の、すぐ間近に舞い降りて。
しかし、手にした佩剣は目的を果たす事無く。
不自然な格好で、その眼を驚愕に見開いた術師は。
くぐもったうめき声を僅かに漏らすのみ。
そして、その鳩尾みぞおちには。
深々と拳が叩き込まれていた。


その拳に、その腕に。
ぐ、と力が込められて。
次の瞬間には、離れた所にある柱に叩きつけられていた。
「・・・・・ひゅー・・・・・。」
口笛の真似をして。
ファイが賞賛を表そうとした時!!


『叩きつけられたはず』の術師が、猛然と躍りかかってきた。


嫌な、音。


それは、『肉を切り裂く』音。


懐深く入って胸倉を掴み、一本背負いよろしく大地に叩きつけたものの、術師の凶刃はその腕を深く切り裂いていた。
たちまち白い服が朱に染まっていく。
「貴様ぁっっ!!」
激昂した黒鋼が銀竜を構えなおすよりも早く。
ファイは棍を手に、にんまりと笑った。


「大丈夫、ばっちり『お仕置き』しておいたから。」


足元には。


完膚なきまでに叩きのめされた術師が気を失って倒れていた。



――――――――――― * ――――――――――


「まァ、その、何だ、『証拠不十分』というのは困るものなのでな。」


次元の魔女の『日本』から手に入れた、といって淹れてくれた玉露は、実に深い味わいがあった。
ご機嫌で茶を飲む天照に比して、知世姫もファイも蘇摩も、機嫌は明後日の方向を向いている。
黒鋼に至っては怒り心頭、といった状態だ。
「・・・・だからって、一言も無し、かよ?」
「敵を欺くにはまず味方から、というではないか。」
当然不機嫌のボルテージが収まることはない。


『超空間』の存在に、気づいた。
5人の術師によるものである事も、すぐに見抜いた。
5人寄ればさすがにファイをも凌いだ魔力も、到底この人に敵う域ではなく。
しかし、その目的が不明確だった。
十中八九、知世姫あたりを狙ってのことであろうが、もしかしたら別の目的があるやも知れぬ。
例えば、ただ純粋に『修行』のためであるような。
『超空間』は、現実世界とは『空間位置』とでもいうような物を異とする。
『たまたま』白鷺城に近かっただけかもしれないのだ。
だから。


彼奴きゃつらが手出しするのを待たねばならなんだ。」


『魔力』を持たない者に、『超空間』が察知されることはない。
5人という人数は、明らかに知世姫とファイの魔力を量った上でのことだ。
たとえバレたとしても、自分たちの居る『超空間』を捕らえ得る事などは不可能――――――――。


全ては、『誤算』。


魔界の入り口をも捕らえ得た人に、何で『超空間』ごときが。
そしてその人は、『魔力』を『感じさせない』。
あらゆる意味で『常識外』の人が居たからこそ。


「今回は命拾いしたということだ。」


御前試合も、相手に『手を出させる』為の方策。
護り手である、黒鋼やファイや蘇摩などの目を、知世姫から外す為の。
「必ず、知世を護ってくれると信じておったからな。」
凶刃を食い止めた『蒼氷』は、役目を終えて鞘の中に眠る。
治癒魔法をかけたから本当は必要ないのだが、用心のためだと黒き疾風かぜに押し切られ。
白布で腕を吊るした昏き瞳のひとは、にこり、とした。


「で、結局、『どちらが』強いのですか?」


おや、忘れていたな。
勝負がつかないままでしたわね?
何ならもう1回やるか?
え〜、面倒くさい〜〜〜。


「最後の一人にとどめを打ったということで。」


その時の対応は、ファイの方が早かったから、と。
とたんに文句を言い募るその声が、どこか柔らかくて小さいのは。
それをまた茶化す金の風を、黒い風が追いかける。


「『今回は』はるばる異国よりやってきた魔術師ウィザードに花を持たせましょう。」


南の空に一つ星が煌く秋の空。
日本国はゆっくりと冬に向かって歩みを進めていた。



                 キリリク目次に戻ります



「55355HIT」をゲットしてくださったオメガ様に捧げるショートショートです。

・・・いや、「SS」じゃないから。(長すぎ)
リクは『ファイと黒鋼、どっちが強いか、というバトル』・・・・・・・・・・・・。
どっちが勝っても禍根が残る(笑)
ので、『宥められてしまう』人に負けていただきました。ww
いや実際、ファイさんが負けると、後々まで何か言われそうな予感がひしひしと・・・・。^^;
私用が重なってスピードダウンした分増えに増えてしまいました。<内容
ま、お嬢に言われたら、黒様は何とか納得してくれるでしょう・・・・。(すでに尻に敷かれてる?!)

あ、『南の一つ星』というのは。
秋の南の夜空にぽつんと輝きます、『南のうお座』のフォーマルハウトをイメージしてあります。

オメガ様、ありがとうございました!(返品絶賛受付中!!)

           作者・シュウ   2007.05.14UP

copyright ©2006-2007 時の翼 all rights reserved

inserted by FC2 system