<58185HIT記念 キリ番リクエスト小説>

      「 虚 構 の 真 実 」




「『羽』を『失くしたい』が、何処から『帰ってきてはいけない』?」
「『森の神殿』からは絶対に『帰ってきちゃいけない』よ。」
「それは『困る』な。」
「『本当に面倒』だよ。」


旅の最初に比べれば。
本当に『我慢強く』なったものだと思う。
それでも、こめかみがヒクヒクとするのは止められず。
「案内なんて『お断り』さ。」
と言いながら宿の主人が『案内してくれた』部屋で。
ドアが閉まった途端に白い魔法生物と黒い疾風かぜが爆発したのも、止むを得まい。


「どうにかならねえのか、この国は?!」


――――――――――どうにも、ならない。

―――――――――――――― * ―――――――――――――


道を尋ねたら、反対のことを言われた。
住民同士の話に耳を傾けても、どうにも理解できない。
考え抜いた結果、1つの結論にたどり着いた。


「此処の人たち、皆『嘘』を言うんですね。」


全てが、真逆。
だからと言って、頭では理解しても、実際に会話するとどうにもついていけない。
黒鋼は早々に音を上げた。
サクラは人間不信に陥りつつある。
モコナは何とかして反対の意味に翻訳しようとしたが、追いつけなくなってギブアップした。
ファイですら、余裕の笑みが消えている。


「頭が混乱してしまいそうですね。」
「『順応性』の問題なのだがな。」


どうやらまともに対応できそうなのは、この2人のみ。
これでは埒が明かない。


「少し早いが、宿を取る。情報収集は私と小狼でやろう。」


少なくとも宿の部屋に閉じこもっていれば、人との接触は最小限のものとなる。
そうすれば、おそらくはファイだけで対応は可能だろう。
赴いた宿屋では。


「『行ってらっしゃい』。」


解っていても、ひっくり返りそうになる。
小狼は、今は自分がコケている場合ではない、と思い直した。


「『出発したい』のだが。」
「『満室』です。」
「『5匹』と『1人』。」
「『お断り』します。」
「これを『消す』のだな?」
「いいえ、『消して』くださいね。」


いらいらいらいら。
黒鋼はもう我慢の限界に来ているようだ。
小狼は、苦笑しつつ。
平然と宿帳に記入するその後姿を、ある意味すごいと思ってしまう。


全く、何のよどみもなく。
見事に『真逆の会話』を成立させている。


(今までに、こんな国に来たことがあるのかな?)
自分たちよりも遙かに長い時間を生きているらしいから。
案内された部屋で、爆発しまくる『2人(正確には1人と1匹)』は放っておいて。
小狼は宿の外に出た。


「何か、コツのようなものはありますか?」


『会話』を成立させるための。
夕闇色の瞳が、ふと細められる。
「『嘘』だと思わなければいい。『逆』を言っている、という認識を持てば、それでいい。」
それが難しいんですけど、と。
苦笑する小狼に、ふっと笑う。


「この国の民にとって、『真逆』こそが『真実』だ。」
「・・・・・・・・・・!!」


足が止まる。
身体が震える。
『真逆』が。
この国の『真実』。


『虚構』が――――――――――『真実』。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


『真実』を見抜く、というレベルではない。
探すまでもなく。
『真実』は――――――――――そこに、在る。


どれほど探しても『地図』が手に入らなかった。
「やはりな。」
驚いたように見る小狼に、『この国には必要ない』と言った。
「何故ですか?」
それには答えず。
ふわりと羽根を1つ、飛ばした。
それはふわふわと空に舞い上がっていく。
続いて掌に光を紡げば。
まるでスクリーンのようにそれは広がって、『地図』を示した。
「此処が『森の神殿』だな。」
この国の、方角的には南に広がる『森』。 そこを起点とするかのように、流れるように街並みが構成されている。


「・・・これって・・・・・!」


小狼でなくとも気づくだろう。
町並みの描く線は――――――――――『サクラの羽の模様』なのだから!!


「厄介だな。」
「それは『どちらの』意味ですか?」
言葉どおりか、それとも真逆か。
「言葉どおりだ。」
少し難しい顔をしながら小狼に羽根を1枚手渡した。
「行くべきポイントは、その羽根が教える。行ったらそこでこう言うんだ。」


神殿から『石』を撒きます。
此処には『無い』ですね?


「訪れた所には、必ず『石』がある。それを手に入れなければならない。」
「全部で?」
「88。」
うわ、と小狼は思わず声を上げた。
半分に分けても、44回『逆の言葉』を言わなければならない。
しかも受け取ったらこうだ――――――――――。


困りますね、と。


あはははは、と。
力無い笑いを浮かべて。
小狼は街へと歩みを戻した。


************************************************


絶対に芸達者になった自信がある。
ポーカーフェイスで嘘を突き通せる妙な自信が。
最初でやはりもたついたせいか、小狼が集めたのは35個だった。
恐縮しながら待ち合わせ場所の神殿で、袋に入れた石を渡す。


「始めようか。」


床の上にばら撒かれた88個の石。
それが光を帯びて浮き上がり。
メビウスの輪を作ってくるくると回り始めた――――――――――。


すい、と。
腕を伸ばし。
石の輪に向かって、パチン!と指を鳴らした。


瞬間!!


メビウスの輪は、石もろともに砕け散り。
神殿から光の波が街に向かって走っていく。
それが幾重にも重なって。
――――――――――その光が消えたとき。


「・・・・街が・・・・・?!」


跡形も無く、消えていた。
それは、まるで蜃気楼の作り出した幻影であったかのように。
「小狼君――――――――――!リアンさん――――――――――!!」
遠くからファイが手を上げて走ってくる。
サクラも、黒鋼も。
「宿も何もかも消えちまったぞ?!」
「人間も、皆・・・・・!」
「幻、だったからな。」
「・・・・・めきょっ!!」
見れば、ふわふわと。
頭上から『羽』が舞い降りてきた。
それは、何枚もの『羽根』に護られるようにして。


「『羽』の『幻想風景』だったかもな。」
「でも、どうして『真逆』だったんでしょう?」
羽が戻って眠ったサクラを抱えながら、小狼は呟いた。
サクラの記憶の羽が作った幻影ならば――――――――――これは、羽の――――――――――嘘?


「違う。」
その発想は言下に否定された。
風がさらりと吹き抜けてゆく。


「物事というものは、1方向からのみならず、あらゆる方向、特に反対側から見る必要があるということだ。」


それは『羽』が教えた――――――――――『真実』。



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「58185HIT」をゲットしてくださった、宴様に捧げるショートショートです。

『住民が嘘ばかりつく国』。
このリク見たとき、まず頭を抱えて。
次に『おぅ!書いてやろうじゃないか!!(黒様風)』と俄然意欲が湧きました。
一番困ったのは、やはり『嘘』の表現。
『嘘』はイカンな、と思って『真逆の表現』としたのですが・・・・。

『〜ない』は反対語じゃないんですよね。(苦笑)
例えば、『嬉しい』の反対語は『嬉しくない』じゃない。『悲しい』とか『辛い』とか、別の言葉になるんですね。
だから逆の言い回しに苦労しました。
自分でツボだったのは、宿屋に入ってきての第1声が『行ってらっしゃい〜〜』・・・・。(笑)
笑いながら書いていたのは内緒の話。(^^ゞ 


宴様、ありがとうございました!(毎度の事ながら、返品絶賛受付中です・・・。)

           作者・シュウ   2007.05.19UP

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