<58785HIT記念 キリ番リクエスト小説>

 「 A banquet of a magician 」




「どうしてそんなに『逃げる』のよ?!」
「黒様〜〜往生際悪い〜〜〜。」
「・・・・てめぇら・・・・・!!」
「今日のオカズは貴方なんだから。しっかりお勤め果たしなさいな。」
「お前も笑って見てねぇで、何とか言え!!」


おや、矛先が、と。
ラーグを抱えて微笑んでいた人は。
「八つ当たりだな。面白い奴だ。」
「そういうものでもないよ、ラーグ。」


それは、褒めているのか、それとも、貶めているのか。


まこと魔術師ウィザードの心の内は――――――――――解らない。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


「おまたせしました〜〜。」
割烹着に三角巾のいでたちの少年が大きな盆を持ってやってきた。


此処は、次元の魔女の『ミセ』。


用がある者にしか見えない、不思議なミセ。


「俺には用は無ぇよ!!」
やっと縁を切れたのに!!と憤慨する、黒い影。
「あらぁ、すっごく大きな『用』があるわよぉ?」
「どんな『用』だよ!!」
「『新婚さんをツマミにして飲む会』の『ツマミ係』よ〜〜〜。」
「・・・・・はぁ〜〜〜??」
「黒様〜おツマミ〜〜〜!」
「おツマミ〜〜〜!」
「おツマミ〜〜〜!」
「そこ!!合唱してんじゃねぇ!!!」


その反応は。
実は自分と同じであるのだからにして。
「・・・あの人って、俺と同じ、『いじられキャラ』なんだ・・・・。」
少年の呟きをしっかりと黒い魔法生物は聞いていて。
「おー!!四月一日ー!!自覚したーーー!!」
「自覚したーー!」
「自覚したーー!」
「だから合唱しない!!」


こうなったら、このミセの酒、全部飲んでやる!と。
それこそがぶがぶ飲み始めた黒い影。
ちょっと、冗談じゃないわよ、私のお酒よ、と。
文句をつけつつ、それ以上のピッチで飲む次元の魔女。
2人ともしょうがないね〜〜と。
言いながら、実はこっそりたくさん飲んでいる氷雪の魔術師ウィザード


「・・・あ〜〜あ、ウワバミが増殖しちゃった・・・・。」


いつもなら1人だけを注意すればいいが、3人では。
少年のため息に、にこり、とする。
「たぶん侑子よりは弱いから、寝る部屋を用意してもらえたらそれでいい。」
「わかりました。」
「侑子には『液キャベ』だったか?」
「もう、ばっちり、箱買いですよ!!」
少年が指し示す方の『存在』の、『気配』にふっと目を和ませる。


風が。


流れた――――――――――。


************************************************


それは、『あの日』と同じ。
風に乗り、散り急ぐ、『桜』の花。
あの日、あの時。
初めてこのミセにやってきた。
魔力が大きく上回るが故に『入れた』このミセだが。
もしかしたら。
自分には、『必要性』があったのかもしれない――――――――――。


そして、ここにいざなった、魔術師ウィザードは。
もう、何処にも――――――――――居ない。


「会いたいですか?」


少年の問いは、唐突で。
しかし核心を突いてくる。
「・・・そうだな。会いたい、かも知れない・・・・・・。」
桜の花と共に、声は散って。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


「会う必要なんざ、どこにも無ぇ。」


驚くよりも早く、抱きすくめられる。
「・・・・黒鋼・・・・?」
てしてし、てしてし。
何とか自由な手で、その背を軽く叩いてみるが、力が弱まることはない。
「死んじまった奴になんざ、会わなくったっていい。お前は俺だけ『見て』ればいいんだ。」
「・・黒鋼・・・酔ってる?」
「あぁ、酔ってる。」
カクン、と首がうなだれる。
「あらら。」
「なによ〜〜〜意外に弱いじゃない!!」
これからなのに!!と。
不平たらたらの次元の魔女を、ファイがまあまあ、となだめる。
「全く、何が『これから』なんだか・・・・。」
呆れた口調で、少年は部屋の支度が出来ました、と言いにきた。
「ありがとう。済まなかったね。」
ひょい、と肩を貸して歩く人を先導しつつ。
少年はふと、問いかけた。
「そうだ、以前おいでになった時に、『俵最中』をお気に召しましたね?」
そうだったね、と。
それはまだ日本国に来て半年ほど、ようやく床を払った頃だったから。
「よろしければ、作りましょうか?」
「いいね。・・・・では、明日に合わせて。」
「明日に?」
「二日酔いに『お薄』は効きそうだ。」
それっていいかも!!と少年は手を打った。
首の周りに巻きついていた管狐が、すりすりとその頬に擦り寄っている。
「お食事はどうされますか?」
「今日はもういいと思う・・・明日の朝を、よろしく。」
「わかりました。一応此処に液キャベ置いておきますね。」
笑いながら。
どたん!と寝床に横たわった大きな黒い影に布団を被せてくれた。
「まだ夜は少し肌寒いですから。」
「ありがとう。」
襖が静かに閉められた。


「――――――――――何処にも、行くな。」


枕元に座った、その膝を抱え込むように。
ちゃっかり膝枕にしながら、呟くように。
「『弟子』になんざ、連れていかせねぇからな・・・・・。」
そのまま安らかともいえる寝息をたて始めたのを見て。
その固くてまっすぐな髪に手を滑らせる。


「きっと『見えて』いたのだろうな・・・・・クロウには、この『未来』は・・・・。」


その呟きは、その部屋の空気と、黒い影だけが、確かに、聞いた。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


頭が、痛い。
「ただ単に二日酔いです。」
なんだか気分悪くて。
「液キャベ、飲まなかったんですか?」
ちょっと頭痛が痛くて。
「それ、日本語になってないから。」


一つ一つの言葉に、律儀にツッコミを入れつつ。
己が主と。
遠来の客人と。
黒い魔法生物にかいがいしく世話をする。
「本当によくできた子だ。」
「あげないわよ。」
「俺、『物』っすか――――――――――?!」
絶妙のタイミングでツッコんでくるのに、むしろ快感とでもいうような物を覚えつつ。
桜の花びらが舞うのに心を乗せる。


「ぜってぇに、『連れて』いかせねぇからな。」


不世出の魔術師ウィザード、クロウ=リードにケンカ売ろうとは、いい度胸ね。
知るかよ!俺には俺の矜持ってモンがあるんだ!!
黒様、怖いもの知らず〜〜〜。
怖いもの知らず〜〜〜!
怖いもの知らず〜〜〜!
怖いもの知らず〜〜〜!


「だから!!合唱するんじゃねぇ!!!」


桜の花が、舞い散る春の日。
眼鏡の奥の瞳は、確かに優しく、微笑んでいた。



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「58785HIT」をゲットしてくださった、玖美様に捧げるショートショートです。

タイトルは『魔術師の宴会』の英訳。『魔術師』が『magician』と訳されてしまうのは、本当は不満ですが。
1人だけ魔術師じゃない黒鋼が混じるとなると、会場はもう侑子さんの店しか思いつかなくて。
さしずめ呼び出しの理由は、『銀竜と刺青を可愛がってあげたんだから』とか何とか(笑)
2人が結婚して1ヶ月くらい経ったあたりです。
お花見ネタ@日本国篇(笑)を書かなかったので、今回ちょこっと書いてみました。(お花見になってませんが)

ミセのメンバー総出演状態ですねー。
もちろん『少年』は四月一日。
ラーグと管狐は解りますね。
合唱してるのはマルとモロです。
もっと黒鋼をいじりたかったんですが。(苦笑)
ちょっと自主規制。(^^ゞ 

あ、『俵最中』の話は。
23232HITキリリク『想い出の風』に載っています。


玖美様、ありがとうございました!(・・・でも返品受付中・・・・。)

           作者・シュウ   2007.05.19UP

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