その『少年』は、どこか『龍王』に似ていた。
かつて、桜都国で、ピッフルワールドで。
出会った彼のように、明るくて、無鉄砲で。
その行動の一つ一つが、どこか心和ませる。
だが。
彼の『声』は――――――――――聞こえなかった。
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口は、動いていた。
だから、きっと『何か』を言っている。
でも――――――――――聞こえない。
「ごめん、君の『声』が聞こえないんだ。」
そう言うと。
困ったような、悲しそうな、顔をする。
しかたなく、手振りや身振りを付け加える。
「君は、何処から来たの?俺は、玖楼国から来たんだ。」
俺か?俺は・・・・何処からなんだろうな??
「誰か家族とか、仲間はいないのかい?俺には・・・大切な仲間がいるよ。」
いいな。俺には・・・・う・・・ん、『1人』、いるかな。
「その人は、何処に?」
わからない。・・・はぐれちまったみたいだ。
「一緒に探そう!!」
この国の『羽』は、もう手に入れた。
サクラとモコナがお腹を壊しているから逗留しているだけだ。
つまり、とりあえずは、暇。
何か少年が言うよりも早く。
小狼はその手をとって走り出した。
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この子が何処から来た子かわかりませんか。
いえ、名前もわからないんです。
この子は、自分たちの言うことは理解できるんですが、上手く話せないんです。
連れの人は、1人だそうです――――――――――。
それはまるで雲を掴むような話。
それでも小狼は一生懸命に聞いて回った。
聞いて回っているとき、誰かが尋ねた――――――――――。
お前さん、どうしてこの子の為にそんなに一生懸命になっているんだい?
小狼は、にっこりとして、笑って答えた。
「『誰かと離れる』という事は、とても悲しくてつらいことですから。」
養父を―――――――藤隆を失った時のように。
だから。
握ったその手が、だんだんと温かくなっていく。
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「あ、黒鋼さん。」
「おぅ。どうした?」
酒でも買いに出たのだろうか。
師と仰ぐ黒い疾風は、気さくに声をかけてきた。
「そっちは?」
「友達になったんですが・・・・彼の『声』が聞こえなくて。」
「?」
解らない、という顔をする。
小狼は苦笑して、それ以上の説明を省いて、この子の連れを知らないか、と問うた。
「わからねぇなぁ・・・・。」
黒鋼としても、苦笑するしかない。
ふと、顔を上げた。
「・・・・・・・・・・・・・。」
にわかに黒鋼の顔が険しくなった。
何事かと彼方を見れば。
「・・・リアンさん・・・・・?」
深き紺の髪の人が。
『誰か』と話している。
(誰だろう?)
どうやら親しいのか、少し微笑み浮かべているようだ。
それと見て、黒い疾風の『気』はますます剣呑なものになっていく。
服装的にも、雰囲気的にも、どこか似ているような、相手の『男』は。
ひょい、とこちらを見た――――――――――。
「〜〜〜〜!!」
少年が駆け寄った。
「?!」
「・・・『連れ』のようだな。」
頭をくしゃくしゃとして。
小狼には、その会話が聞こえるような気がした。
こいつ、心配かけて!!
ごめんごめん、迷っちゃったんだ!
しょうがない奴だな!
だから謝ってるじゃない!!
「良かったな。・・・じゃあ。」
軽く手を上げて、こちらにやってくる。
あいつは誰なんだ、という誰何には笑って答えず。
バイバイ、とでも言うように手を振るのに答えてこちらも手を振って。
小狼は大事なことに気がついた。
「――――――――――あ!!」
きょとん、と見る2人に。
小狼は頭をかきながら、まるで言い訳するように小さな声で言った。
あの子の名前・・・・聞き忘れました・・・・・・。
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実に豪快な数の魔物たち。
如何に黒鋼とて、対応しきれるものでもない。
二手に分かれたこの国で。
黒鋼と小狼は背中合わせに立っていた。
「行くぞ、小僧!!」
「はい!!」
小狼は『緋炎』を抜刀した――――――――――。
よう、あの時は世話になったな。
いっちょ、いくか?
「?!」
誰かの声が、確かにした。
しかし黒鋼はすでに魔物の群れに切り込んでいる。
(・・・誰?!)
おいおい、ボケてる場合か?
(・・・もしかして・・・・・。)
手にした愛刀を見遣る。
もしかして・・・・・・君?
おぅ。
やっと解ってくれたな。
って言うか、『やっと聞こえた』って言うべきか?
・・・そうだね。
俺は、君に『認めて』もらえたのかな?
ま、ちょっとはな。
『声』は、笑った。
『認めた』って言うより、『友達になった』って感じだけどな。
「俺は、そのほうが嬉しい・・・な。」
小狼は、改めて『緋炎』を構え直した。
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