<64146HIT記念 キリ番リクエスト小説>

 「 マ リ オ ネ ッ ト ・ ラ プ ソ デ ィ 」




見えないよ。
聞こえないよ。
そこに誰か居るの?
全然解らない。
そこには『誰も居ない』よ。
糸の切れた、操り人形マリオネットが座っているだけ。
リルル、クルル。
糸が、動き出したよ。
リルル、クルル。


糸を持っているのは――――――――――誰?


―――――――――――――― * ―――――――――――――


『違和感』が有りまくる国、というのも珍しい。


「――――――――――変、ですね?」


今までなら。
突然の来訪者である自分たちは、周りから『浮いて』いて。
自ずと注目を集めることが当たり前だった。
その姿、その服装。
髪の色、目の色。
異なる国に来た時の、相手側の反応とでもいうような物には、いい加減慣れたのだが。


この国、は。


「完全に『シカト』だな。」


わずらわしくなくて良い、とはいっても、限度がある。
しかも、道に突っ立っている自分たちに、人々は容赦なく『突っ込んで』くる。
完全に『衝突』だ。
ぶつかった人々は、何がなんだかわからない、という顔をして、首をひねりながら立ち去っていく。
まるで。
『そこに何が在るのか解っていない』とでもいう風に。


「もしかして――――――――――『見えてない』んじゃない?」


そう考えれば、納得がいく。
しかも、どうやら『声』も聞こえていないようなのだ。
サクラが、モコナが。
どれほど呼びかけても、誰も振り向かない。
「・・・これは困りましたね・・・・・。」
これでは、宿も取れないし、食料の調達も難しい。
何よりも。


「『羽』の情報、取りにくいね・・・・。」


本気で、困った。
情報収集が出来ないレベルに。
「でも、『やらなきゃならない』事ですよね。」
小狼の言葉に頷く。
自分たちは。
『為さねば』ならないのだ―――――――。


ドンッッ!!


小狼とファイに、豪快にぶつかったのは、走ってきた男。
周りには、他に誰も居ない。
男は勢い余って仰向けに倒れ――――――――――後頭部をガン!!と道に打ちつけた。
「あ!!」
「大変!!」
サクラとモコナが同時に叫んだ――――――――――。


『大丈夫ですか?』


倒れたままの男の肩に手を掛けて。
揺さぶらないようにして声を掛けたのは、小狼。
――――――――――のはずだったが。
「???」
「今・・・小狼が『話した』よね??」
『え・・・えぇ・・・・・。』
「!!!」


皆は顔を見合わせた。
確かに『口調』は小狼だが。


しゃべったのは――――――――――倒れた男。


目を閉じ、明らかに気を失った風の、その男は。
『確かに』口を開いて『しゃべって』いる。
――――――――――『小狼』の、言葉を。


「・・・は〜〜〜ん・・・・なるほどぉ・・・・・。」


1人納得したようなファイの言葉に、皆は『?』となる。
「おい、これはどういうことだ?」
「『憑依現象』だよ。」
「『憑依現象』??」
「この人は『気を失ってる』。」
ファイは男を指さした。
「つまり、『自分』がどこかに行ってる。そんな『抜け殻の身体』に、オレたちは『とり憑く』ことが出来るんだ。」
「・・何だか、ぞっとしねぇなぁ・・・。」
いかにも『自分は幽霊でござい』と言われたかのようで。


『でも、これ、「使えます」ね。』


男が――――――――――小狼が言った。
そのままそうっと――――――――何分にも、頭を強打しているのだからにして―――――――身体を起こし、座らせる。
いかにもふらついて座り込んだかのように。
向こうの方から、人がやってきた――――――――――。


「おい!あんた、どうしたんだい?」
上手くいった、と小狼は思った。
『いや、ちょっとふらついただけなんだ。大丈夫。』
「そうかい?誰か呼ぼうか?」
『いやいや、少し休めば大丈夫さ。・・・そうそう、あんた、知らないかい?』
「?何をだい?」
『「不思議な羽」さ。何でもすごい力を持ってるっていう「羽」なんだが。』
「『羽』?それは『ピュッテの旦那』の『羽飾り』のことかい?」
『「ピュッテの旦那」の?』
「何だよ、有名じゃないか!!」
『あ・・・あぁ、そうだったな、いや、ちょいとど忘れしていたよ。』
小狼は言葉巧みに誘導する。
『いや恥ずかしながら、俺は人付き合いが下手でさ、噂もあまり詳しく教えてもらえないんだ。』
えへへ、という仕草を、さっと駆け寄ったファイと一緒に、腕を操り人形のように操作して『表現』する。
『よかったら、詳しく教えてもらえないかい?「物知らず」って笑われたくないんだ。』
「あぁ、いいともさ。」
通りすがりは、気のいいタイプであったらしい。


「『ピュッテの旦那』といえば、国中に知らぬものとていない、有名な芸人だ。」
『うんうん。』
「歌を歌わせれば鳥が集まり、曲を奏でりゃ川が流れを止める。文字を書いたら図書館の本が皆伏せちまったって話だ。」
『そりゃすごい。』
「特に『操り人形』を扱わせたら天下一品。まるで生きてるみたいに見えるって寸法さ。」
『ぜひ見てみたいなあ。』
「明日あたり、そこの公会堂で演奏会があるそうだよ。」
『そりゃありがたい。ぜひ聴きに行かないと!』
「そうしなよ。きっと『羽飾り』のついた帽子を被ってご登場さ。」


いやありがとう、助かったよ。
そうかい?ところで気分は?歩けそうかい?
もう少し休んでから行くよ、心配要らない。
そうか?じゃあ行くけど、ホントにいいか?
いやいや、本当にありがとう。


周りに人が居なくなったのを確かめてから。
小狼が離れた『男』は、黒鋼が活を入れると、ようようにして意識を取り戻した。
頭を押さえながら、ふらふらと歩き出す。
「・・・大丈夫でしょうか?あの人・・・・。」
「ま、何とかなるだろう・・・。」
見送って。
さて、どうやって『羽』を手に入れるかを考えた。


問題は。


『ピュッテの旦那』とは、如何なる人物なのか、という点。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


公会堂にはいっぱいの人が集まっていた。
ぶつかったりしないように端のほうに隠れる。
実はそこはもう舞台なのだが、むしろ此処の方がいいだろう。


自分たちは――――――――――『見えていない』のだから。


開場のベルが鳴り響く。
しん、と静まり返った中、舞台中央から1人の男がせり上がってきた。
とたんに割れんばかりの拍手の嵐が沸き起こる。
男は帽子を脱ぎ、丁寧に一礼した。
「・・・・あ!!」
サクラは見つけた。
「あの帽子・・・!」
「うん、確かにサクラちゃんの『羽』だね。」
ファイもそれと見て肯定する。
男の帽子には、確かにサクラの『羽』がついていた。


「さても音楽とは、妖精たちの戯れ――――――――――。」


言葉が滑り出す。
「皆々様には、夢の世界への招待状を持参いたしました。お時間の許します限り、お楽しみいただければ幸いでございます。」
もう一度礼をして。
舞台は暗転した。


カタリ。


スポットライトが、1体の人形を照らし出した。
少し大きい、操り人形。
人形自体が意思を持つかのように、その動きは予想だにしないほど滑らかだ。


「・・・おい!!」


暗くてよくわからなかったが、まず夜目が利く黒鋼が気づいた。
はっとして見れば。
観客たちが、不自然な動きをしている。


ゆらゆら、ゆらゆら。


トランス状態であるかのように、左右に、前後に揺れている。
やがてがくん、とその首を折る。


糸の切れた、操り人形のように。


舞台の上では。
ピュッテが人形の糸を繰っていた。
――――――――――すると。


人形が。
帽子の『羽』が。
ぼう、と光り始めた。


見えないよ。
聞こえないよ。
そこに誰か居るの?
全然解らない。
そこには『誰も居ない』よ。


「私はここさ。そしてお前もここに居る。ちゃあんと居るよ、『此処』にね。」


ここには『何』が並んでいるの?
糸の切れた、操り人形マリオネットが座っているだけ。
リルル、クルル。


「いつも一緒だよ。誰にも邪魔はさせないよ。人間なんて――――――――――くそくらえ、だ。」


この公会堂ごと、燃やしてしまおうか。
それがいいと思わないか?
人形は、ゆっくりと顔の向きを変えた。
――――――――――舞台袖に居る、皆の方、に。


糸が、動き出したよ。
リルル、クルル。


糸を持っているのは――――――――――誰?


「誰も『糸』なんか持ってないし、操られてもいない。」
ファイの声が、どこか凄んでいるのは。
「人が生きるのは『自由意志』。誰にも邪魔はできないよ。ましてやその命を『奪う』なんて。」
「人間なんて、身勝手な生き物だ。人形は、そんなものとは無縁。――――――――清らかなもんさ。」
ピュッテの言葉に、不可思議な色の炎をその目に宿す。
「自分で自分の道を進むんだ。こうと決めた道を、ひたすらにね。」


「――――――――――黒たん、『あの糸』を切って!!」


声と同時に黒鋼は飛び出した。
『蒼氷』が軽やかな軌跡を描いて舞う。
「・・・・・あ!!」
サクラが思わず声を上げた――――――――――。


ピュッテに、そして操り人形に絡みつくように、糸が『群れ』を成している。
それはサクラの『羽』と一緒になって妖しい光を放って。
『蒼氷』が断ち切った糸はバラバラと床に落ちていく。


「――――――――――ああ!!あああ!!!」


言葉にならぬ叫びを上げて。
ピュッテは慌てて糸をかき集めた。
それを手に取り。
『切られて』いるのに気づいて。
獣のような咆哮をあげた。


「私の――――――――――私の操り人形マリオネットが!!」


糸が切れて、動かなくなった、『人形』。
それを抱きしめて、呆然と座り込むピュッテに、ファイは静かに近づいた。
「・・・!来るな!!来るな!!私の・・・・・・!」
「君の人形は君のモノ。オレはそんなものには興味はないよ。」
「嘘をつけ!!皆、皆、一緒だ!!皆、奪っていくんだ!!」
そのまま後退りしていき、舞台そでの柱にドン、と当たった。


「皆、私から奪っていくのだろう!!夢も、希望も、名声も、富も・・・・人形も!!」


「ありがとうございました。」
そういって、頭を下げたサクラに、皆はきょとん、とした。
「姫?」
「ピュッテさん、ありがとうございました。」
「・・・・・・・・え?」
「その、『羽』。」
言いながら、帽子の『羽』を指差した。
「私の大事な『羽』、ピュッテさんが『預かって』、『大事に護って』くださってたんですね。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「本当に、ありがとうございました。」
もう一度、頭を下げる。
「こうやって『受け取りに』来ることが出来ました。その・・・・何の御礼も出来ないんですけど・・・・・・。」
ショボン、として顔を伏せたサクラに、ピュッテは慌てて言った。
「そ・・・そんな事はないよ、お嬢さん!この不思議な羽のおかげで、私は大事な人形と話ができたんだ!」
それは――――――――――奇跡であり、感動であった、と。
「お礼を言うのは私のほうだよ!歌だって踊りだって、何だかとても上手くできるようになったんだ!」
「そ・・・そうなんですか・・・・?」
「そうだよ!!それはきっと・・・・これがお嬢さんの持ち物だったからだ・・・・。」


きれいな心の人のモノは、きれいなチカラ。
薄汚れた人のモノは、薄汚れた醜いチカラ。
――――――――――ワタシは、どっち?


「きっと貴方は素敵なチカラ。こんなに信じあって、慈しみあっているのだもの。」
「モコナには解るよ!『心の色』は、とってもピュアでキレイなのー!!」
「皆にも、見せてあげてよ。その『心』。」
「小さな雫も、いつかは岩をも穿つ。信じれば、きっとネガイは叶うさ。」


「俺達、『貴方の舞台』が、見たいです。『観客』の1人として。」


この舞台が終わるまで、『羽』は貸しておくれ。
ピュッテの申し出を皆は受けた。
そろって観客席のほうに行き、舞台を見遣る。


「さあ!!妖精たちの舞踏会が始まるよ!!」


ジャアン!!と。
手にしたシンバルを打ち鳴らした。
今まで糸の切れた人形のようにうなだれていた観客たちが、はっとして顔を上げる。
「今日はめでたいお祭りの日!」
「さあさ、皆さんご一緒に!」
「踊りましょうぞ、歌いましょうぞ!」
「妖精王のお通りだ!」


幾体もの人形を同時に操る。
華麗に、滑らかに。
その動きの1つ1つが生きているかのよう。
人々は魅了され。
万雷の拍手はいつまでも鳴り響いていた。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


しがない芸人だった頃。
細々とした稼ぎさえも搾取されていた。
やがて名声を得るようになってからも。
その金額が変わっただけで、『実際』は変わらなかった。
人間の、どろどろした欲望の渦。
人形にだけ向けた、屈折した『愛』。


羽は、きっかけに過ぎなかった。


「修行しなおすよ。」


ピュッテは静かに笑った。
「不思議な羽がないと、さすがに今までのようにはいかない。でもきっとそれ以上になってみせるよ。」
その『心』があれば。
「きっと、最高の芸人になれますよ。」
「きっと、なってみせるよ。」
一人一人と握手を交わし。
ピュッテは歩き始めた。
背中のトランクには、大切な人形たちが眠っている。


「信じれば、いつかきっとネガイは叶う。・・・絶対、大丈夫。」


消え行く背中に向かって。
サクラは『無敵の呪文』を呟いた。



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「64146HIT」をゲットしてくださった、オメガ様に捧げるショートショートです。

『存在を認識されない国』。
リク内容を聞いて、まず『難しい』と思いました。
存在を『認識させない』というのは他で書いてきましたが、これは他の力による『認識不可』です。
色々考えてみて、「じゃあ〜国中皆に『無意識に』シカトさせればいいじゃん。」と。
でも本当は、『無視される』っていうのは、とてもつらく悲しい事です。
しかし、相手に『そうする意思』が無かったとしたら?
『最初から居ない相手』に、どうやって気がつけと。
考えてみたら、彷徨える魂は、こういう思いをしているのかもしれない、と思いました。
身体がないし、姿も見えない。
写真なんかに写ることもあるみたいですが(苦笑)それはそうそうある事ではないでしょう。
その魂の想いは、どうやって『生きている存在』に伝えればいいのか。
生きている側からのアプローチはありますね。
『魂呼び』とか、『口寄せ』とか。
でも魂側からは、とりつくとか、何かの合図をするとか、そんな事しか出来ない。
『伝えられない』、そのもどかしさ。
彼の『心の闇』と人形の『想い』を、『羽』が繋いだ。
それが『善』か『悪』か――――――――――。
誰にも判断はつけられないと思います。

『ピュッテ』は『A puppet master』、つまり『人形遣い』の英訳の強制読み替えです。
たぶん、いえきっと、彼は素晴らしい人形遣いになってくれると信じています。


オメガ様、ありがとうございました!(・・・でも返品受付中です・・・・。)

           作者・シュウ   2007.05.30UP

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