<66666HIT記念 キリ番リクエスト小説>

「 夜 鶯 ナイチンゲールの 啼 く 夜 に 」




自分に出来ること。

自分にしか出来ないこと。

他人から見れば、それは他愛もない、呆れられるようなことであるのかもしれないけれど。

でも。

「今の私にとって・・・・・一番大事なこと。」

サクラの言葉に、白い魔法生物は大きく頷いた。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


ピッフルワールド。
『機械の箱』が空を飛び。
移動なども殆どが『車』と呼ばれる機械を使う国。
日々の生活に、大きく『機械』が関わっていて。
「『便利』だよね。」
白き魔術師ウィザードは感心したように言った。
「何でこんな物が空を飛ぶのか、未だに理解できねぇな。」
興味津々でありながら、それを悟られまいとしているかのように口をへの字に曲げる忍者。
「今はがんばって操縦を覚えて、とにかくレースに勝つことですね。」
うん、と握りこぶしつきで琥珀色の瞳が宣すれば。
皆も一様に頷く。


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『月の城』で再会して。
やっと元通りになった『仲間たち』。
(黒鋼さん、何だかとても雰囲気が柔らかくなったみたい?)
それが『護り手』の心であるとは知らない。
(ファイさん、とても嬉しそう。)
夜叉の国で、散々黒鋼をからかってきて満足しているのだろうか。
(小狼君、怪我ひどくなくて良かった。)
自らを省みない性格が心配で。
『待っている』ことがとても辛くて。
(モコちゃんも、もう『ヘンな所は無い』って言ってくれた。)
干渉された次元移動をしなくなったからだろう。
さらにテンションを上げて黒鋼に絡んではドタバタを繰り返している。
「相変わらずだねぇ〜〜。」
そう言って笑うファイが、やかんを火から下ろした。
「ファイさん、何やっているんですか?」
「ん?あ、これ?ホットレモン〜〜。」
言いながら、マグカップに入れた蜂蜜を、少しのお湯で溶いている。
溶けた所で、氷をカラカラと入れた。
「本当は『お湯割り』にするんだけど〜〜。」
オレ熱いの苦手だしー、と。
冷たくなった所へレモンの絞り汁をたっぷり入れた。
「はい、サクラちゃんもどうぞー。」
「ありがとうございます。」
飲んでみると、レモンがとても酸っぱいのだけれど、蜂蜜の甘さで少し軽減されているように思った。
「なんかちょっと背中がぞくぞくするんだ。オレ、これ飲んだらちょっと寝てもいいかなぁ?」
「!はい!後は任せてください!!」
「ありがとー。」
ファイはコップを洗って、じゃあ、といって部屋に帰っていった。
入れ替わりのように、買い物に出ていた小狼が戻ってくる。
「ただいま帰りました。」
「お帰りなさい。」
冷蔵庫などに、次々と入れていく。
黒鋼も台所に来て、『酒はあるか?』と小狼に尋ねた。
「はい・・・あ・・・・くしゅん!!」
珍しく、小狼がくしゃみをした。
「どうした?風邪か?」
「あ、だいじょうぶです。たぶん冷蔵庫の冷気で・・・・・くしゅん!!」
「・・・たく!!」
玉子酒が本当は一番効くんだが、とぶつぶつ言いながら。
黒鋼は手早く何か飲み物を作った。
「小僧!これを飲め!!」
「はい・・ありがと・・・・くしゅん!!」
「・・小狼君、大丈夫・・?」
「大丈夫で・・・くしゅん!!くしゅん!!」
姫も飲んでおけ、と目の前に差し出されたのは、ツン、とジンジャーの香りがした。
「黒鋼さん、これは?」
「生姜湯だ。」
前にファイが『ジンジャーは身体を温めるんだよ。』と言っていた気がする。
「これ飲んだら、とにかく温かくして、布団に包まって寝ろ。」
「・・・はい・・・・。」
「姫も今日はもう休め。食事はどこかに食べに行けばいい。」
「わかりました。黒鋼さんも休んでくださいね。」
「あぁ。」
黒鋼も生姜湯を飲みながら頷いた。
(――――――――――珍しい。)
お酒じゃなく、生姜湯を飲むなんて。
「俺も何だかちょっと変だな。もう休む。」
「はい、おやすみなさい。」


結局その日はもう夕方から皆寝ることになってしまった。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


夜中。
「・・・・お腹空いた・・・・・。」
さすがに空腹を覚えて、サクラは目を覚ました。
時計を見ると、夜の11時。
「今から出かけるのもちょっとね・・・・。」
家に食材がないわけではない。
何か作ろう、とそっと起き出した。
(皆もお腹空いたかな?)
1人分作るのも4人分作るのも、手間は同じ。
(もう夜中だし。)
『重い』物は食べない方がいいだろう。
何がいいだろうか、と考えながら。
キッチンに向かおうとして――――――――――足が止まった。
「・・・・・?」
何か『変な』音を聞いた気がして。
動きを止め、耳をそばだたせた。


「・・・・うぅ・・・・・ん・・・・・。」
「・・・・ごほっ・・・・ごほ・・・・。」
「・・・はぁっ・・・・はぁっ・・・・。」


それは、男組それぞれの部屋から。
そしてそれは、とても苦しげで。
「・・・・小狼君?」
まずは、と。
そっとノックをして、でも返事はなくて。
静かにドアを開けて――――――――――愕然とした。
「小狼君?!」
はあはあという息遣いも荒く、枕に口をつけて咳を外に漏らさないようにしている。
こんな時まで、気遣いをして。
額に手を当てれば、燃えるように熱い。
「大変・・・・!!」
慌ててファイの部屋に走った。
「ファイさん!ファイさん!!小狼君が・・・・・!」
しかし。
ファイもまた、ベッドで苦しげに呻いていた。
その肩は、やはりとても熱い。
(・・・まさか。)
頼みの綱とばかりに、最後に飛び込んだ黒鋼の部屋で。
サクラは呆然と立ちすくんでいた。


「黒鋼さんまで・・・・・。」


大きな身体を海老のように丸めて。
黒鋼もまた、身体に熱を持ってベッドから起き上がれないでいた。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


猛然とした勢いで薬局の場所を探した。
(地図の検索・・・・。)
ホームコンピューターに出されたデータを頭に叩き込む。
少し離れてはいるが、車を使うほどではないようだ。
営業時間は24時間。
「あの!すみません!!」
息を切らして駆け込んできたサクラに、店員は目を丸くした。
「はい、いらっしゃいませ。何をお求めですか?」
「あの・・・みんなが・・・『家族の者』がとても高い熱で、風邪みたいで・・・・・。」
「『おとーさん』と『かーさん』と『兄さん』なのー!!」
その言葉に顔を赤らめている余裕すらなかった。
「じゃあ、まずは薬ですね。・・え〜と、これが『解熱剤』です。」
何種類か出してくる。
店員は2、3の事を尋ねて、ファイ用と小狼・黒鋼用とを分けた。
「冷え性の人には、こっちの薬だとちょっときついんですよ。」
と言いながら。
「後は吸い飲みと氷枕と氷嚢ですね・・・・あれ?氷嚢、何処だっけか・・・・。」
きょろきょろして。
店の奥の方の棚を整理していた別の店員に声をかけた。
「おーい、陸王!氷嚢、何処だっけー?」
「氷嚢?・・・お前のすぐ真後ろだ。」
「え?・・あ、これか。悪ィ。」
「商品の場所ぐらい覚えとけ。」
「ふん!!」
ちょっとした漫才の後、店員は『済みませんでした。』と言いながら氷嚢を出してくれた。
「ところで、家に氷はありますか?」
「え?・・・・あ!」
飲用には常備していても、一気に氷枕などを、それも3つも作るとなると、到底足りない。
「お届けしますよ。家は何処ですか?」
「てめぇが配達しろよ、風疾。」
「配達係は体力バカでないとね〜〜!」
見るからに細っこい、風疾と呼ばれた店員はにやりと笑った。
結局。
荷物も多いから、とサクラとモコナも一緒に乗せて、陸王という店員が送ってくれることになった。


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ガンガン!と。
大きな氷をアイスピックで砕く。
細かくなったのを順に、氷嚢や氷枕に入れていく。
きちんと栓をして、水がこぼれないか確認して。
「サクラ、お湯が沸いたよ!!」
「うん!それ、急いで冷まして!」
「わかった!」
モコナが吸い飲み用の白湯さゆを準備している間、ひたすら氷と格闘する。
「・・・痛っ・・・・!」
アイスピックがすべり、サクラの手から血が噴き出してきた。
「ああ!!サクラ!!大丈夫?!」
「・・・大丈夫・・・これくらい!!」
すぐに傷口を洗い、テーピングをする。念のため薄いピッタリとしたゴムの手袋もはめた。
「うん、これで影響なし!!」
自分に言い聞かせるように、ことさらに明るく言って。
サクラは作業を続行した。
氷枕が3つ。
腋に置く氷嚢が6個。
白湯さゆを入れた吸い飲みが3個。
各自用の薬をトレイに乗せて。
「ファイさんの薬だけ違うから、間違わないようにしなくちゃ。」
「サクラ!全部準備オッケーだよ!!」
「うん!」
まずは1人だけ薬が違うファイのところへ。
何度も確認して薬を渡す。
「・・・ありがとー・・・ごめんねぇーサクラちゃん・・・・。」
「いいえ、それよりも早く良くなってください!!」
「・・・んー・・・。」
苦味に顔をしかめながら、何とか飲み込む。
「はい、ファイさん、着替えてください!」
「え?」
「汗かいてますから!!ちゃんと清潔にしないと!!」
モコナがレンジで温めてきたタオルをほいっと渡してくる。
「・・熱っ・・・・・・!」
ホコホコと湯気を上げるタオルにわたわたしながら。
苦笑しつつシャツを脱いだファイの背中を丁寧に拭く。
手の届く所は自分でやる、と言ってファイが自分で拭いた。
とりあえず上半身を綺麗にして、新しいパジャマを着せる。
サクラが新しいシーツに換えている間に、足の方も自分で拭いて着替えていた。
氷枕をセットし、横になった腋の部分に布で包んだ氷嚢を置く。
「わぁ、冷たい〜〜・・・シーツもサラッとしていて気持ちいいよ〜〜。」
「良かった!!とにかくもう一眠りしてください!冷たいスープを用意しておきます!!」
「ありがとー・・・。」
そっと部屋を出る。
モコナがシーツを持って洗濯篭に入れに行ったのを見ながら、小狼の部屋の戸をノックした。
「・・・・はい・・・・・。」
「あ!小狼君!起きちゃダメだからね!!」
ファイと同様に、薬を飲ませ、身体を拭き、着替えさせ、シーツを取り替える。
氷枕をして力なく横たわった小狼の顔色はとても悪かった。
「とにかく眠って?寝なきゃ薬が効かないの。」
「解りました・・・・・。」
「・・・おやすみなさい。」
返事はなく、荒い息遣いだけが部屋の空気を震わせる。
サクラは心配そうにじっと見ていたが、気を取り直してドアを閉めた。


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自分で拭くから、というのを強引に押し留めて。
大きくて広い背中を拭く。
「・・・小僧たちは?」
「皆もう着替えも済ませて寝てもらいました。」
「・・・そうか。」
黒鋼にはタオルが倍必要なの――――――♪と飛び跳ねるモコナに、うるせぇ、とだけツッコんで。
よいしょ、とシーツの取替えの終わったサクラに声をかけた。


「怪我は大丈夫なのか?」


「え・・・・・。」
体力がある分、軽くで済んでいるのか。
周りを見る気力があったとみえる。
熱のせいで紅い瞳はどこか潤んでいて。
すい、と手が動き、黙って『怪我をした手』を指差した。
「・・・大丈夫です。ちゃんと手当てしましたから。」
「あとでもう一度ちゃんと手当てしておけ。白まんじゅう、ちゃんと見張ってろよ。」
「うん、わかった!」
「と・・・とにかく、寝てください!!」
解った、と言いながら横になる。
それを確認して、サクラは慌てて部屋を出た。
――――――――――とても、恥ずかしそうに。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


天気予報では、明日―――――――もう今日だが―――――――は、晴れ。
シーツを洗濯し、パン!と伸ばしてロープに干した。
これなら、午前中には乾くだろう。
ジャガイモをゆでて潰し、裏ごしをしてヴィシソワーズを作る。
味を見て、モコナがOKを出した。
「これなら皆、きっと食べられるね!!」
冷たく冷やせば口触りもいいはずだ。
鍋ごとそっと冷蔵庫に入れた。
「・・・これで、よし!!」
そう宣言した途端に。


ぐぅ〜〜〜〜きゅるるる〜〜〜・・・・。


「あ・・・・・・。」
自分は空腹で目覚めたのだった。
すっかり忘れていた――――――――――。


「サクラ!!ごはんできたよ!!」


モコナの声に振り返れば。
「わぁ・・・・・!」


バターと蜂蜜をたっぷり塗ったトースト。
少し甘めのホットミルク。
新鮮な野菜のサラダ。
柔らかな湯気を立てるコーンスープ。
2つの目玉がちょこん、としたハムエッグ。


「モコちゃんが作ってくれたの?!」
「うん!!サクラ、一生懸命だったから!!」
「・・・ありがとう・・・!」
「あ、でも先に怪我の手当てね!!」
黒ぽん、怒るからー♪と。
消毒薬が少し沁みたが、もう痛みはあまり感じられない。
丁寧にテーピングして、防水シートも貼った。
「うん!これでOK!!」
「ありがとう!さあ、食べましょう!!」


メニュー的にはポピュラーでシンプルだけど。
(きっと、今までで、一番。)
サクラにとって、『美味しい朝食』だった――――――――――。



              キリリク目次に戻ります


「66666HIT」をゲットしてくださった美沙希様に捧げるショートショートです。

『東京篇以前で男組が全員風邪でぶっ倒れて奮闘する娘組』というリク内容。・・・『娘』組・・・・。(笑)
一番困るのが黒様ですが。<風邪なんか引かなさそう
でも強引にぶっ倒れていただきました!!(^^)v
皆が『家族』していられたのは、このピッフルワールドが最後ですね。
桜都国を舞台にしても良かったんですが、あそこだとまだサクラが本調子じゃないし。
突然サクラがぶっ倒れても困るので。(店開けてたら大変なことに・・・・。)
そういう理由からピッフルワールドが舞台になりました。
陸王と風疾、薬局と言えばもうこの2人はお約束でしょう!!(花蛍さんは・・・・・?)
なので、原作沿い、オリキャラ無しです。
夜鶯ナイチンゲールはあのクリミヤの天使・フローレンス=ナイチンゲールに引っ掛け・・・。
看護する人の象徴ですね〜〜。

美沙希様、ありがとうございました!(久々に明るいシチュを書いたような・・・・でも返品可。)

        作者・シュウ   2007.07.10UP

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