<67276HIT記念 キリ番リクエスト小説>

     「 Das Land des Kindes 」




「凄く背が高いんだね。」
「キミの国は、皆そんなに背が高いの?」
「腕も足も長いよね。」
「他の国にはきっと色々な『子供』がいるんだね!!」
さんざめく、声。
周りを囲んだ『子供』たち。
追い払わないのは――――――――――彼らに『邪気』が感じられないから。
純粋で。
一途で。
何もかもが好奇の対象。
「ねぇ、俺たち、『情報』を集めなきゃいけないんだ・・・・『大人』の人は何処にいるんだい?」
小狼の質問に。
『声』は、ぴたり、と止まった。
そう、風さえも。


「――――――――――『大人』って・・・何?」



―――――――――――――― * ―――――――――――――


じゃあこの国は、どうやって『運営』されているの?


小狼の質問に、少し大きな少年が答えた。
「この国では15歳までの『子供』だけが住んでるんだ。」
「15歳?」
「そう。毎年5月5日にみんなの誕生日を祝う。」
「皆の?誕生日が一緒なの?」
「毎年その日になると、町の広場に赤ん坊が『現れる』。だから誕生日は皆一緒なんだ。」
「・・・・・・・・・・・。」
少年が見遣る先には、まだまだ幼い子供が、少し大きな子供と一緒に遊んでいた。
その目は、それはとても、優しくて。
小狼は、その『目』をどこかで見たことがある、と思った。
「ここでは、大きい子供が全てを取り仕切るんだ。。」
「取り仕切る?」
「基本的には、14歳から『働き』始める。16歳になる前日まで。」
「すると、こういう事かなー?」
今まで黙っていたファイが口を挟んだ。


「この国では、『16歳の誕生日は来ない』って事かな?」


「そうだよ。」
その言葉の持つ意味の重さと裏腹に、少年はあっさりと答えた。
「16歳になる子は、誕生日の朝にはもう『居ない』んだ。」
「・・・・居ない・・・・・?」
「まあ、大して影響ないけどね。」
14歳から働く。
農作業であったり、生産に携わったり、あるいは教職であったり。
2年間勤めて、『消えて』いく。
「それっておかしくないんですか?」
サクラの問いに、少年は不思議そうな顔をした。
「どうして?」
「だって・・・・『消えて』しまうんでしょう?」
「あぁ、その事。」
その物言いは、大した事はない、というように。


「そうでなきゃ、此処は一杯になっちゃうじゃない。」


それは、自然淘汰なのだと。
「この国の今の人口は72人。ちょっと多いね。本当は50人くらいが一番平和で過ごしやすい。」
「平和、って・・・・・。」
「争いごとが起こっても、すぐに解決できるし、お互いに過干渉にも不干渉にもならない。」


一体なんなのか。
この、さっぱりとしすぎるほどの『感情』は?

*********************************************

「もちろん宿屋もやってるよ。どうぞ。」
そう言われて案内された宿屋で。
黒鋼は苦虫を潰したような顔をし、ファイは困ったような笑みを浮かべた。


ベッドが、小さい。


「・・・2つ合わせりゃ何とかなるだろう・・・・。」
ツインの部屋を1人で使うことにして、ではどう合わせるか、ということでファイが実験台になった。
「横も結構狭いね〜〜〜。」
「でも、横に並べると、長さが足りませんよ?」
「うーん、やっぱり縦に並べるか・・・・?」
「あ!ファイさん、3つを横に並べて、向きを変えて寝たらどうでしょう?」
サクラの提案に、試してみて。
「・・・これが一番良さそうだね〜〜。」
「じゃあトリプルの部屋に変更ですね?」
元々サクラと小狼用に借りていたシングルの部屋を、それぞれトリプルとカルテットに代えた。
2人はそのままツインの部屋をそれぞれ使うことにする。
さすがの小狼も、このベッド1つでは少々小さかったのだ。
黒鋼はもっと大きいから、ベッド4つを連結する。
「無駄に大きい人が此処にー!!」
「うるせぇ!!」
およそ寝にくいことこの上ない。
しかし今は、文句をいっている場合ではない。
小狼の部屋に集まって、今後の相談をする。
「モコナ、『羽』の反応は?」
「・・チカラは感じるんだけど、とても弱いの・・・もしかしたら、『羽』じゃないかも・・・・。」
「・・・『湖の国』みたいに?」
「・・・・うん。」
「はっきりしろよ、白まんじゅう。」
「無理なの――――――――!!」
まあまあ、と。
お互いをなだめながら、とにかく探してみよう、ということになった。



―――――――――――――― * ―――――――――――――


雲を掴むような話、というのはこういうことを言うのだろうか。
今までにも情報の少なさから真実にたどり着くのが困難な国は在った。
しかし、此処はさらに『不可解』という事項がプラスされている。


子供『しか居ない』国。
子供『だけが存在を許された』国。
一定年齢に達すれば『消える』国。
――――――――――『大人の影が見えない』国。


この極端なまでの『隔絶』に『作為』が見える。
誰が?
何のために?
「『外』に出れば、解るんじゃないかな?」
「おそらくはな。」
大人組の意見は一致した。
数日間『羽』を探して、どうやら『無い』らしいこともわかった。


しかし。


「『移動』できないの・・・・・。」


モコナが長い耳をしおれさせてシュン、とする。
「特殊なシールドか、防除魔法か・・・・・。」
とにかく『何か』が、『出る』事を阻んでいる。
そして、それは、おそらく。


「此処の子達も『出てはいけない』のだろうね。」


だとしたら。
「チャンスは1回だけですね。」
16歳の誕生日を迎える子供たちが『消える』夜。
――――――――――5月4日の夜。
そして、それは、今夜。

*********************************************

場所は?
「たぶん、『朝になったら赤ん坊が現れる所』。」
それは、町の広場。
夕食の後、広場に集まり、そっと辺りを窺った。
今の所は、何も。
じっと時が流れるのを待つ。
教会の鐘が、深夜0時を告げる鐘を鳴らし始めた――――――――――。


「・・・・・・・・!!」


何処からともなくやってきた、3人の子供。
そのうちの1人は、最初に案内してくれた子だった。
操られているかのように、その目には光が無い。
5つ目の鐘と同時に、光の扉が現れた。
(あれが、『出口』・・・?)
子供たちは何のためらいも無く入っていく。
「・・・行こう!!」
白き魔術師ウィザードの声に我に返り。
慌てて後を追う。
扉の中は、光の渦――――――――――。


「まさか・・・・・。」


自分たちとは反対に流れるように。
さながら川を流れ下るが如く、揺り篭が進んでいく。
その中には。
「・・・赤ちゃん!!」
『5月5日に広場に現れる』赤ん坊。
ふわふわと流れて、やがて見えなくなっていった。
そうこうしているうちに、自分たちにも終着点が見えてきたと知れる。
「・・・こっちへ!!」
ファイは皆をぐい!と引っ張り、『出口から飛び出した』瞬間に横っ飛びに逃れた。
隠れた所からそっと窺えば。
「・・・・ファイさん・・・・・?」
小狼の声が震えている。


大きな水晶球を前にした、黒いローブを頭からすっぽりと纏った者が数名。
水晶球は光り輝き、16歳を迎えた3人を光で包み込む。
その光が消えると、おもむろに白いひげを蓄えた老人が進み出た。


「ようこそ、『光の国』へ。我々は君達を歓迎する。今日から君達は我々の仲間だ。」
「・・・僕たちは、一体・・・?」
「君達は昨日まで教育システムによって、『生きるために必要な知識と経験』を習得してきたのだ。」
「教育システム・・・。」
「今や君達は完璧な知識を身につけた、人々を指導すべきエリートなのだ。」
「指導・・・・エリート・・・・・。」
「改めて、歓迎の意を表する。ようこそ、『選ばれし者』達よ。」


やがて、3人の子供たちは黒いローブを纏った者たちに伴われて部屋を出て行った。
あとにはあの老人が1人残される。


「そこの者たち。何もせずに立ち去るならば、一切を不問にしよう。」


気づかれちゃってたねー。
まあ、気づくだろうな。
すみません、悪気はないんです。


三人三様の答にその表情を崩す事無く、老人は重ねて『去れ』とだけ告げた。
「もちろん、去ることに異存はありません。でも、1つだけ、教えてもらえませんか?」
小狼の問いに、老人は視線で次を促した。
「何故あの国は、『子供しか』居なかったんですか?」
「・・・聞いていたとは思うが、あそこは選ばれた者を養成するための教育システムだ。」
「選ばれた者・・・・。」
「我々にはいわゆる『生殖能力』というものがすでに失われておる。」
それは、ひいてはしゅの滅亡を意味する。
「遙かな以前より保存されてきた、精子と卵子を人工的に結合させ、計画的に新たな命を生み出す。」
「『父』も『母』もなく?」
「そうだ。」
老人の目が、表情が、虚空を見つめる。
「綿密にプログラミングされているから、遺伝上のトラブルもない。そしてその中で、選ばれた遺伝子を持つ者をあの国に集めるのだ。」
「『リーダー』を作るために?」
「そうだ。」
老人は静かに頷いた。


「我々は、遠い過去に祖先が犯した過ちを繰り返してはならないのだ。」


その『過ち』が何であるのか。
老人は語らないし、今の自分たちが知る必要もないだろう。
彼らなりの、知恵を絞った結果なのだ。
「・・・・・寂しくないですか?」
サクラの問いに、老人はあいまいな笑みを浮かべるのみ。


『愚かな行為』をした祖先のわだちを踏むことのないように。
それは、おそらく『大人との関わり』によって、『歪められて子供に伝えられた』事に起因していたのだろう。
だから、指導的立場の者を、純粋培養で養成する道を彼らは選んだのだ――――――――――。


「・・・・・行きます。」
「それでよい、異邦の者たちよ。この国に悪しき風をもたらしてくれるな。」
「・・・・・・・・・・。」
ようやく出せた魔法陣に、皆は入る。
次元移動の風に包み込まれるその時、確かに老人の声が聞こえたような、そんな気がした。


子供には子供の世界がある。
大人が、ただそれを見守っているだけであったならば、あるいは――――――――――。


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67276HITをゲットしてくださった、沙矢様に捧げるショートショートです。

リク内容は、『住民が、全員子供の国』。
これは色々なパターンが考えられるんですが、今回は『社会システムの具現化』というシチュにしました。
似たようなパターンとしては、『地球へ・・・。』がそうでしょうか。(あちらは宇宙船&惑星レベルですが。<壮大さで比にならない)
でも、『記憶』を操作されなければ、親子の情愛とでもいうものを無視した、あの社会システムは成立し得ない。
しかし、親子の情愛と、幼少時の記憶は、本来そのようなもので左右されてはならないものだと思うのですが。
『地球へ・・・。』で、記憶を操作されていた皆が、遊園地を思い出したように。
三つ子の魂百までとも言いますが、幼少時の記憶というものは良いにつけ悪いにつけ、深く刻み込まれているものです。
子供たちだけという特殊な社会の中で育つのもまたよいかもしれませんが、大人や他の者との関わりを持たないことは『不幸』ではないのでしょうか。
他人との関係が希薄になっている現在、逆に『心の歪み』というものは、こんな所からも発生しているのではないかと思うのです。

原作パラレル(流れは原作に沿った、原作には出ていない国)なので、さらりと流す形になりました。
タイトルは『子供の国』のドイツ語訳です。


沙矢様、ありがとうございました!!(返品・クレーム受付中!!)

           作者・シュウ   2007.07.18UP

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