<67776HIT記念 キリ番リクエスト小説>

 「 Il paese del bambino 」




それは、とても、『楽しい』国。
「こんにちは!」
「こんにちは、お兄ちゃんたち!」
「こんにちは、お姉ちゃんたち!」
「こんにちは!ふわふわした、お友達!」
さんざめくような声に満ち満ちて。
思わず顔が綻んだ、その時。


「――――――――――あ!!」


子供たちの誰かが叫んだ声が、最後に聞こえた、『声』。
「消えちゃうよ!!」
「行っちゃうよ!!」
「皆と同じだ!!」


赤い光に包まれて。
黒鋼とファイが『消えた』。
「――――――――――モコちゃん!!」
サクラの叫びにはっとして見れば。
リアンとモコナが青白い光に包まれている。
「・・・・・・・・・・。」
ほんの少し、眉を顰めて。
フイ、と腕を振り払えば。
その姿もまた、忽然と消え去った。


「行っちゃった・・・・・。」
「消えちゃった・・・・・。」
「パパ・・・・ママ・・・・。」
「皆・・・・・。」


すすり泣く声が、辺りに満ちる。
自分たちの事よりも、その子たちが心配で。
小狼とサクラは皆の肩を1人1人叩き、抱きしめた。


「信じれば、願い続ければ、きっとネガイは叶うの!!『絶対、大丈夫』!!」


―――――――――――――― * ―――――――――――――


「あんたたち、何処から来たんだ?」


問われて、辺りを見渡せば。
風景は全く異なっている。
――――――――――いや、先ほどの国と、どこか似ているのだが。
「なんか、子供たちがいっぱい居る所に居たんですけど・・・・。」
「なんだって!!」
たちまち人だかりが出来た。


「『バンビーノ・パッセ』に行ったのかい?!」
「中はどんな様子だった?!」
「子供たちは,無事だったかい?!」
「あぁ、私の可愛い坊やは元気にしていた?!」
「俺の大事な娘は怪我してなかったかい?!」


わっ!と詰め寄られ、口々に問い詰められる。
「え・・・えーと・・・・たぶん・・・・皆元気だと・・・・。」
「本当かい?!」
「・・・良かった!!!」
手を取り合い、肩を抱き合い、涙ぐむ大人たち。
「一体全体、何だってんだ・・・・・・。」
完全にワケが解らん、といった風情の忍者に、白き魔術師ウィザードは笑いを零す。
「大丈夫、オレも解ってないから!!」
それがフォローに全くなっていないことを、白き魔術師ウィザードはもっとよく認識すべきかもしれない。


************************************************


「此処はね、『バンビーノ・パッセ』という名前の遊園地だったんだ。」


周りに集まった子供たちは口々に言う。
「ある日大きな戦争が始まるって事で、皆が此処に集められたんだ。」
「パパもママも一緒だったんだよ!」
「おじいちゃんも、おばあちゃんも!」
「でも・・・・『赤い光』に包まれて、『大人』は皆消えちゃったんだ。」
「大人が?皆?」
「うん。」
ここに居る最年長は18歳の少年だった。
「弟や皆をまとめなきゃいけないから、大変だよ。」
そういって苦笑いを零す。
どうやら年長としかさの子達が中心になって、皆を纏め上げているらしい。
「ケンカしないように、とか、食べ物を取り合ったりしないように、とか。」
今まで親を始め『大人』がやっていたことの大変さを、体験して初めて認識したとでもいう風に。
『大きい子供たち』は頷きあった。
「大人って、本当に大変なんだね。」
「よく解ったよ。」
「ママの言うこと、これからはもう少し聞くようにしなきゃね。」
その事に気づいただけでも。
この事態はよい結果を生んでいるのではないのだろうか?


************************************************


「戦争のせいさ。」
「戦争を隣の国が仕掛けてきたんだ。」
「司祭様が、皆を護ってくださったのさ。」
「司祭様?」
どうやらその『司祭』とやらがキーパーソンのような気がする。
「どうやって皆を護ったんだ?」
黒き疾風かぜの問いに、皆は口々に語りだす。
「司祭様は、家宝の『羽』をお使いになったって話だよ。」
「何でも願いを叶える代わりに、その者は命を吸い取られてしまうんだそうだ。」
「司祭様は殊の外『子供』がお好きだったからねえ。」
遊園地、『バンビーノ・パッセ』に、皆集まれと指示されて。
集まったら、大人は皆『赤い光』に包まれて、遊園地の『外』に弾き出された。
「どんなにしても、入れないんだ。」
怒って司祭に文句を付けに行った皆が見たのは。


「光り輝く『羽』と、床に司祭様の『服』が落ちているだけだった。」


司祭の存在そのものが消えたことは、想像に難くない。
『子供』を護ろうとして。
『大人』までは護りきれなかったのか――――――――――いや。


「大人には、やらなきゃいけねぇ事があるってわけだな。」


黒鋼の言葉は、的を得ていたのだろう。
事実、大人たちは戦争回避あるいは終結に奔走した。


戦争が終われば。
戦争が回避されれば。


きっと子供たちに会える、と。
「で?」
促されて。
大人たちは誇らしげに言った。


「もちろん!戦争は回避されたよ!!今日が平和条約の締結の日なんだ!!」


―――――――――――――― * ―――――――――――――


「果たしてあの司祭は解っていてやったのかな。」
「解ってなかったと思う・・・・。」
「まあそんな所だろう。」


遊園地の中心、シンボルタワーの最上階で。
光に包まれた、サクラの羽。
「でもねえ、リアン、モコナ、どうしても解らない。」
「何が。」
「どうしてモコナたちは皆と別々なの?」


遊園地に残された『子供』。
遊園地の外に弾き出された『大人』。


小狼とサクラは『子供』の側に。
黒鋼とファイは『大人』の側に。
それは十分理解できるのだが。
では何故、『自分たち』は?
「・・・・『大人』でも『子供』でもない、ということなのだろうな。」
「どうして?だってリアンは・・・・・。」
とてもとても、『長い時間』を。
「・・・まあ、色々、な・・・・。」
その言葉を濁した、奥の意味を。
真実を。
モコナが、そして皆が知るのはさほど遠くない未来、諏倭の地でのことになるのだが。
「・・・じゃあ、モコナは、どうして?」
モコナとて。
『生み出された』のは結構昔だ。
あの時には。
クロウも、ユエも、ケルベロスも居た――――――――――。
「ソエルもラーグも、『眠って』いただろう。」
「あ・・・うん。」
来たるべき『時』を迎えるために。
自分達そっくりの飴細工の入っていたガラスケースの中で、眠っていた――――――――――。
長い、長い、時間。
「のべにしたら、長い時間。だが、実際起きていたのは短い時間。だから『羽』も迷ったのだろう。」
『解らない』から、『別』にした。
「そのおかげで『動ける』わけだが。」
一々遊園地全体にかけられたシールドを突破するのも面倒だ、と。
自分たちが『中』に居ることに感謝すべきだな、と言った。
「でもリアン、危険だよ?」
「だからと言って手をこまねいて見ているわけにもいくまい。」
「うん・・・・・。」


戦争が終結すれば、術は解除される。
しかしその時、遊園地にかけられたシールドが一気に拡散、蒸発する。
そのエネルギーは、残念ながら非常に大きなもので、遊園地の中も外も、甚大な被害を免れることは出来ない。
「『羽』を護り、『遊園地と中の子供たち』を護り、『遊園地の外の大人たち』を護る・・・・か。」
それだけの巨大ともいえるエネルギーを一体どうしようというのか。
モコナにも、それは解らない。


「そろそろだな。」


術が、解除される。
モコナも思わず身構えた。


************************************************


条約の調印書に最後のサインが書き終わった瞬間。
『羽』は摩訶不思議な光を放った。
その光は遊園地全体を包み込み。
弾けるように一気に辺りを白く染め上げた。
それと同時に、国全体を覆うように巨大な魔法陣が出現した。
凄まじい風が吹き荒れて。
光は風に連れ去られ、『羽』のあった遊園地のシンボルタワーの最上階に向かって収束していく。
「――――――――――眩しい!!」
モコナは思わず目を覆った。
集結してきた光は、光り輝く光球となって眩い光を放っている。
「・・・まあ、『平和の光』とでもいった所かな。」
明らかに疲労の色の濃さをにじませて、紡がれた言葉。
自分に呼びかけるモコナの声も、そしておそらくは駆けつけてきたであろう小狼とサクラの声も。
眠りの淵の岸に在っては、遙か遠くから聞こえているかのようだった。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


次元移動をリードしてくれるリアンが眠ってしまっているのでは、移動は出来ない。
羽が戻ったサクラもまた、眠っている。
今なお再会の歓喜の声に満ち溢れた遊園地に程近い森の中。
今は使われていないような山小屋に皆はそっと逗留していた。


「あなた方のおかげだよ!!」


自分たちの、正確にはリアンの尽力のお蔭で術の解除は何の影響も与える事無く納められたのだと人々は知った。
やれ歓迎だ、パーティーだと。
ようようにして辞して――――――――――正確には『逃げ出して』きたのだ。


「この国の人が戦争を収めたから為されたことなんですから。」
「祝い事はこの国の者たちだけでやったらいい。俺たちは関係ねぇ。」
「そうだよねー。結局なーんにもしなかったもんねえ〜。」
「そんな事ないよ、皆ちゃんと働いたし♪」


実際。
ふわり、と現れた『羽根』が中継して言ったことには。


「この羽根でバランスをとる。『絶対に手を放すな』。」


それがとても『大変なこと』だったのは。
「何にも説明しやがらねぇで・・・・・。」
黒鋼が怒るのも無理はない。


拡散するエネルギーを、遊園地の『中』と『外』で支え、纏め上げたのだ。
その凄まじいまでの衝撃。
手を放しかけるのをどれほど必死になって押さえたか。
小狼も。
サクラも。
黒鋼も。
ファイも。
それぞれが支えきったからこそ、成し得た事。


「・・・つーか、まだ目ぇ覚めねぇのか、女組は。」


その声がカケラほども責めてはいないのを。
感じ取って小狼とファイは、顔を見合わせて、くすり、と笑った。


「『お父さん』だね。」
「・・・ですね。」


こそりと囁かれた会話を、シンボルタワーの最上階からあふれ出る光だけが、確かに聞いて運んでいった。



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「67776HIT」をゲットしてくださった、優蓮様に捧げるショートショートです。

リク内容は、『子供しか居ない国』。
その原因として考えられるものにはいくつかのパターンがあります。
基本的に「子供とは、『護られるもの』」という考えなモノで、こういうシチュになりました。
しかしあれですな、テーブルを組めばいいんですが、携帯からご覧の方には恐ろしいことになるのではないかと思ってやめましたが。
こういう風に2つ以上の視点から見て話が展開する場合、ペーパー使用なら2段組あるいは3段組などで同時に書くんですね〜〜。
ちょっと読みにくくなりますが、同じ時間にどう展開しているかの対比がしやすくなります。
以前のジャンルではよく使っていた手法ですが、Web小説ではどうなのかな〜〜〜。
画面をスクロールさせたりする必要が出てくるので、今の所は導入していません。
ぱっと見て同じ画面(同じ紙面)に見えることが大事なわけです。
どっちにしても、どれかの視点で空いたスペースにはカットを入れたりしなきゃならないので『出来ない』レベルの話です。(苦笑)

タイトルは『子供の国』のイタリア語訳です。バンビーノ!!


優蓮様、ありがとうございました!(・・・でも返品受付中・・・・。)

           作者・シュウ   2007.07.18UP

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