<68986HIT記念 キリ番リクエスト小説>

  「 煙 管キセル の 煙 」




川面を渡る風は、生ぬるい。
夏の日差しに熱せられた空気は、日が落ちたとて、そうそう冷めてくれるものでもない。
それでも気化熱は僅かながらも気温を下げるのだろうか。
川べりには涼を求める人々が多く集っていた。


その手に、あかりを掲げて。


老若男女、誰しもそれを持っている。
そして川岸からそっと浮かべて、流れに押しやるのだ。


精霊流し。


――――――――――魂を送る祭。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


皆が皆、あかりを持っているのに、『彼』1人、違っていた。
その手には何も持たず。
1人座り込み、人々を眺めている。
その口元に、長い煙管キセルを咥えている。
ふう、と煙を吐いた。


「だれぞ、尋ね人か?」


問いかけられるとは思っていなかったのだろう。
驚いた表情で見遣る『彼』は、手にした煙管キセルを落としかけて少し慌てたように持ち直した。
「今・・何と?」
「尋ね人がおありか。」
まじまじと見る。
『自分』を見とめた人を。


「・・・・?」


アヤカシの気配は無い。
人間であろう事は間違いあるまい。
『自分』を見る、ということはそれなりのチカラを持っているはずなのだが――――――――――。
何も。
そう、何も感じられない。
何の、チカラも。


「もしお差し支えなくば・・・お名前を聞かせていただきたい。私は、百目鬼遙と申します。」
「私の名は、リアン。・・・無論心に留めておく必要もない。」
「・・・・・・・・・?」
その言葉に首を傾げる。
しかし、それ以上の言葉はなく。
ただ静かに人の波を、そして川面に立つ漣を見つめるのみだった。


―――――――――――――― * ―――――――――――――


「探し人は見つかったか。」
「いえ・・・もとより『此処で会えたら』とだけ思っていたもので。」
「相手は、『見えぬ』のか。」
「・・・・はい。」
コン、と。
煙管キセルを叩き、火種を取り出す。
ぼう、とした青い火を放つ火種に、微かに目を伏せた。


「こなたは、『流れて』行かぬのか。」


目を閉じて。
静かに頷く。
「私には、まだやらねばならぬことがあります。・・・・夢の、中で。」
「護るか、『護りたき者たち』を。」
「はい。」
「そうか。」
見上げた空に、流れ星がつい、と流れる。


「信じ続ければ、願い続ければ、いつかきっとネガイは叶う。」


こくり、と頷く。
「そうですね。それを信じましょう。・・・未来、を。」
「そうだな。」
立ち上がり、静かに歩み始める。
その足が、止まった。


「・・・・・・・・・・。」


視線の先には、1人の少年。
静かに灯篭を川面に浮かべている。
少しずつ流れ始めたそのあかりに向かって、小さな手を合わせて静かに祈っていた。


「願い続ければ、な。」
「はい。」


これでしばらくは安心しておれます、と。
天河を見上げるその顔は、どこまでも優しげな風を纏っていた。



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「68986HIT」をゲットしてくださったナタク様に捧げるショートショートです。

今日は盆の送り。彼岸に魂が帰る日です。
リクの『百目鬼のお祖父さんを出してください』というメールを見たとき、浮かんだのがこれです。
いつも私はモノを書く時、BGMは流さないのですが、今回に限り聞いた曲。
お約束の(笑)『精霊流し』です。
実はまっさん(=さだまさし氏の事)結構好きです。σ(^^)

基本的に『時の翼』は原作の東京篇から分岐していますので、遙さんは殆ど関わってきてはいません。
だからこの2人の邂逅もこの1回きり。
最初は侑子さんがらみにしようかと思いましたが、そこまで関わりが深くないのでカットしました。
でも遙さん、好きですわ〜〜〜♪
今回煙管キセルを取り落としかけますが、そんなお茶目な所があってもいいかと思って・・・・。
百目鬼(静クンの方)よりは砕けていらっしゃるかと。<遙さん

ナタク様、ありがとうございました!

           作者・シュウ   2007.08.16UP

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