いつもなら。
「ただでさえ長いのはよく解かっていたけど・・・・。」
でも。
「こうやって見ると、本当に『長い』んですね・・・・『蒼氷』は・・・・・。」
まさか身長をも超えていようとは。
「遣えねぇな・・・・・・。」
誰よりも落胆した気配を滲ませて。
黒き疾風は、大きな大きなため息をついた。
そう。
それは、『見た目』には、全くそぐわないほどの。
―――――――――――――― * ―――――――――――――
今まで、自分たちが『別のもの』に変化する、という経験をしてこなかったわけではない。
だが、今回は実際問題としてかなり困ったことになってしまった。
全員が、『子供』になってしまった。
それも、かなり年齢が低い。
サクラと小狼は、10歳にもなってはいないだろう。
7〜8歳ぐらいだろうか。
黒鋼も同じような感じだ。
ファイはそれよりは若干上のようだが、それでも11、2歳ぐらいが限度といった所。
「皆、とっても可愛いのー♪」
モコナは喜んで飛び回るが、皆としてはあまり嬉しくはない。
まず、自分たちで自分の身が護りきれない。
戦闘能力が大きく後退している。
いや、後退している、というよりは、『遣えなくなっている』と言った方が正しいだろう。
足での蹴りが届くつもり。
剣を振るうことが出来るつもり。
だが実際は。
届かない。
振るえない。
ファイ自身は、『この見かけの年齢相当なら、魔法そのものも遣えない』といった。
「どうせ遣わねぇだろう。」
「まあそうなんだけどー。」
『遣わない』のと、『遣えない』のとでは、天と地ほどの差がある。
「――――――――――困った、ね。」
ファイの呟きは、いわば、決定打。
思わずサクラの目に涙が浮かぶ。
どうすればいい?
何をすればいい?
――――――――――誰か。
誰か教えて――――――――――。
誰も。
教えてなんかくれない。
この国の人は、皆――――――――――『子供』。
迫りくる、100億光年の、孤独。
何者からも見捨てられた、『lost children』。
でも。
「『明けない夜』は無ぇ。」
ぼそりと、紡がれた言葉。
幼い少年の言葉にしては、あまりにも『不似合い』ではあるけれど。
それでも。
『彼』が言うと、何故かしっくりくるのは。
「やるべき事は、いつも『1つ』です。」
小狼の言葉に、皆も頷く。
それが、『子供』であったからこそ為しえた事なのかもしれないが。
皆は、『声を揃え』て、同じ言葉を口にした。
「自分に出来ることを。」
「自分にしか出来ないことを。」
「自分がやらなければならないことを。」
「信じれば、必ずネガイは叶う。」
「絶対、大丈夫!!!」
―――――――――――――― * ―――――――――――――
助けて。
それは、ネガイ。
この国に、ひときわ大きく聳え立つ、『世界樹』。
その大樹は今、『敵』の侵攻にさらされていた。
伸びた根は切られ、建物が建つ。
どこかで水を汲み上げるせいで、深く伸ばした根も届かぬほど、地下水脈が下がっていく。
何処からか侵入した虫や小動物が内部を食い荒らす。
大気の汚れが葉を別の色に変色させていく。
長い、長い、時間。
この国を『護って』きた、世界樹。
声無き悲鳴を、『羽』は聞いた。
『アナタノネガイヲカナエマショウ。』
科学や文明の進化がいけないとは言えない。
ただ、人々は、『世界樹』のことを忘れてしまった。
子供の頃は、あれほどまでに、『寄りかかって』いたのに。
その幹に登り。
その枝にぶら下がり。
その葉陰で憩い。
その実を食べて渇きを癒した。
それなのに。
助けて。
忘れないで。
思い出して。
――――――――――ワタシのことを。
『デハ、コノ国ノ者ヲミナ、子供ニ戻ソウ。』
思い出すために。
この優しい樹の事を。
『羽』は、光り輝いた。
―――――――――――――― * ―――――――――――――
「少しは、よくなるかな。」
「どうかな。『喉元過ぎれば熱さ忘れる』とも言うしな。」
「もうちょっと前向きな思考できないのー?」
「俺は客観的に見ただけだ。」
そう。
この国の人たちは、『何処まで』理解できただろうか?
何をしているの?
この樹に水をあげてるの。
水を?
ええ、この樹の根はもう、水脈に届かないの。
どうして?
地下水を汲み上げすぎて、水脈が変わってしまったの。
根っこも切られちゃってるんだよね〜〜。
建物を建てるために、『命の糸』を切っているんです。
人間って、『傲慢な』生き物だよな。
小さな声。
だが、大きな声。
旅人の行動に、人々は大樹を見上げた。
そして。
かすかに思い出す。
昔のこと。
子供の頃のこと。
自分がどんな風にこの樹と関わってきたか。
その『世界樹』が――――――――――。
泣いている。
「これを、姫に返してもらってもいいですか?」
小狼の問いかけに、世界樹はさやさやと葉ずれの音を応えとした。
今は元の姿に――――――――――年相応の姿に戻った、皆は。
羽が戻り、眠りにつく前に。
サクラは、世界樹の『夢』を見た。
青々とした葉が茂り。
根元で老人がもたれて眠り。
木陰で家族連れがシートを広げて食事を楽しみ。
子供たちが枝を伝ってよじ登る。
ネガイツヅケタラ、イツノヒカ、ソレハカナウダロウカ?
(きっと、ネガイは叶います。・・・・願い続けたなら。)
サクラの寝顔が『優しい』と、小狼は確かに思った。

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