――――――――――会いたかった。
如何なる犠牲を払ってでも、取り戻したいと願ったから。
――――――――――会いたかった。
張り飛ばしてでも、『心』を取り戻し、光の世界に連れ戻したかったから。
――――――――――会いたかった。
自分を由来とするが故に、決着をつけるのが運命と信じているから。
――――――――――会いたかった。
自分から奪ったチカラの大きさに、自滅するのを救いたかったから。
でも。
ネガイが叶わなかったら。
自分たちの力が足りなかったら。
だから。
「・・・・・・・・・・会いたくなかった・・・・・・。」
今、ここで。
―――――――――――――― * ―――――――――――――
傷つき果てた、仲間たち。
身体も、心も。
ようやくたどり着いたこの国で。
むさぼるように安らぎを求めた。
無音の空間。
何者の干渉も無い空間。
ただ、ただ。
ひたすらに眠った。
物も言わずに食べた。
来たるべき時に備えて。
せめて己が身を回復させようと。
しかし、時は。
残酷なまでに、次のステージを用意していた。
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嫌な予感はしていた。
「この国・・・・『羽』がある・・・。」
モコナのセンサーに引っかかった『羽』の波動。
今現在のこの状態で。
それを得ることはかなり難しい。
「・・・・俺が、何とか。」
一番『動ける』状態の『小狼』が名乗り出た。
「皆、休んでくれ。『羽』は俺と、モコナとで探す。」
「・・・・すまん・・・・。」
かろうじて返された答え。
その声の弱さを意外と思うのか。
いや、そんな事は、微塵も。
彼の負うた傷の深さ。
そして『返ってこなかった返事』。
その者の、負うた『心』の傷の深さ。
皆が、皆。
これでもかと言うほどのモノを失った。
だが、それを。
「後悔は、しない。」
「後悔なんざ、しねぇよ。自分が選んだ『道』だ。」
「苦しいけど、モコナ、がんばって耐えるよ。」
――――――――――お前は?
「・・・進まなきゃ・・・・前に・・・・。」
金糸はほんの少し色が薄くなったようにも見えるが。
その蒼い瞳の光は、ますます凄絶さを醸し出す。
「そうでなきゃ、顔向けできない・・・・。」
残してきた者に。
皆もまた、頷いた。
小さく。
しかし、力強く。
―――――――――――――― * ―――――――――――――
羽が、あった。
「思ったより簡単だったな。」
「今は1枚でも多くの羽をさくらの身体に戻さないと。」
魂が戻るまで、その身体を維持しなければ。
『小狼』が羽に手を伸ばした、その時!!
「――――――――――・・・・!!」
凄まじい殺気が頬を打つ。
横っ飛びに飛び退いた『小狼』の残像を炎が切り裂いた。
「炎・・・・・・。」
「・・・・・来たか。」
黒鋼とファイは同時に呟いた。
それは、安堵であり。
そして絶望でもあった。
今の2人に。
敵う術があるのか?
――――――――――蒼き右目に異様な光を宿す少年に対して。
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「お前の相手は――――――――――俺だ。」
『小狼』が1歩前に出る。
何の感情も見せぬ顔で。
小狼はぴたり、と緋炎の切っ先を『小狼』に向けた。
それは。
宣戦布告の受容。
一瞬の間を置いて。
同じ顔、同じ姿の2人が交錯した。
ぶつかり合う、チカラとチカラ。
一瞬で練り上げられたチカラは、魔術師の魔力によって刃となって襲い掛かる。
『小狼』は魔法剣を出し、念を込めて叩きつける。
「雷帝招来!!」
凄まじいまでの雷撃が空を走る。
迎撃し、そして反撃する。
あるいは魔法で。
あるいはその得意とする蹴り技で。
そして――――――――――かつて教えを乞うた剣術で。
風が唸り、世界が軋む。
色々なものが飛び交い、鋭利な衝撃となって身体を切り刻む。
小狼も。
『小狼』も。
こめかみに一筋、赤い血が流れ落ちた。
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瞬間的に逃れた先の『壁』が。
『動く』なんて想像できるだろうか。
それは気配を完全にすり替えていて。
はっと気付けば、小狼は背後から羽交い絞めにされていた。
「・・・・・・・・・・。」
何の感情も見せぬ目がゆっくりと振り向き、己を縛める腕の持ち主を見遣る。
「捕まえた。・・もう放さないよ。」
蒼と蒼の瞳が交差する視線に炎が走るかのよう。
一言も口に上せず。
小狼は魔法を発動させた。
「ぐ・・・・・っ!!」
衝撃に顔が歪む。
至近距離での発動に、さすがのファイも、耐性云々の問題ではなかったようだ。
その秀麗な眉を顰めながらも、その腕は小狼を捕えて放さない。
「我が唯一の姫君のネガイ、叶えさせてもらうよ!!」
私は、小狼君の心を取り戻したい。
それを願った人は、今は。
その想いの深さ。
無と帰するには、あまりにも『重い』想い。
小狼は。
無表情のまま、再び魔法を紡いだ――――――――――。
「――――――――――!!」
衝撃は、横から。
ファイもまとめて吹っ飛ばされる形になった。
それでも小狼を放さなかったのは、褒められてもいいだろう。
「・・・・黒・・・・・。」
「ぶん殴るっつったろうが。」
拳1つで男2人をふっ飛ばすそのチカラ。
その一撃に、万感の思いを込めて。
見下ろす紅玉の瞳。
見上げる琥珀の瞳。
よろよろと。
立ち上がる。
一瞬でファイを振りほどき。
緋炎の炎が黒鋼を急襲した。
「風華招来!!」
風は炎を打ち砕き、その熱を散らせた。
「決着は・・・・・俺がつける!!」
『小狼』の叫びが。
魔法剣に青白い炎を纏わりつかせた。
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深々と。
その身体を貫く魔法剣。
ポタリ、ポタリ。
滴り落ちる、赤い血。
「・・・・小狼君・・・・。」
それは。
『どちら』に向かって紡がれた言葉なのか。
写し身か。
実像か。
それとも両方か。
「さくらを・・・・・・頼む・・・・・・。」
その目から零れる。涙。
『小狼』の涙が、小狼の目を、そして頬を濡らした。
愛しい人は、大切な人は。
自分には届かない、世界に。
そこに行けるのは。
「・・・俺じゃない・・・お前だ・・・・・。」
その身体が崩れ落ちる一瞬前。
皆は確かに見た。
小狼が――――――――――頷くのを。

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