「『無能』な奴は『要らねぇ』ってわけか。」
「でも、人は何処か何がしかの優れたものを持っているはずです。」
「ジャンル選択は自由なんだから、とにかく『突破』すればいいんじゃないー?」
「そうですよね!!『絶対大丈夫』です!!」
「・・・・あの自信は、一体何処から来るのかな?」
こそりと問えば。
さすがの白い魔法生物も小首をかしげた。
「モコナ、わかんなーい・・・・。」
「ところで、ソエルも受けなければいけないのかな?」
「うん、そうみたいなのー。」
「・・・・侑子に教えて貰ったことを、よく思い出すのだな。」
モコナの耳には届かなかった。
小さく、小さく紡がれた、独り言。
「・・・・クロウに教わったこともな・・・・・・・。」
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問答無用。
絶対命令。
「入国条件は、『試験』に合格することです。」
係官の言葉が悪魔の嘲笑に聞こえたとて何ら不思議はあるまい。
「『羽』の気配、この国の中からだよ。」
黒鋼は思わず唸った。
「おい。・・・・存在を偽って入り込めねぇのか?」
「黒鋼、ズルする気なのー!」
「うるせぇ!!」
「ま、たまには良かろうさ。」
己の力量を量るのもまた必要だ、と。
テストの内容も様々だ。
要は『合格』すればいいだけのこと。
「よし、決――――――めた!!」
それぞれに選んだ『科目』は?
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カンニングなどの対策の為か、テストは全て1人ずつ行われる。
サクラは、『美味しい紅茶の淹れ方テスト』を選んだ。
桜都国で、そして折に触れ。
ファイやモコナに教わってきた。
(絶対、大丈夫。)
自分で自分に言い聞かせる。
教わったとおりにすれば。
(間違いはないんだから。)
まず、イメージトレーニングをし、そして本番に臨んだ。
ファイが教えてくれた、その手順を正確に辿る。
温めたティーカップに最後のベストドロップまで注ぎ込んで、サクラはほっとため息を漏らした。
「どうぞ。」
審査員に勧める。
審査員たち(3人居た)は香りを嗅ぎ、色を確かめ、口に含んで味を見る。
それぞれに何やら書き込んで。
壁にあったポストの受け入れ口のようなところに差し込んだ。
「?」
ピッと音がして。
同じく1枚の紙がぺっ、と出てきた。
審査員たちはそれに目を走らせ、一様に頷きあった。
「おめでとう、合格です。」
サクラは満面の笑顔で、『ありがとうございます!!』と言って頭を下げた。
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小狼が選んだのは、『演舞』だった。
足技などを使った武術の形。
小狼が知る事はなかったが、中国の拳法にそれは酷似していた。
一通りの形を調べて真似をし、身体に叩き込む。
「・・・よし。」
大きく深呼吸して、本番に臨む。
一手一手を丁寧に。
元々真摯な、真面目な性格だ。
型に綺麗にはまった動きは、お手本を見ているかのよう。
手の指、足の先にまで神経を行き渡らせて。
そつなく全部の形を披露する。
演舞が終わった時、体中から汗が一気に噴出してきた。
(どうだっただろう・・・?)
審査員らしき老人たち(しかし十分に鍛え上げられた身体は服の上からでも見て取れた)が、ひそひそと相談している。
一番右端に居た老人が、さっと片手を上げた。
ジャア――――――――――・・・ンン・・・・・・・。
銅鑼が打ち鳴らされた。
「?!」
「お若いの。合格じゃ。」
ニッコリと破顔して真ん中の老人が言った。
「・・・!ありがとうございます!!」
これで、2人。
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ファイは『美味しいお菓子を作るテスト』に臨んだ。
何がいいか考えて。
(ここはやっぱり。)
いつになく真剣な面持ちで作業に没頭する。
(最高のものを作って見せるよ。)
生クリームを泡立てて、皿の上に切り分けたケーキにデコレーションする。
「・・・よし!!」
これこそ、次元の魔女(の所に居るバイト君の)直伝、『フォンダンショコラ』。
今までで最高の出来上がりだという自負がある。
試食をした審査員が、思わず唸った。
(手ごたえ十分!!)
もちろん、文句なしに『合格』だった。
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モコナは、『演芸コンテスト』に臨んだ。
審査員の前で、次々に『独りボケツッコミ』をかます。
『饅頭怖い』も披露した。
『超!吸引力(小)』で審査員のカツラがずれて冷や汗をかいたりもして。
とにかく必死になってあれやこれやと演じて見せた。
「最後に『七色の声』をやるの!!」
演じている途中で聞いた審査員の声色を、全て真似してみせた。
口調も、声音も。
恐ろしいまでに、そっくり。
審査員たちは、思わず腰を浮かせた。
『自分』が、『もう1人』居る。
「・・合格です・・・!」
モコナは嬉しそうにピョンピョン跳ね回った。
「ありがとうなのー!!」
しかし。
審査員たちは最後まで気付くことはなかった。
合格だ、と言ったのは、モコナの声真似であったことを。
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当然、自分が得手としているもので試験を受ければいい。
だが、予想に反して黒鋼が選んだのは。
「始め!!」
合図と共に、机の上の紙に向かってペンを走らせた。
次々と書き込んでいく。
誰も見た事がないような、真剣な面持ちで。
静寂の中、紙を走るペン先の音だけがやけに大きく響き渡る。
カリカリ。
カリカリ。
「やめ!!」
声と共にほう、とため息1つ吐き出した。
自分でも手ごたえは感じてはいるが、それも皆審査員の判断しだい。
心静かに、判定を待つ。
「合格です。おめでとう。満点ですよ。」
この時ほど、諏倭で自分に教えてくれた者たちに感謝したことはない。
黒鋼が選んだのは。
『漢字の書き取りテスト』だった。
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そんなこんなで試験を無事に突破して。
入国を許可された皆は、いとも簡単に『羽』を手に入れた。
といっても。
「『全員』居なければ無理でしたね。」
『羽』の周りを囲むシールドを解除するには、等間隔に『人間』などの生命体が存在していなければならなかった。
そのポイントは、6つ。
「『羽根』ではちょっとカバーしきれなかったな。」
それでこそ、試験を突破した甲斐があったというものだ。
次の世界に赴くべく、魔法陣が展開した時。
小狼はそっと尋ねた。
「リアンさんは、何の試験を受けたんですか?」
微かに笑った口元から紡がれた『答』に、小狼は背筋に冷たいものが走るのを覚えた。
聞いてはいけないものを聞いてしまった、後悔と共に。
「魔界から魔物を呼び出して使役するというテストだったから、『最上級レベル』の魔物を召還した。」
試験会場がどうなったのか。
小狼は想像するのを、全力で、やめた。











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