ゴロゴロと近くで雷の音がする。
外はしのつく雨。
雷鳴が轟く度に、ふっと明かりも弱くなる。
「こんな日はやっぱり『怪談』――――――っ!!」
その台詞は前にも聞いたぞ、という忍者のツッコミ。
ムード満点だねぇ、という白き魔術師。
蝋燭が有ったりもするな、と時の魔女が言えば。
そこは早くも百物語の会場となる。
「・・・ある所に城でも重職にある者の屋敷があった。」
黒鋼がふと語りだした事には。
「その家には、何代か前の領主から拝領した見事な絵付きの皿が一組、家宝として伝わっていた。」
「領主様からいただいたんなら、そりゃあ家宝だねえ?」
「ま、めったにない誉れな事だったんだろうな。・・・・まあ正月とかの特別な時だけ使われていたそうだ。」
雷鳴が遠くで轟く。
「その皿は十枚で一組。大切に木箱に入れられていた。」
さぞ大事にされていた事だろう。
「あるとき上客があり、その皿が使われる事になった。・・・・その時に。」
ゴロゴロと。雷鳴は地を這って伝わってくる。
「その家のバカ息子が、弾みで1枚割ってしまった。」
ピカッ!と。稲妻が走った。
「息子は慌てて箱に戻して、そ知らぬ顔をした。そこへ、何も知らない女中の『お菊』がやってきた。」
「女中?」
「召使いみたいなもんだ。」
サクラの問いに簡潔に答えて。
腕組みをしたまま、黒鋼は淡々と話し続ける。
「お菊は箱を持って座敷にやってきた。主が使用前に検分するためだ。・・・・主が箱を開けたら。」
ピカッ!!
「割れちゃってる――――――っ!!」
「―――――――ひぃっ!!」
モコナの大声に、小狼とサクラは思わず飛び上がった。
「・・・・白まんじゅう・・・『何』が割れてる?」
「お煎餅。」
袋から取り出したのは、半分に割れている煎餅。
「ハイ、黒鋼にもあげる〜。」
「・・・・話の腰を折るんじゃねぇ。」
それでも口に放り込んで。咳払いを1つして、話を続けた。
「主は当然烈火のごとく怒り、その場でお菊を手討ちにした。・・・・つまり、ばっさりと斬り捨てた。」
質問を先に見越して修正する。ファイはモコナから煎餅を貰いながら苦笑した。
「・・・その夜から、怪しげな声が蔵の方から響くようになった。」
「蔵?」
「倉庫みたいなもんだ。大事な物はそこに保管する。・・・・響いてくるのは、明らかに若い女の声だった。」
ゴロゴロ、ゴロゴロ。
「主は怪しい者とて、刀を抜いて蔵に赴いた。・・そこで見たのは・・・・・。」
「1まーい、2まーい、3まーい・・・・・。」
くぐもった声。小狼とサクラは思わず手を握り合って腰を浮かせた。
「皿の数を数えているお菊の姿がそこにあった。そして9枚まで数えたら・・・・・。」
「・・・足りない・・・・・・・・。」
「といって、わっと泣き崩れた。主が声をかけたら、お菊は顔を上げて、ゆっくりと振り返った。」
「・・・・足りないの・・・・。」
「主を見上げた、その顔は、半ば崩れたような、鬼の形相をしていた。」
「めきょっ!!」
「わあぁぁ――――――っ!!」
「きゃあぁ――――――っ!!」
サクラと小狼は同時に悲鳴をあげて突っ伏した。
その肩に。
すうっと『冷たい』手が添えられた。
びくっとして、おそるおそる見上げれば。
「・・・・どうした?小狼?」
ピカッ!!!
「うわぁぁ―――――――――っ!!!!」
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コポコポと湯飲みに茶を注ぐ。
「お煎餅には熱い緑茶〜〜♪」
モコナがピョンピョン飛んでいる。
「・・まったく、『割れた』のも『数えてた』のも『煎餅』かよ。」
半ば呆れながら、それでも渡された湯飲みを受け取る。
「これ熱いよぉーお。」
「我慢する。」
「・・・・・はいー。」
それでもテーブルの上に置いたままだが。
「熱いのをゆっくり飲めば落ち着く。」
「・・・・・・はい・・・・・・・・。」
まだ心臓がバクバク言っている2人は、気もそぞろだ。
「このお煎餅、美味しーのー♪」
モコナが煎餅を配って回った。
「モコナー、足りないって言ってたのはどうするのー?」
煎餅の枚数が人数で割るには足りなかったのだ。
「んーリアンが1枚でいいって言うから、モコナと半分こにしたー♪」
モコナの手にも、煎餅が1枚。
熱い湯のみを抱え込むようにして、コク、と飲んだ。
(絶対に言えない。)
向こうでモコナと、この焼き具合がなかなか、などと評しあっている人を見ながら小狼は思った。
(雷で逆光になったりアンさんが、『幽霊』に見えただなんて、絶対に言えない・・・・!)
―――――――あの手は。
本当に『冷たかった』のだから。
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