<8888HIT記念 キリ番リクエスト小説>

         「 桜 色 の 天 弓 」



「ファイさん、『弓』を教えてください。」
いつになく真剣にサクラちゃんが言うもんだから。
「え?」
オレはいつもどおりの『作った笑顔』を一瞬忘れた。
「サクラちゃん・・・今、何て?」
「『弓』を教えて下さい。」
それはあまりにも唐突な申し出。
ましてやサクラちゃんが『弓』?
「・・・ごめん、サクラちゃん。何故なのか教えてくれる?」
理由を聞かない事には。
何故ならば。
『弓』は『命』を『奪う』道具だから。
「ファイさん、夜魔ノ国で弓矢で戦ってたんですよね?」
「あ、うん。」
「たぶん一番得意だと思うんです。」
と皆をぐるりと見渡して。
それは納得がいく。
黒ぽんは刀専門だし、小狼君は刀と蹴り技。
オレは棒術も遣ってみせたけど、他に見せたのは弓を遣う所。
だからオレにお鉢が回ったんだろうけれど。
「だからね、『サクラちゃんの理由』は何?」
「『羽』です。」
「『羽?』」
皆驚いてサクラちゃんを見た。誰も得ていない情報を、サクラちゃんが?
「『光の谷』という所に『羽』があるんだそうです。でも、そこに行くには関所があるんです。」
「『関所』?」
「そのうちの1つが、『女の子が弓を射て的に当たったら通っていい』っていう物なんです。」
「・・・・なんだそりゃ。」
黒ぽんが呆れ声で。
いや実際、オレも呆れた。
「でもそういうことなら、小僧が代わりにやったらどうなんだ?女装・・・・・。」


ずざざ―――――――――っっ!!


ものすごい音がして。
小狼君が壁に張り付いている。
その目に涙を浮かべて、首をふるふると横に振っている。
「・・・小狼君・・・・?」
「・・・そんなに嫌かよ・・・・。」
「小狼君、紗羅ノ国で女装させられたから・・・・・。」
「・・・トラウマなんだ・・・・。」
同情には値するかもしれない。黒ぽんも困った顔をしている。
「オレじゃあでかすぎるしねえ〜〜〜・・・。」
「そういう趣味あんのか。」
「無いで―――す。」
じゃあやはり。
「しょうがないね・・・・サクラちゃんに特訓しますか・・・・。」
「ハイ!お願いします!!」
2匹のワンコの大きなため息が、二つ。


*******************************


張りの弱い弓を黒たんに選んでもらって。
1週間の特訓の成果は?


2人並んで。
すう、と息を詰めて。
サクラは錦を散らした弓を。
ファイは見えない弓を。
キリリ、と引き絞る。
それはさながらに――――――。

桜の戦姫と。
氷の闘士と。

甘やかな風さえ孕む、張り詰めた空気。
絶対零度の冷気すら感じさせる、風。

対照的な二つの『気』は、満を持して放たれた。
桜色の矢は的を穿ち、氷雪の矢は見えぬ的を確かに射抜いた。
「ん、これならOKでしょ〜〜〜。」
その氷を微塵も感じさせぬ、飄々とした声。
その作為的な変化を見て取って、眉間に皺を増やした黒き疾風。
『自分』は決して見せぬ、氷の魔術師ウィザード
彼自身が『変わっていっている』事を、本人は気付いているのだろうか。
言っても聞くまい。
聞き流そうとするだろう。
解っているのかもしれないが、しかし。


張り詰めた糸は。
いつしか綻び。
そして必ず切れるのだという事を。


その蒼き瞳に何を映すのか。
氷の国の白き魔術師ウィザードは。


来たるべき。
破滅の時をこそ、知ると。



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「8888HIT」をゲットしてくださった風香様に捧げるショートショートです。

ほんわかムードで収めるつもりが、原作を意識した〆方になってしまいました。
かっこよさと、破滅の色と。
併せ持つようなキャラを意識して書いたつもりですが・・・・・。
『パラレルで〜』というご指定が原作指向になっちゃいました。
力不足でございます〜〜。(T_T)

いつの日か、これでもか!!というくらいお耽美な言葉で飾ったファイを書いてみたい・・・などと思っとります。


風香様、ありがとうございました!見えない弓に私的に萌えながら書きました(笑)

           作者・シュウ   2006.07.22UP

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