長い髪が風に揺蕩う。
広い背中が、護るように立つ。
(・・・・!おやじ!母上!)
思わず声を限りに呼びかけた。
ゆっくりと。
優しい顔が振り向く。
力強い瞳が見返してくる。
その口が。
『何か』を語る。
柔らかな唇が。
『何か』を言の葉に載せて紡ぎだす。
「――――――――?!」
声が、聞こえない。
確かに、『語って』いるのに。
(おやじ!何て言ってるんだ?!)
(母上!何をおっしゃっているんです?!)
二人とも。
少し驚いたような顔をして。
お互いに顔を見合わせている。
母上が少し悲しそうに眉根を顰められ。
親父は首を横に振って母上に微笑みかける。
まるで、慰めているかのように。
そしてもう一度、俺の方を見た二人の目は。
悲しい色を湛えていた――――――――。
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人は。
『忘れる』生き物。
どれほど深く記憶に刻んでも。
時の流れに揺蕩ううちに、何時しかそれは薄れていく。
その姿。
その顔。
その仕草。
その――――――――声。
記憶から離れていく、『想い出』。
忘れたいなどと、決して思ったりもしないのに。
それでも、忘れていく。
その面差しを。
その声を。
その――――――――存在を。
「『忘れる』事は、『明日への希望』ですわ。」
知世姫が静かに語る。
「人は『忘れる』事によって、新たな一歩を踏み出す余地を作り出すのです。」
では、俺は。
『新たな一歩』を踏み出せたのだろうか。
過去に囚われ。
『強くなる』事のみに拘泥し。
何時しかその本質を忘れ果てた、この俺が。
何時終わるとも知れぬ、旅の空の下。
傍らに眠る、砂漠の姫と、護り手の少年。
少し離れて、大地を抱いて眠る氷の魔術師。
俺達の旅の為に、近しい者と離れて在る白い妖精。
『次元の魔女』が言う所の『必然の出会い』が『今』であるならば。
俺が向かうべき所は、何処だろう?
そしてもし、叶うならば。
取り戻したい。
記憶の中に。
――――――――離れゆく、大切な人を。
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