<一日を想う10のお題  〜サクラ篇〜>

  「 会 い た い 午 後 」



午前中、雪兎さんの指導を受けた。
「いいですか? 魔力というものは・・・・こうやって・・・・・。」
王宮の地下、水辺で受ける指導。
私の魔力で水面が揺れる。
荒々しい波を立てたり、静かな波紋を描いたり、とそれはその日によってさまざま。
「今はまだ安定していない状態です。よく遣えるようになると、波紋も変わってきますよ。」
雪兎さんが魔力を遣うとき、水面は本当に静かできれいな波紋を描く。
「私もそんな風に出来る?」
「出来ますよ、大丈夫。」
雪兎さんが太鼓判を押してくれる。

少しずつ、少しずつ。

私は、変わる。
私がもっと魔力を上手に遣えるようになったら、神官候補としても有力だ、と雪兎さんは言った。
「それには勿論、次なる王が決まっていることが肝要ではありますが。」
途端に苦虫噛み潰した顔になった、兄様。
「それって・・・・・・・・。」
遮って、『そんなのいつの話だ!』とか言って雪兎さんに食って掛かっている。
「勿論『王』が『神官』を兼ねる事も問題ありませんよ。・・・先王のように、ね。」
お父様。
お父様は、とても高い魔力を持っていらっしゃったって。
色々な事、出来たって。

「私・・・・知らない。」

記憶の中のお父様は、いつも優しい微笑を浮かべていらっしゃった。
私と視線の高さを合わせるように、膝をついて、肩に手をおいて。
でも、それは『お父様』としての姿。
『王』として。
『神官』として。
そういう存在であった記憶が、私には無い。

「兄様は知っているの?」
「あぁ、少しなら。」

私の知らないお父様を知る、兄様。
羨ましい。

「会いたい・・・・・。」

『お父様』にではなく、『王』に、『神官』に。
私の知らない『姿』に。
「会えますよ。」
「雪兎さん?」
「姫が、もっともっと修行して、先王に近い存在になったなら。」

修行して。
もし会えたなら。
私は、聞きたい。
尋ねたい。

私は、そしてお父様、貴方は。

一体『誰』ですか――――――――――?

サクラ姫が自分を写し身だと知ったのは、東京で羽が戻ってからでした。
あの遺跡での事件の前の晩、サクラ姫はトランス状態に陥っています。
その時に見た、色々な光景。
自らの存在に疑問を微かに持った、と考えています。
当時すでに雪兎神官に付いて魔法指導を受けていたと本人が言っています。
全ての謎を解く鍵は父王にある、とおぼろげにせよ、感じていたのではないのかな、と。
父王たるクロウさんの死因については作品中では明示されていません。
その辺りがサクラ姫に伏せられているのであれば、疑問を感じる余地はあるのではないでしょうか。

勿論この時点で自分が写し身であるとは知らないわけですので、その記憶を封印していたのは・・・・。
やっぱりクロウさんかな・・・?
そうでなければ、『記憶の羽が戻って写し身であると知る』事はできないはずなのです。
元々記憶として『存在していない』のであれば、『戻る』事も無いのですから・・・・。

『会いたい』のは、昔も今も小狼だとは思うのですが(笑)
あえてここは父王・クロウさんにしてみました。


           作者・シュウ   2008.11.17UP

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