星はいつも、空にあるはずなのに。
満開の桜に咽ぶかのように、夜の闇はどこか色づいている。
つまり、明るい。
「星が・・・・見えないんです。」
砂漠の国、故郷の夜空のようには。
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何処の国へ行っても、サクラは夜空を見上げる。
「星が、見たいんです。」
夜空一面を埋め尽くす星々の瞬き。
思い出した記憶の中にある、その煌きがどこか怖かった。
これは何?
この一面の光は何?
どうしてこんなに身体が、そして心が震えるの?
「それは、砂漠の国、姫の故郷である玖楼国の夜空・・・だと思います。」
少し言葉を濁して小狼は言った。
サクラに、玖楼国での小狼との記憶はない。
そしてこれからも思い出すことはない。
対価として差し出した、『関係性』。
小狼が玖楼国に居たという事をサクラは『知らない』――――――――。
「玖楼国の夜空?」
「はい。砂漠では遮る高い山や建物、そして地上の光がありません。」
「えっと・・・うん。」
「俺も・・・・見た事があります。地上に降らんばかりの星の海を。」
それは、玖楼国で見たんです―――――――――。
その一言が、言えない。
その苦しみを、サクラは知らない。
「なんだか、怖いくらいの光。」
「怖くありませんよ。俺たちを守ってくれる光です。」
「守ってくれる?」
「はい。」
あるとき訪れた国で見上げた空は、どこか玖楼国の夜空に似ていた。
一面の星。
煌きの強さは玖楼国のそれには敵わないようであったが、それでもどこかぞくぞくとする感を起こさせる。
「・・・・なんだか、吸い込まれそう・・・・・。」
星の光は慈しみの光。
星の女神は優しみの手を差し伸べる。
おやすみなさい、良い眠りを、と。
小狼の目にも、優しい光が宿って散る。
「ほら、見てください。星の光で出来た『影』を。」
暗い地上にぼんやりと、しかし確かにそこにあるのは自分の『影』。
光源となるものは一つもない。星々の煌き以外の、何ものも。
「きっと、幸せになれますよ。優しい光で出来た影だから。」
だから、安心して。
どうぞ、良い夢を。
二つの影が一つになり、ふわりと抱き上げて宿への道を辿る。
道に延びる、星の影。
ぼんやりと、しかし確かにそれはそこに在る。
あなたは、あなたたちは。
ここに、確かに、『居ます』よ―――――――。
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