「小狼君!ほら!あれ!!」
姫が興奮した様子で窓の外を指差す。その先には――――――小鳥の巣。
「見て!卵があるの!!」
たまたま離れたのだろうか、親鳥が居ない。巣の中には、コロンと卵が3つ。
「何時生まれるのかな?今日かな?明日かな?!」
ワクワクした調子で覗き込む。
その笑顔。
旅を始めた頃には、見ることすら叶わなかった、笑顔。
羽が戻るにつれて、少しずつ戻ってきた「温かなエガオ」。
周り皆を暖めるような。
大切な人の。
ずっとその横顔を見ていられたら、どんなにか良いだろう。
あの時の。
あの笑顔のままで。
でも、時は戻らない。
今は記憶の羽と共に散ってしまった笑顔のカケラを取り戻さなければ。
たとえ『俺』の存在が戻らないにしても。
ふと見ると、少し離れた枝に2羽の鳥が留まっている。
(あ・・・。)
気が付かなかった。
「姫。親鳥が困っています。そっとしておいてあげましょう。」
「え?・・・・あ!!」
慌てて窓から顔を引っ込める。子供っぽい、無邪気な仕草。
「ご免なさい鳥さん!!何にもしてないからね!!」
そそくさと窓を閉めてカーテンを引き、その影からそっと外をうかがっている。
鳥たちはようやく巣に戻って、卵を温め始めた。
姫の口から、安堵のため息が漏れる。
優しい、人。
かけがえの無い、大切な人。
必ず守ると、決めた人。
記憶を全て取り戻す、と誓ったあの日、俺の旅は始まった。
後悔はしていない。
やると決めた事を、やり通すだけ。
振り向かない。
俯いたりしない。
前だけを、見る。
俺一人じゃできないかもしれないけど、今は心強い仲間が居る。
黒鋼さんも。
ファイさんも。
そして、モコナも。
誰かの『おかげ』で生きていられる。
誰かの『おかげ』で前に進める。
必然のデアイ。
どれほどの困難が待つか、知ることすら叶わない旅。
でも、負けない。
此処に、君が居るから。
その暖かな微笑みを、見る為に。
ほんの一時の『幸せ』を掴むために。
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