その丘は、幼い頃からよく遊んだ丘だった。
なだらかな線を描き、幼子でも容易に登ることが出来る。
どういうわけか背の高すぎる草が生い茂る事はなく、せいぜいくるぶしが埋まる程度。
四季を問わず、小花が咲き乱れるのも特徴的だった。
子供も大人も、皆幼い頃からこの丘に親しみ、いつまでも愛する。
皆に愛される事によって、この丘はさらに優しくなるようだった。
「今宵、あの丘で。」
それは多くの者が口にした言葉。
今日は流星雨が降る日。
もちろん一番の観望スポットはこの丘だ。
夕刻ともなれば、三々五々に集まってくる。
彼と、彼女も。
恥ずかしそうに手をつなぎながら、それでも丘の一角に居場所を決める。
星空のページョントはもうすぐだ――――――――――。
「流れた――――――――――!」
誰かの声に、一斉に感嘆の声が沸きあがる。
最初こそポツリポツリと流れるだけだった流星も、瞬く間に次々と降り始めた。
『流星雨』とはよく言ったものだ。
空は暗さを増すのに、星の煌きが逆に明るさで満たしていく。
手を伸ばしたら届きそう。
でも、届かないんだものね。
だってお星様だもの。
「じゃあ、俺が。」
夜空に向かって腕を伸ばし、大きくてを広げて。
ちょうど奔った流星をえい!とばかりに掴む仕草をする。
タイミングの問題だろうが、流星は忽然とそこで消えた。
「え?!もしかして本当に掴んだの?!」
「あぁ、掴んだ。」
ぎゅっと握ったままの手。
まじまじと見つめる視線にいたたまれなくなったようで、『帰ろう。』と手を引いた。
いつもなら『もう少し!』と駄々をこねるところだが、今日はすんなりと丘を降りる。
人々はまだまだ続く星の宴に酔いしれていて、誰も降りてはこない。
それでもだいぶ離れたところで、グイ、と手の中に押し付けた。
「星・・・・あげる。」
「え?!」
暗くて表情も定かではない。
横を向いて、少し離れて。
それがいつも照れ隠しの時にするものだとわかっている。
そっと手を開いた――――――――――。
泣き出すとは思っていなかったので。
わたわたと、でもどうしようかと。
うろたえるばかりの、その耳に。
かすかにかすかに、声が届いた。
「・・・・お星様をありがとう・・・・・・。」
もう一度。
今度は両手でぎゅっと握り締めた。
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