< 和 風 な 3 0 の お 題 >

  「 細 雪 ( さ さ め ゆ き ) 」



静かに、静かに雪が降る。
音もなく。
手を差し伸べれば、手のひらに。
受けたと思ったその瞬間にはもう消えている。
粉雪さらさら、細雪。
「もうすぐ根雪になるかな。」
冷えるから、と。
半ば強引に部屋の中に連れ戻される。
遠くに雷が鳴っていた。

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諏倭の冬は雪深い。
人の行き来も絶えるほどになるという。
「それでも行かねぇわけにはいくまいなぁ。」
火鉢で燗にした酒を猪口に注ぎながら、きっと眉間に皺を寄せているのだろう。
「行きは一瞬ですから。」
「帰りのことなんざ考えちゃあくれねぇしなぁ。」
ぐび、と。
猪口をあおる音がする。
「帰り道は馬だってのがどうにも解っちゃいねぇようだしな。知世には。」
「むしろ楽しんでおいででは?」
「十中八九、そうだろうよ。」
一体何匹苦虫を噛みつぶしているのだろう。

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「鋼人がだいぶ使えるようになってきたのが救いといえば救いだな。」
もう2、3年もすれば鋼人は元服の儀を迎える事になる。
留守が多い分、あとに残る者が『役立つ』というのは心強いものだ。
そうでなければ、一人に負担がかかってしまうから―――――――――。
「皆が一体となって諏倭を守っています。お気遣いなさいますな。」
くっ、と。
心臓が軋むように痛むのは。

いつ落ちる?
お前の最後の『砂』は――――――――――。

『未来』を見ることの出来ない者にとっては、『聞くこと』がただただ怖くて。

どんなに寒くても、火鉢の傍には座らない。
何かの弾みで転倒などをしないとは限らない、と自分で言っていた。
火鉢そのものを引き倒したり、火鉢の中に手を突っ込んだり。
『見えない』という事を勘や魔力でカバーしきれるものではない。
だからその手が冷たくても、自分が抱き寄せなければ温める事は出来なかった。
今もきっと。
その手は冷たいままだろう。
気温や体感温度を調節してしまうから関係ない、とはわかっていても。
手のひらに受けた雪が、自分に降る雪よりも僅かに長く在ったのを見逃すはずもない。
だから――――――――――。
(怖い。)

音もなく降る細雪が、命の細さを見せつけるようで。
最後の砂が落ちる音を掻き消してしまいそうで。

ふわりとした、細雪。
一番『嫌いな』――――――――――雪。




          




事実この数年後には最後の砂が落ちてしまうわけですが。(ーー;)
黒鋼にとって、『失う』事は何よりもつらいこと。
父を、母を、故国を。
目の前で失ってきたからこそ、『もう失いたくない』。
まあ人間の力ではどうする事も出来ない、絶対の真理ことわりではあります。

細雪が降る擬音は、あえて『無音』にしました。
『しんしん』だと、積もるタイプの雪じゃないかな、と思って。
細雪はすぐ消えちゃうものですし。
私としては、塀の上とかには積もるタイプ、道路などには細雪でお願いしたいところです。
(そんな風に降り分けてくれないかなあ)(無理です)

           作者・シュウ   2009.07.24UP

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