< 和 風 な 3 0 の お 題 >

         「 残 り 香 」




典雅な手つきで香を薫ずる。
その滑らかな動きに、目を奪われて。
コトリ、と香庖の蓋がたてた音にビクリ、と肩が震えた。
それは、とても大きな音で。
しかし実は小さな音で。
「・・・こなたの主は、如何なるお人かえ?」
問いかけは、静かに、低く。
問われるままに、主の姫のことを語る。 その全てを、視線を合わせるでもなく、ただ聞いて。
話し終われば、静かに頷いた。
「よう解った。・・・明日の辰の刻、もう一度此処へ来りゃれ。」
「え・・・・?」
わらわがこなたの主の為に、香を調えて進ぜよう。」
「・・・!では?!」
「こなたの主思いに免じて、特別にの。・・・・今日はもう引き取るが良いぞ。」
「・・・・あ・・・・。」
はっとして。
廊下から庭先にまろび出て。
地面にその額をこすりつけて拝伏した。
「あ・・・ありがとう!!ありがとう・・・・!!」
「礼には及ばぬぞえ。」
ほほほ、と軽く笑い声が降る。
「こなたが気に入った。・・・ただそれだけの事じゃ。」
すう、とその姿が几帳の影に隠れていく。
男はただ茫洋として、見つめるのみだった。
(俺は夢を見ているのか。)
どんな大貴族でも、中々会うことは叶わぬとさえ言われる人に、自分は。
しかし。
(この香りは・・・本物だ・・・・。)
手ずから薫じた、その香の。
残り香となって空に散る、その中に、ただただ佇むばかり。


「明日の辰の刻・・・・。」


『香競べ』には十分間に合う。
男は立ち上がり、そっと館を辞した。




                  




これは『平安朝パラレル』でちょこっと書いていたものです。
もちろんアニメ第2作のOPのせいですが。(笑)
でも見事に『真の意味でのやおい』(ヤマ無し意味無しオチ無し)になってしまったので、
さっくりとボツったという・・・。(笑) 此処に出てくる『男』は黒鋼です。
『主の姫』は、もちろん知世姫。
帝の御前で『香競べ』が催される事になり、後ろ盾の少ない姫には、『勝てる』香を調合できない。
お金もかかりますしね。
で、従者である黒鋼が、伝説といわれるほどの腕を持つ『調香師』の元を訪れて、頼むのです。
もちろん地位も金もないから忍び込んで(笑)。
気まぐれな調香師は、気に入って香を調えてくれる、というものです。
この調香師、実はリアンなんですが(笑)かなり性格が違います。
むしろ天照に近いかも。

ちょっと懐かしいものを引っ張り出してきてみました。

           作者・シュウ   2006.09.12UP

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