< 和 風 な 3 0 の お 題 >

   「蚊 取 線 香」




「黒たーん、これ、何ー?」
恐ろしく間延びした声で問われれば。
「あ?」
白猫が指差しているのは―――――――。
「・・・あぁ、これはな・・・・・・。」
「モコナも知ってるー!」
「えー?じゃあ小狼君たちも知ってるのかなぁー?」
「・・・小僧と姫は知らないだろう。」
でも、『あいつ』は。


「はーい、サクラちゃん、おみやげー♪」
ニコニコ顔の魔術師が差し出した包みを受け取って。
砂漠の姫はにっこり笑った。
「えー?なんですかー?」
「開けてみたら解るよー♪」
がさがさと。
「・・・わぁー!可愛いー!!」
出てきたのは、コロン、とした『豚』の置物。
大きく鼻の所が開いている。
目が小さく、とてもユーモラスだ。
「これ、何だか知ってるー?」
「・・・ブタさん・・・じゃないんですか?」
「うーん、ブタさんなんだけどー、これの『使い道』ー。」
サクラは首を傾げた。
「・・・・飾っておくだけじゃ駄目なんですか?」
「小狼君は知ってるー?」
質問を振られて。小狼は、しかし首を横に振った。
「いいえ・・・・置物じゃないって事なんですね?」
「そうー。」
やはり知らなかったのだ、とファイは嬉しそうだ。
「おっかえりー♪」
別行動だったのだろう、小狼たちとは別に帰ってきたリアンをモコナが出迎えた。
「・・・おや、これは、また。」
サクラが抱えた物を見て。
「あー!この『反応』!やっぱり『知って』るんだー!!」
それは、実に悔しそうに。
「?」
「黒たんがねー、リアンさんは『これ』を『知ってる』、って言うんだよー。」
「まぁ、『知って』いるが?」
「くやしー!!」
『打ち上げ花火』に続いて『知っている』のと『知らない』のとに分かれた。
しかも『組合わせ』も同じ。
「ムキー!絶対悔しい!!」
「・・・そんなに『悔しがる』事なのか?」
半ば、呆れて。『中身は?』と問う。
「はい、これー。」
ぶーたれながらファイが差し出した物を。
丁寧に解して、『1個だけ』外す。
「何ですか?この『渦巻き』・・・・・。」
じっと見つめる小狼の目の前で。指先にポッと炎が点り、『それ』に火がつけられた。
十分に『付いた』と見て、ちょい、と振る、
炎は消え、代わりに白い煙が細く立ち昇った。
それを台に立て、先ほどの『ブタ』のお腹の部分に置く。
「これは、『蚊遣り』だ。」
「『蚊遣り』?」
「この渦巻状のものは『蚊取り線香』。除虫菊などの植物から作る。『蚊』を落とすための物だ・・・・ほら。」
ぷうぅ〜〜ん・・・と。
微かな羽音の先を、ペシ、と叩いて。
掌にぺったんとプレスされた『蚊』を見せる。
「これは人間の『血』を吸う。その時に痒みの元となる成分を送り込むため、吸われるとかなり痒い。」
「へえ・・・・・。」
「起きている時はこうやって対応できるが、寝ているとそうはいかない。だから『これ』を点ける。」
「リアン、物知りー!」
モコナの評価は正しい。




―――――――――――――― * ―――――――――――――



「?」
ほとほとと。
少し躊躇いがちなノックがして。
リアンはドアの傍に立った。
「何か。」
『1つ、頼めるか?』
ドアを開けて。そこに立つ黒い影を見る。
「何が?」
「これを・・・姫の部屋に持っていってくれるか?」
手にした物は、『蚊取り線香』。
ああそうか、と合点する。
ぐるぐる渦を巻いて、それが灰になっていくのが面白いから、と、飽かずに眺めていたサクラが。
(確か、もう夕方から点けていたな。)
燃え尽きるまでに要する時間は、そろそろだ。まだ日付が変わるかどうかの時間、朝までサクラを守れまい。
「わかった。」
ふっと笑って。折れないようにそっと受け取った時、ほんの一瞬指先が掠めた。
黒い影が、微かに気配を固くしたのには気付かず。
指先にポッと火を点した。
微かな暖かい灯りが、紅玉の瞳を煌かせる。
火が付いたと見てひょい、と振り、2つの火を『消す』。
「『蚊遣り』を蹴っ飛ばしてなければ良いがな。」
「・・・わかんねぇぞ。」
サクラの寝相の悪さはさすがに知っている。 リアンも、そう思って出来るだけ影響の無さそうな所に置かせたが。
「さて、どうかな・・・・。」
ふわり、と。
横をすり抜け、リアンはサクラの部屋に向かった。




―――――――――――――― * ―――――――――――――



それは。
(気付いていないだけ。)
ベッドに横になり、手を組んで枕にして。天井を見上げながらファイはふっと笑う。
(ほんとにもー、何ていうかー・・・・。)
もどかしい、というか、イライラさせられるというか。
全然解っていないらしい本人『達』が『微笑ましい』といえばそうなのだが。


『最強の魔術師ウィザード』と。
『日本国最強の忍者』。
あの2人の『護り手』が。
見事なまでの『好一対』である事を。
そしてその事に。
あの2人が『全く気付いていない』事を。




               







・・・・・・・・・・。(笑)
暑くなってきて、会社の隣にあるお家の柴犬の傍に、蚊取り線香が置いてありました。
ちょうど居られた飼い主さんいわく、『そろそろシーズンだし。』と。
蚊が媒介するフィラリアは、とても危険な病気ですからね。
蚊取り線香バシバシ焚きたくなる気持ちも解るってモンです。
そこから連想して一気に書きました。
舞台は『お題25・夜空に咲く華』と同じです。
最後にファイさんを持ってきたのは?
・・・・ぐふふ。(何)

あ、この柴犬、何時も私が通ると『構っていけー!』と吠えてくれます。^^;
遊んでやるとだんだん本気モードになっていくのが面白い。(笑)
黒鋼からかってるとこんな感じですか?ファイさん?(爆)

           作者・シュウ   2006.05.21UP

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