< 和 風 な 3 0 の お 題 >

      「朔 の 日」




この国には、月が無い。
いや、正確には『ある』のだが、まず『満月』にならない。
細い細い、三日月位で最大。
一ヶ月の大半は『朔』――――つまり、『新月』だ。
『月』が見える事の方が、稀な世界。
此処は、そんな所だった。


滅びゆく国で出会って3つ目の国。
相も変わらず、モコナは次元移動が出来ない。
食欲はまあまあ戻ってきた。
大きな耳も、垂れっぱなしという訳ではなくなってきた。
だが、その『特技』も含めて、『技』系はどうにも、まだ。
「ゆっくり治せばいいよ。」
ファイに言われて。皆も頷いてくれた。
心遣いが嬉しい。だが、それでは自分の存在意義が無くなってしまう。
『羽』を探しに皆が出払っている。モコナはぴょーんと飛び出した。


「・・・リアン、お願いがあるの。」


近くの川岸で。
何やら地面に『術式』を埋め込んでいたリアンの傍に、モコナはそろそろと近づいた。
見返す視線に、感情は見えず。
モコナは少し逡巡して、やがて意を決したように言った。
「『教えて』欲しいの。」
「何を?」
「『魔法の使い方』を。」

早く治したい。
早く元通りになりたい。
早く皆の為になるようになりたい。

ふわり、と羽根が舞った。
「吸い込んでみて。」
思い切って息を吸い込む。
ダイソンも吃驚!と今まで豪語してきた『超!吸引力』。
それなのに。
こんな軽い『羽根』が吸い込めない。
きゅうぅぅ・・・・と長い耳がしおれた。
つ、と手を伸ばし。
モコナの手に、別の『羽根』を握らせた。
「??」
「もう一度。」
言われるままに。
大きく息を吸い込むと、『羽根』はフワフワとしかし確実にモコナの口の中に吸い込まれた。
「・・・・・・できた!!」
「感覚を掴むといい。」
また別の『羽根』を飛ばす。今度はさっきよりは早く吸い込む事が出来た。
そしてまた。
何度も何度も繰り返して、ふと、手に持っていたはずの『羽根』が落ちているのに気が付いた。
「あ・・・落ちてた・・・・。」
「もう必要はない。」
モコナが拾うよりも先に、リアンがそれを拾った。ふっと『羽根』が消える。
「今日はこれ位にしたほうがいい。」
立ち上がって。ふと、空を振り仰ぐ。
新月が、細い細いピアノ線のような光を浮かべている。
「この国には『月』の力が少ない。どうしても回復は遅くなる。」
それは、焦るな、と。
「うん、わかった。」
今は聞くのが賢明、と。モコナは、ぴょーん、と跳ねていった。










『羽根』を持つ、というシチュエーションは、『ダンボ』です。(笑)
じゃあリアンはティモシーか(爆)

モコナがどうやって回復したのか。
ただ時間が経てばいい、という物ではない、という観点で書きました。
心がざわついて、魔法が『使えなくなった』、つまり『魔法の使い方がわからなくなった』と。
『吸引力』は基本的に『魔法』ではありませんが、自分に自信を取り戻す、という意味で。
無表情だけど、根底にあるものは違う、という意味合いです。
まあ誤解されやすいかもしれませんが。彼女自身。
あまり良い印象の無い彼女に対して、皆が『何か』疑問に思い始める、そんな一コマです。

このお題シリーズの中で、各人についても同様のシチュエーションを書きました。
かなり無謀だった気もしますが。^^;
一応紹介しますと、
小狼・・・15.誰そ彼(たそかれ)
サクラ・・・27.蝸(かたつむり)
黒鋼・・・22.枝下柳(しだれやなぎ)
ファイ・・・23.下弦の月
です。 まとめて『外伝』にしましたので、よろしくです。

           作者・シュウ   2006.04.15UP

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