< 和 風 な 3 0 の お 題 >

    「 忍 」



『忍』とは。
本来は影に隠れ、決して表に出てこないものなのだという。
その姿、その正体を知られることなく。
そんなの、この日本国ではありえない。
わが日本国における『忍』とは、率先して戦うもの。
魔物や刺客の襲来に、命を賭して立ち向かうもの。
その一命をもって、天照様や知世姫様をお護りする、それが『忍』。
『表』にその顔が、存在が、出ないはずがない。

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だからといって、忍軍全てが白日の下、顔をさらしているわけではない。
ごく自然に、当たり前のように生活し、存在している。
いざ事あれりの時には忍装束に身を包み、気配を消して敵に立ち向かう、ただそれだけだ。
もちろん蘇摩様のように、常時天照様や知世姫様のお傍に侍している場合は別だ。
お傍に在るからには、その力量などあらゆる面で傑出していなければならない。
そう考えると、まこと蘇摩様は手本とすべきお方なのだと実感させられる。
忍としての能力もさりながら、薬師くすしとしての能力。
その知恵、知識。
それでいて、ひとたびニコリとされれば実にお美しい。
天照様も知世姫様もお美しいが、それとはまた異なった美しさだ。
なんと言えばいいのだろうか―――――――『戦う者の美しさ』?

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忍軍の多数を占める男たちにも同様の事が言える。
皆『普通に』存在しているのだ。
番が終われば、面覆いをとり、思い思いに談笑したりする、そこに『忍ぶ』影はない。
普通に明るく、普通に笑い。
笑いながら追いかけたり、叩き合ったり。
何処にも感じられない、『闇の影』。
しかしひとたび敵が襲来すれば、彼らの表情は、気配は一変する。
その見事なまでの変化は、時にはほう、と感心して見とれてしまうほどだ。
ただ男たちは、あまり『表』では騒がない。
忍軍の寮で楽しく談笑している事は有るが、城中で目立つような事をしている者は少ない。
強いて言えば、一人だけ。
そう、黒鋼だ。
いつも何か大声で叫んでいる。
まあたいていは知世姫様にからかわれているのだろうけど。
ドタドタと大きな靴音をたてて歩くのはやかましい事この上ない。
およそ忍びにあらざる行動、蘇摩様にお訊ねした事がある。
蘇摩様は笑ってお答えになった。

「だって気配を消してあのような大男がぬっと背後に立ってたら、毎日死人が出ますわ。」

だからここに俺が、黒鋼がいるぞ、と知らしめて歩いているのだと。
「黒鋼なりの気遣いですわ。」
それをそうと解っている者はおそらくほとんど居りませんでしょうけど、と微笑まれた。
あのがさつな大男が『気遣う』なんてことをするのかと。
思わず蘇摩様の顔をまじまじと見てしまった。
「損ですわね。黒鋼は、色々な意味で。」
そうおっしゃった蘇摩様の顔が、菩薩のように見えたのはなぜだろう。

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私は。
蘇摩様のようになりたい。
力も、能力も、そして内面も。
届きたい。
追い越したい。
「待っていますよ。」
自分の域に来るのを、と。
その微笑みをどうか自分に向けて下されるように。
私ははるかな高みを目指す。
命ある限り、高い高い、空へ。




                  



最初はファイに恋する侍女のモノローグにしようと選んだ背景素材でした。
忍ぶれど色に出にけり、という感じで、選んだのは『木蓮』。
なんでも木蓮は1億年以上から今の姿であった、最古の花木だそうで・・・。
じっと眺めていて、ふと『紅一点』という言葉が浮かびました。
まあ忍軍では蘇摩は紅一点ではないと思うのですが。
今まで女性の忍者は出ていないような?
なので後輩のくの一が蘇摩に憧れる、そんな感じにしてみました。

黒鋼がドタドタ歩くのは、きっとこういう理由だと思うのですが、どうでしょう?
あんなでかいのがぬ〜っと暗闇から現れたら、マジで心臓止まるかと(笑)
がさつなようで、黒様根底は気遣いの人なんだ、という思い込みから思いついたことです。
もしこれが公式で否定されたらどうしよう・・・・・!
今までそんな事いわれたことありましたっけ?!(オロオロ)

バージョンは何にしようか悩みましたが、後輩さんが主役なのでパラレル扱いです。

           作者・シュウ   2009.07.27UP

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