いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせす
「黒たん、なにそれ?」
金髪の魔術師にしてみれば、まるで呪文のように聞こえた事だろう。
「『いろは言葉』だ。」
「へ?」
「女子供に言葉の『音』を覚えさせるために、作られた『歌』だ。」
「へぇ・・・・・。」
覗き込むような、その視線。
「ただ『音』を並べただけじゃ『覚えねぇ』からな。だから『歌』にしてある。」
『狩衣』のようだ、と彼自身が評した、『この国』の服に身を包んで、天を仰いで諳んじる。
色は匂えど散りぬるを
我が世誰ぞ常ならむ
有為の奥山今日越えて
浅き夢見し酔ひもせず
はっとした。
その横顔が、その姿が。
高貴な公達をこそ思わせて。
小狼も、サクラも。
思わず見惚れたのも、むべなるかな。
「・・・黒様、おっとこまえ――――――・・・。」
「・・・・何だそりゃ?」
振り向いた顔は、眉間に3割増しの皺を刻んで。
遠き異国の旅の空。
遙かなる故郷を想う時。
その脳裏に浮かぶは昔日の。
幼き日に刻まれた、優しくもかそけき、その『言の葉』。
いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせす・・・・・・・
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