銀竜。
不思議な運命に翻弄されて。
ようやく俺の手元に戻ってきた刀。
思えばこいつは、最初に手に入れた時から数奇な運命を定められていた。
父の亡骸の代わりに、母と共に葬った、本来の『銀竜』。
いつも共に在らんと願っていた父も、これで納得してくれただろう。
だが、それでは、『約束』が果たせないだろうから、と。
知世姫が同じ拵えで作らせたのが、こいつだ。
拵えが同じ。
器が同じ。
では、そこに宿る『魂』は?
――――――――きっと、同じ。
父と共に眠った龍の魂が、再び依り代を得たのだと。
それなのに。
次元を渡る対価に差し出して。
最初こそ、腰の寂しさに幾度も唇を噛んだ。
だが、桜都国で。
『蒼氷』を手に入れて。
しかもそれが実体としてそのまま己が手に在り続けて。
いつしか『居ない事』を忘れかけていた。
『代わりがいる』から、と。
「対価として、その『蒼氷』も貰う。」
氷のように叩きつけられた、コトバ。
凄まじいまでの『真実』と共に告げられた『命令』。
そして目の前に帰ってきた、『銀竜』。
『蒼氷』と『銀竜』。
比べるな、と言われても比べてしまうのは。
己にとっての重みの差は、如何ともしがたい。
俺は、『蒼氷』を裏切ったのだ――――――――。
《 私はお前を怨んだりはしていない。 》
静かに響いてきた声は?
《 お前が『護りたい』と思った者を、『護る』事が出来るのだからな。 》
その声は、静かで、平らかで。
《 お前とて身は1つ。だが、護るべきモノが多すぎる。ならば道を分かつのも、またひとつの手段。 》
その『声』は、悟りの境地にある、と。
《 傷つくことも、厭いはせぬ。己が本分、果たしたにすぎぬ。・・・・気に病むことは、無い。 》
俺の心を、知っているのか。
《 お前の代わりに『傍に居る』のだ。むしろ『役得』だと思わないか? 》
何処か茶目っ気のようなものを感じたのは、間違いではないだろう。
その姿はかつての長剣とは打って変わり。
短い脇差のようではあるけれど。
匠の手によって打ち直され、元の輝きを取り戻している。
その刃を、ためつすがめつ。
自分でも納得して、鞘に収める。
今、再び。
俺の代わりに。
我が想い人を、護って在れ。
孤高なる蒼き氷。
委ねるに足る――――――――真の友、よ。
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