枝垂れ柳の下に居るモノは。
古来から『幽霊』、と相場が決まってんだ。
だから、そんな所に立ってんなってんだ。
「・・・『これ』を回収しに。」
それは言い訳だって言ってんだろうが。
てめぇが『幽霊』に分類されるなら、話は別だが。
いくら『これ』が、川で深みにはまってた白まんじゅうでも、だ。
この『国』は、どこかおどろおどろしい。
魑魅魍魎の跋扈する世界、と言ってもなんら不思議は無い。
実際、魔物にも遭遇している。
もちろん、向かってくる限りにおいては、刀の錆にしているが。
それでも『羽』の反応がある、と言うから、夜にうろつく羽目になる。
俺は構わないが、問題は姫だ。
『守る』ために、要員が割かれてしまう。
かといって、宿に姫を一人、置いておく訳にもいかない。
自然と小僧が守りに入る。ヘライのと俺と・・・『あいつ』とが、主になって探すしかない。
基本的に武器を持たない『ヘライの』は、俺にくっついて探索に入るが、『あいつ』は違う。
武器は無いが、『魔法』はすごい。
それだけは、認めてやる。
多少の魔物なんざ、目じゃねぇだろう。
自然と別行動になる事が多い。
なんだか、イライラする。
それが何故なのかがわからないから、余計にイラつく。
「黒たん、眉間の皺、3割増し〜〜。」
・・・・・余計なお世話だ。
だから。
枝垂れ柳の下で。
何だかぼうっとした、白いモノが。
居たら普通は『幽霊』を連想する。
居てもおかしくない、この『国』だから。
今回ばかりは、向かってこなくても斬ってやろうと。
蒼氷を抜刀して、ヘライのに止められた。
「く・・・黒たん!!斬っちゃ駄目だよ!!」
「何でだよ!!」
「『魔物』じゃないから!!」
・・・・・一応、聞くが。
自分は『人間』じゃない、『人外のモノ』だ、って言ったのは、てめぇの方だと思ったが?
「それは、そうだが。」
じゃあ、『あんな』所に突っ立ってんな。
間違えて斬られても、文句は言えねぇぞ。
「・・・これからは、気をつけよう。」
お?
やけに素直じゃねぇか?
さすがに『斬られる』のは怖いのか?
「いや。『そちら』の方が嫌じゃないかと。」
・・・・・・・・。
俺かよ!!
・・・まぁ、確かに夢見は良くねぇかも知れねぇな。
『魔女』を斬ったりしたら。
ふと、気になった。
川で深みにはまっていた白まんじゅうは、ヘライのが抱えている。
少し、話をして。
それきり、口を閉ざした。
何も、しゃべらない。
あまり驍舌な方ではないとは思っていたが(同じ魔術師でも、ヘライのがしゃべりすぎなんだ)
完全に『沈黙』している。
―――――――『気配』さえも。
纏う『気』が、かける声を、手を拒んでいる。
何も感じさせないのに、手を伸ばそうとした途端に、声をかけようとした途端に。
それは、凄まじいまでの気迫で。
俺が、『何か』しただろうか?
何だか、気になる。
だが、聞くにも聞けない。
何だ?こんなに胸騒ぎがするのは?
答は。
「モコナが川に落ちたの〜〜それを助けてもらったの〜〜。」
白まんじゅうが姫に報告している。
「魔物に食べられそうになったの〜〜(それは知らなかった)、でもリアンが来てくれたの〜〜。」
「『魔物』も『時の魔女』には叶わなかったみたいだねぇ〜〜?」
ヘライのが語りかけて。
白まんじゅうも姫も小僧もヘライのも、声を立てて笑いあった。
だが。
すぅ、とあいつは部屋を出て行った。
風のように。
「おい。」
声をかけたら。
呟くような、低い声が聞こえた。
それは、『返した』のではなく、本当の、『独り言』。
「・・・『時の魔女』という名は・・・・好きじゃない・・・。」
俺は。
何も考えていなかった。
『魔女』である事を、自分で忌み嫌っているなどと、考えた事も無かった。
普通は『人外のチカラ』を手に入れて喜ぶものだろう?
『永遠』の『時』を生きる。
それは、とてつもない魅力に満ちた事なのだろう、と思うのは。
俺が限りある一度きりの命しか持たないからか。
『すぐに転生する』という、因果律から外れた存在。
広大無辺のこの世界で、その術を知るのは、己れただ一人。
永遠の、孤独。
自分を知る者たちに『置いていかれる』のは。
耐え難いほどの苦痛なのか。
それを。
こいつは『一人』で耐えてきたのか。
『人』に対する感情を、遠い過去に置き去りにして。
それでも持ち続ける『心』を封印して。
――――――たった独りで、永遠の時を刻み続けてきたと。
俺は―――――――。
これから、どうすればいい?
―――――――――お前に、対して。
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