いつも、傍に居た。
二人で、一人。
影無くば、光在らず。
光無くば、影在りえず。
そう、いつも。
二人は共に在った。
運命は常に人を翻弄するものと決まっているかのよう。
嵐は突然にやってきた。
「皇子を人質に」
戦で負けた国に課せられた、それは運命。
「俺が行くよ。」
「いや、俺が行こう。」
どちらかが残れば国は続く。
もちろん無理難題がさらに続く事は予想されるが、今は。
「国を滅ぼす事は出来ない。」
国の護り手が願う事は、ただ一つ。
「俺達は、一つ。でも、別々の存在。」
いつかは離れる。
いつかは別々の道を歩む。
その時が今訪れただけだ。
「今まで俺は『影』だった。日向を歩かせてくれないか?」
それが方便だと見抜くのは容易かった。
だが。
微かに真実のネガイがあったと見抜くことはできなかった。
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一人で歩き始めたその瞬間から、『影』は『影』でなくなった。
確固たる一つの存在になった。
『自分』に向けられた『視線』。
『自分』にかけられた『声』。
全ては『自分だけ』に――――――――――。
それは、喜び。
それは、快感。
(俺は今、ここに存在している。)
こんな事に感激できるのは、今まで影であった自分ぐらいだろうと。
密かな優越感をも持って過ごすのは、さほど居心地の悪いものではなかった。
「小僧。」
凛とした声がかけられる。
そう、自分に。
「鍛錬の時間だ。」
「はい、お願いします。」
廊下を吹きぬける風は、確かに微笑みを浮かべていた。
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